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日本を変えるかもしれないAIアプリ2
AI
Web3.0
2023/08/07

日本を変えるかもしれない業界別効率化AIアプリ 後編

各業界での活用と導入状況は? 

実際にAI導入してさまざまな企業が成果をあげている


前編ではAIを導入することによるメリットや現時点での課題、そして一定の成果がみられる領域等について触れた。

後編では、どのような企業がどのようにAIを導入しているのかといった形で、各業界のAI導入事例を紹介していく。


【物流業界】
人員の長時間労働や積載率の低下といった物流業界特有の長年の課題解消に期待

参考になる企業名
富士通、ヤマト運輸、三井物産など


物流業界では、配送ルートの最適化や積載率最適化、配送中の品質管理などに効果があるAI技術を利用した配送管理アプリの開発、導入が進められている。配送先の住所や時間帯、荷物の重さ、サイズなどをデータとして入力することで、自動的に最適なルートを算出する配車システムもすでに開発されており、一部の物流企業ではすでに導入され、効率的な配送や輸送コスト削減が可能となった。

また、最近では、荷物の配達状況をリアルタイムで把握できるトラッキングシステムもある一方で、荷物の損害や紛失を防ぐために、AI技術を活用した温度管理システムなども開発され、実用化が進められている。

導入事例としてはフォークリフトにAI判定システムを導入したサントリーロジスティクスや富士通、AIによる業務量予測で効率的な配車を実現し経営資源の最適配置をしているヤマト運輸、AIやIoTで現場データをリアルタイム収集しているNEC、異常検知のAI導入で自動封函の質を向上させた三井物産グローバルロジスティクスといった企業があげられる。

▶配送ルートを最適化するサービス 「Loogia」
日本郵便や佐川急便などで導入されているのが配送ルートを最適化する「Loogia(ルージア)」(株式会社オプティマインド)だ。物量の増加によるドライバーの人材不足、業務最適化を図るため、配送ルート最適化のAIシステムで、配送員がどのようなルートを通って配送するか、どこに駐車するかといった事象の可視化を実現している。


配送ルートの最適化や配送中の品質管理などに活用して効率的な配送や輸送コスト削減に成果


【小売業界】
AI導入で商品発注による誤差やマーケティング不足を解消へ

参考になる企業名
セブンイレブン、イトーヨーカ堂、ローソンなど


小売業界では、データの収集・分析や自動化といった業務において非常に優れた能力を持っているAIを活用し、さまざまな方面でアプリの開発が進められている。たとえば、AIを導入して在庫管理を自動化することで、在庫数が最適な状態になるように調整することができるようになった。

また、多種多様な商品や顧客の嗜好に対応するために、AIを活用した商品のレコメンドシステムを導入することで、顧客により適切な商品を提案できるようになった。

そのほかにも、顧客のニーズを正確に理解し、より良い顧客体験を提供することが可能になったり、マーケティング戦略の立案や改善を行うこともできる。今後もエフィシエントな小売業界の発展が期待されている。

導入事例としては、AIを活用した発注数の自動算出システムで省人化を意識したコンビニ設備を目指しているセブンイレブン、「ローソンオープンイノベーションラボ」を設置してAIコンビニの実証実験を行っているローソン、AIを使った商品発注システムで最適な販売数を予測しているイトーヨーカ堂といった企業があげられる。

▶OCR技術で商品ラベルの一括読み取りができるAIシステム
Automagi株式会社は商品のラベルに記載されている情報をスマートフォンで一括で読み取るAIシステムを開発している。
ラベルごとの事前の詳細設定は不要で、AIのOCR技術を用いて、ラベルを撮影するだけで 一括読み取りを可能にした。一括読み取り・管理を可能にすることによって業務効率を図ることが期待されている。


商品発注による誤差や在庫の廃棄問題などが解消されつつあり次世代型店舗を目指している


【製造業界】
人手不足、従業員の高齢化、競争の激化といった課題の解消に向けて導入推進

参考になる企業名
横河電機、スカイディスク、東芝など


近年、製造業は、グローバル化に伴い価格競争が激化し、品質、コスト、スピード、フレキシビリティなど自社の競争力を維持するために新技術を導入する必要があった。生産プロセスを高度化し、品質向上やコスト削減、生産効率の改善を実現するため、AIの導入を推進している。

生産現場の自律性を向上し、機械自体が生産現場で学習・進化していき、大量のデータを処理し、生産工程や品質管理の問題点を予測して改善。その結果、品質や生産量の向上を実現することができるAIは製造業界とも親和性が高く、原因不明の事故やトラブルの防止、生産効率の改善等が期待され、コスト削減にもつながる。今後、AIの活用技術が進化するにつれて、より高度な生産システムが実現されるだろう。

