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AI
Web3.0
2023/06/01

労働人口の49%がAIに代替される可能性——AI Engineer中編

生成AIは、確率的に正解であろうものを出力するのであって、すべての物事を100%予測し出力できるわけではない。

前編では生成AI技術が注目を浴びている理由、そして具体的にどのようなものを作成することができるのかについて触れた。

中編ではこれからどのような職業がAIに取って代わるのか。そのリスクと問題点はどこにあるのかについて展開していく。


——では、ここからは生成AIによって具体的にどのようなことが可能なのかを教えてください。

A氏「生成AIはさまざまな種類のサービスが誕生していて、できることも非常に幅広いので、まずは文章の生成AIについて話しましょう。文章生成AIなので、もちろん人間が書いたかのような文章を生成できます。たとえば、ブログ記事や、メール、レポートなどは、適切なテーマをあげて質問すれば、それらしい文章を書いてくれます。

すでにウェブ上ではブログ記事をAIで量産して自分のサイトを作っているような人も増えていますね。メールやレポート作成は、ビジネスにおいても活用できるでしょう」

B氏「ほかにも、自分があまり理解できていない事柄に関して生成AIに質問する、という使い方もあります。すでにMicrosoftやGoogleが生成AIサービスをリリースしていますが、生成AIの登場によってインターネット検索が大きく変わりつつあります。

これまではキーワードを検索エンジンに入力して、大量に表示されるウェブサイトのなかから自分が求める回答を探していましたよね。ところが生成AIによって、検索結果から要点だけを抜き出した回答がもらえるようになったんです。

このような使い方は『知らないことを調べる』という行為だけではなく、『外出の計画をたてる』といったことにも使えます。たとえば『新しいBing』で『予算1万円で2人でご飯に行くならどのお店に行けばいい?東京にあるお店を3つあげてください』と入力すると、具体的な店名を3つ教えてくれます。

個人的には、文章生成AIはインター ネット検索の革命でもある、と考えています」

A氏「生成AIを使ってプログラムのコードを書いてもらったり、レビューしてもらうこともできます。たとえば『Windowsのメモ帳のようなアプリのコードを書いてください』と指示すれば、そのまま使えるようなコードを生成AIは出力してくれます。

そもそもプログラムについては、誰かが書いたコードをみて学んだり模倣することが当たり前なのですが、生成AIを使えば一瞬で簡単にその答えを提示してもらえるんです」

B氏「最近ではGoogleがAIベースの開発支援機能 『Duet AI for Google Cloud』というものを発表しています。このサービスを使えば、AIとチャットして自分の要求を伝えることで、コードを書くことなくアプリケーションを作成できるようになっています。

また、自分が書いたコードを入力することで修正案やバグを教えてくれます」


——ライターやプログラマーの仕事がAIに奪われる、というような状況が本当に始まっているんですね。では、画像生成AIではどのようなことができるのでしょうか?

A氏「名前の通り、さまざまな画像を生成してくれる技術です。画風も幅広く指定できて、リアルな写真のような画像を作ることもできますし、アニメ風の萌え絵を作ることもできます。画像生成AIはすでに多くのサービスが誕生して、作りたい画像の画風などに合わせてサービスを使いわけられるようになっていますね」

B氏「代表的なサービスとしては先にあげた『Midjourn ey』や『Stable Diffusion』があります。また、この2つは日本語による入力に対応していないのですが、日本語入力に対応しているサービスも次々と誕生しています。

『にじジャーニー』やMicrosoftが提供している『Bing Image Creator』などは日本語に対応していて使いやすいはずです」

A氏「画像生成AIを使えば、イラストや画像の作成をAIに代行してもらうことができます。たとえばウェブサイトのバナーやSNSのアイコン、プレゼン資料に差し込む画像なども作成できますね。これまで写真素材サイトで購入していたような画像も、生成AIに作ってもらえます」