導入事例としては、化学プラントの自律制御している横河電機、鋳造条件をスコアリングしているスカイディスク、 抜き取りデータから不具合要因の特定をしている東芝、磁気探傷検査を自動化しているトヨタ自動車などがあげられる。

▶産業用ロボットのAI活用
アセントロボティクス株式会社は、バラバラに置かれた物体をカメラで認識し、つかみ方を自動で判断、動作可能な制御ソフトを開発している。産業用ロボットには部品などをつかむバラ積みロボットがあり、AIを活用した製品やソリューションも多くある。今後は物流現場向けのサービスも強化していくとの方向性を掲げている。

▶AI内蔵カメラによる計器の自動読み取り
株式会社IntegrAIは、AI内臓のカメラで製造機器が示す数値などのあらゆる情報を自動データ化するシステムを手がけている。従来は人による目視で確認していた作業を自動化することで、製造業の働き方改革に貢献することが期待されているほか、IntegrAIのシステムは電源さえあれば設置でき、導入コストを抑えられる点が特徴だ。


従業員の疲労によるパフォーマンス力の低下を抑制
一番避けるべき人的事故の減少に効果大


【飲食業界】
従業員の負担削減、人手不足の解消などを目標にAI導入を推進

参考になる企業名
スターバックス、ドミノ・ピザ、福しんなど


飲食業界でも、AIアプリの導入によって店舗運営の最適化や食材の最適な調理法、そしてマーケティング戦略の改善など、多くのメリットを得られることが期待されている。

具体的な導入事例のひとつとしては、スターバックスが自社のアプリを通じて、ユーザーの好みから提供するドリンクやデザートをオススメする機能を導入するなど、効果的な販売促進施策を行っている。また、ドミノ・ピザではデリバリー業務にAIアプリを導入することで、最適なルートを計算し、配達時間を短縮することに成功している。

その一方で、AIアプリの導入には、導入コストの高さやデータの解析に対する技術不足などの課題もある。そのため、AIアプリを使用する上での適切な導入プランを立てることが重要だ。導入事例としては、先述したスターバックスやドミノ・ピザのほか、AIカメラによる人流の可視化で人件費削減したライズウィル、AIの自動発注で棚卸業務の負担軽減した福しんといった企業があげられる。


配達時間の短縮や人件費削減
棚卸業務の負担軽減した企業も


【介護業界】
人手不足、体への負担、利用者との人間関係といった課題の解消が目標

参考になる企業名
A.I.Viewlife、富士ソフト株式会社など


介護業界ではAIの導入により、介護者の負担軽減や、高齢者及び障害者へのより質の高いケアが可能になることが期待されている。

具体的には、高齢者や障害者の状態をモニタリングし、自動的に通知する機能や、薬の副作用を検知して警告する機能、歩行補助のためのロボットなどが開発されている。アプリでは、スマートフォンやタブレットなども利用して日常生活をサポートするものや、高齢者や障害者が安心して暮らせる環境を実現する技術も開発されている。

さらに、介護現場におけるスタッフの業務支援や、健康相談業務の一部をAIが担うことにより、より質の高い介護 サービスが提供される可能性もある一方で、人間の直感や判断力が必要な場面も多く、コミュニケーションが重要とされる介護業界では、まだまだ課題も多く存在している。

経験豊富な介護スタッフとAIが相互補完できるよう、バランスをとりながら導入していくなど、現場でさまざまな試みが行われ続けている。

▶A.I.Viewlife
A.I.Viewlifeはエイアイビューライフ株式会社が開発した介護見守りロボットだ。介護現場の「見える化」を実現し、転倒などの危険動作や、起き上がりなどの危険予兆動作を広角IRセンサーとAIによって検出し、重大な事故の防止につなげることができる。
実際に導入した結果、ヒヤリハットや介護事故件数がゼロになったり、介護施設の入居者に対する訪室回数が減少したほか、介護する側の夜勤ストレスが減少するといった効果が報告されている。

▶Palro高齢者施設向けモデルlll
富士ソフト株式会社では高齢者施設向けコミュニケーションロボット「Parlo」を開発している。日頃のおしゃべりに付き合ってくれたり、踊ったり歌ったりといったレクリエーションに活躍しているほか、今後は高齢者に対する見守り機能を搭載する方向性を示している。


体調の変化を早期予測が可能に
従業員の心理的負担も軽減


医療業界
人材不足と過酷な労働環境の改善に効果をもたらす可能性

参考になる企業名
福岡和白病院、みなとクリニックなど


医療業界では、診断や治療、データ分析などのさまざまな面でAIが現場を支えている。たとえば、AIを活用することで大量の医療データを効率的に分析することが可能になり、これによって病気の早期発見や治療法の最適化が行われ、医療の精度が向上すると同時に、医療費の削減が期待されている。

また、AIは医療現場において重要な役割を果たしており、たとえば手術支援ロボットや医療製品の自動化などは、AIの導入によって実現された。これによって、手術の精度が向上し、治療効果が高まることが期待されている。

さらに、セルフチェック用のデバイスや、健康管理アプリなどを活用することで、個人の健康管理が容易になる。これによっ て、健康管理に関する情報を効率的に収集することができ、病気の予防や早期発見につながることが期待されている。

導入事例としては、福岡和白病院によるAI問診「Ubie」、みなとクリニックでのクラウド型電子カルテ「CLIUS」、東京ミッドタウンクリニックによる疾病リスク予測AIサービスの活用といった事例があげられる。


医療従事者の労働負担が軽減し心理的負担の軽減が実現可能に


【建設業界】
AI導入で土木設計が変わる⁉人員確保と労務管理にも効果期待

参考になる企業名
株式会社アラヤなど


建築業界でもAI技術が活用されるようになり、建物や施設の設計・構築、施工の効率化や品質・安全性の向上につながるAIアプリが開発されている。

代表的なものは、建築設計におけるAIアプリだ。建物の設計プロセスにAIを導入することで、従来よりもスピーディかつ正確な設計が可能になった。また、AIは照明・空調・音響設備の最適化など、建物のエネルギー効率を高めるための設計支援も行うことができる。

別の例として、建設現場でのAIアプリがある。これは、施工現場でAIを活用することで、施工計画の最適化、進捗管理や危険物の予知・予防など、現場での作業支援を行うものだ。具体的には、ドローンで建物の詳細な測量データを取得し、建設現場を建築用シミュレーションソフトで再現することで、建築物の安全性や効率性を高めることができる。

これらのAIアプリの導入により、建設プロセス全体にかかる時間や資金、エネルギー面でのコストを削減し、建築物の品質や安全性を高めることが期待されている。

▶自律作業型ロボット
人が操縦して作業する建機を無人化した自動操縦ロボットはすでに多くの建設現場で活躍している。AI搭載建機として重機、掘削機、ブルドーザーなどがあげられ、それぞれの特定業務で人の作業を代替。建築現場における作業は室内環境の製造ロボットなどに比べて環境条件の変化や予想外の状況が発生することが考えられるため、よりフレキシブルな自律性が求められている。

▶ドローンによる現場監視
建設現場を上空から監視し、現場の安全や資材窃取などを防ぐAI搭載ドローンがセキュリティロボットとして役立っている。現場の状況を高精細画像で読み取り、リアルタイムで地上のモニターや監視員のタブ レットにビデオ画像を送信。作業状況を継続してモニターできるため、現場の進捗管理や人員配置に活用することで生産性向上に寄与できる。


建設プロセスのコスト削減
高まる建築物の品質や安全性


【教育業界】
教師の長時間労働や不測の事態による授業の進捗状況の不透明さを打開

参考になる企業名
野田塾、英進館、日本英語検定協会など


教育分野では、学習支援や評価の精度向上などに役立つAIアプリが開発されている。まずは、学習支援に関するAIアプリ。こうしたアプリは、学習者の学習状況を分析し、それにあわせた学習計画の提案や、学習の進捗状況に応じてフィードバックを行うなど、個別最適化されたサポートを提供することができる。

学習者のテストの解答履歴、問題の回答時間などを分析し、自動的に学習状況を判断し、効果的な学習支援を提供している。また、英語学習などで音声認識技術を利用したアプリもあり、発音の矯正に役立つことが期待されている。

AIを用いた評価支援アプリも注目されている。学習者が課題を解く際の思考過程や作業過程を収集し、振り返りの機能や課題の改善点を提供することもできる。AIによる自動評価システムは現在開発が進んでいる。

導入事例として、入試合格ラインをデータから予想している英進館、生徒の苦手分野をリアルタイム解析している野田塾、AIによる記述式問題の自動採点を行っている日本英語検定協会などがあげられる。


データ分析に基づく カリキュラムの構成やアダプティブ・ラーニングが 実現可能に


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Iolite 編集部