B氏「画像生成AIもここ数ヵ月ほどで飛躍的に発展しています。今年に入った頃は、『AIは人間の手を描写するのが苦手』といわれていて、実際に人間を描かせると指の本数や手の形に違和感があったんです。

なぜこうなってしまうのかを言語化すると、AIの場合は『人間には5本の指がある』ということを認識して画像を描いているのではなく、多くの画像をパターンとして認識して『人間は手の先が枝分かれしているが、画像によってはそれが5本みえてることもあれば、3本しかみえていないこともあるし、時には上半身しか写っていないから手がないこともある』と学習しているんです。

つまり『人間の手は5本である』と認識するための学習データが十分ではないため、現実とは異なる描き方をしてしまったということです。ところが、このような問題も数ヵ月で技術がアップデートされて、今では違和感がない手を描けるようになっています」

A氏「イラストや写真などを仕事にしている方にとっては、AIは非常に脅威となるものになっています。最近では、生成AIを使ってリアルな人間の画像を作り、それを写真集として販売する人もあらわれました。

イラストについても、生成AIで作成したものを販売している人もいます。ただ、これについては著作権などの問題でネット上で炎上していますが」


人工知能やロボット等による代替可能性が高い100種の職業

※職業名は、労働政策研究・研修機構「職務構造に関する研究」に対応


——著作権などの問題については後ほど詳しく聞かせてください。そのほかにはどのようなものが生成AIによって作られているのですか?

A氏「音楽を自動生成するようなサービスも誕生していて、たとえば5月11日にGoogleが『MusicLM』という音楽生成AIサービスを公開しました。音楽生成AIでは『勉強に集中するための穏やかなバラード』などの指示を出せば、それに適した音楽を作って流してくれるようになっています。

ChatGPTのような文章生成AIに作詞してもらい、ボーカロイドのような合成音声技術を組み合わせれば、人間が歌うような楽曲すら誰もが簡単に作れるようになっています」

B氏「3Dモデルを自動生成するようなサービスも生まれています。ChatGPTを開発しているOpenAI社の『Po int-E』や、NVIDIA社の『Magic3D』などが代表例ですね。これは、文章で作成したいものを入力すれば、それに対応した3Dモデルを出力してくれるというサービス です。

たとえばオンラインゲームやメタバース内に設置するようなコップや花、家などもすぐに3Dモデルを出力してくれます。3Dを使うデジタルサービスの開発工数を大幅に削減してくれるサービスです」

A氏「動画の自動生成AIも増えています。たとえば動画生成サービスの1つである『Stable Animation SDK』はテキスト、画像、動画を入力するとアニメーションを作ってくれます。

ただ、動画生成AIについては『自動でこんな動画を作れるなんてすごい』という感動はありますが、現時点では人間が作る動画よりもクオリティが高いとはいえず、違和感がある点も多いです。

とはいえ、これもすぐに技術が発展して、人間が作るものよりも良い動画を作るようになるでしょうね。将来的にはAIが作成したアニメ、ユーチューブ動画、ミュージックビデオなども生まれてくる可能性は高いと思います」

B氏「ここまでの話をまとめると、人間がこれまで作っていたデジタルなモノは、ほぼAIによって作成可能になっていくということになります。よく『AIによってライターやプログラマー、イラストレーターの仕事が奪われる』という話がありますが、生成AIの影響範囲は特定の職種に限りません。

何らかのデジタルデータを取り扱っているすべての人がAIの影響を受けるはずです。もちろんAIによって職を奪われるようなマイナス面もありますが、使いこなすことで業務を効率化したり、あらたなビジネスを生み出したりもできるはずです」 

〈関連記事はこちら〉

「AIがなぜブームに?」「何が作れる?」意外と知らない「現場」のハナシ。——AI Engineer前編
生成AIのカギを握るプロンプトの存在——AI Engineer後編(6月5日掲載)




◉A氏
AIソフト開発者。生成AIを活用したサービスの開発に従事している。

◉B氏
生成AIを活用したスモールビジネ スを展開。ITライター。

Iolite 編集部