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2023/06/06

GIANT KILLING Vol.1——神奈川大学・宇宙ロケット部 後編


液体ロケットと固体ロケットを合わせたようなハイブリッドロケットで高度100㎞を目指す


——NASAがロケット制作を民営化していったことからも、ロケット開発及び宇宙が身近になってきたと感じます。宇宙産業の未来をどのように捉えていますか?

和田:今後5年~10年で、さらに「日常生活」に身近な分野になってくると考えています。

というのも、一言「宇宙産業」といっても、ロケットや衛星、それらを使ったデータビジネスなど、幅広い市場への活用に可能性を秘めています。

また2040年には約100兆円規模の市場になるともいわれ、今後これらをエンタメや生活の一部として展開していくことで、さらなる市場規模拡大ができるのではないかと考えます。

近年では、宇宙産業の実装に向けた取り組みがニュースで大々的に取り上げられるようになりました。多くの人の目に入るようになったからこそ、宇宙事業の「消費者」の目線から、持続的な技術・需要の地盤を固めていくことで、さまざまな面で宇宙産業が活きてくるのではないかと考えています。


▶︎実際の打ち上げ試験の様子 固体燃料に着火し勢いよく噴射口がら炎が吹き出しロケットが打ち上がる瞬間


——日本の民間企業がこれから宇宙産業を発展していくために、求められることは何ですか?

鈴木:日本や民間企業がより宇宙産業を発展させていくためには他企業、もしくは他国とタッグを組むということだと思います。それぞれの専門分野、得意分野から多くの知見を得ることができて相互がwin-winの関係を作ることができれば発展させることができると考えています。

また宇宙開発を行っていなかった企業の知見などを応用して宇宙産業に昇華させるということも可能でしょう。こういったあたらしいつながりが宇宙産業の発展に求められるのではないでしょうか。


——政府系機関、及び伝統的な航空宇宙産業が進めてきた従来型の宇宙開発「オールドスペース」。それら以外の新興の民間企業が進める宇宙開発「ニュースペース」。技術の進歩が民間企業でも宇宙産業にチャレンジできる1つの大きな要因になったと考えます。

もしもAI・ブロックチェーンといった、次世代のテクノロジーと宇宙開発が掛け合わさる未来があるとしたら、どのようなことを期待しますか?

和田:宇宙関連事業は、今が黎明期でもあることから次世代テクノロジーととても相性が良い分野であると考えています。たとえばWeb3.0の業界でいえば、「分散型科学(DeSci)」といわれるエコシステム構築が話題となっています。

いわゆる「研究・技術の情報共有」や「資金調達」の手段としての活用することで、政府や大企業のリソースに偏らない民間での宇宙開発を加速させていくことが可能になります。

また他業界とのかけあわせによる、これまでとは違った観点からのユースケース展開や、VR・遠隔技術などの発展途上の技術と組み合わせることで、テクノロジー相互の課題解決やあたらしい需要を開拓することができると考え、とてもわくわくしています。


——最後にこれから挑戦していきたいことをお訊かせください。

鈴木:これから挑戦したいことはモーターケースの材質の変更です。自分はエンジンの開発分野を担当してきました。また現在はアルミのモーターケースを使用して燃焼試験を行っています。

しかし、アルミでは重量もあり耐久性も低いため、新モーターケースが必要です。そこで、研究室の大学院生とCFRPのモーターケースの開発を一緒に進めてきました。大学院生はいつまでも自分を導いてくれるわけではないので、自分が引き継いで開発を行っていきたいと考えています。

和田:私個人としては、宇宙事業を「地上から」支えることができればと考えています。まずは「多くの人に身近に感じてもらうこと」、あわせて「業界に関わらずビジネスの一つとして展開していくこと」を目標に、さまざまなアプローチを仕かけていきたいです。

また宇宙ロケット部として、昨年に引き続き今年度もクラウドファンディングを行う予定です。Twitter等SNSでも随時情報をアップしていきます。少額からの参加も可能ですので、ぜひご支援いただければと思います!


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鈴木 悠介│スズキユウスケ
Profile│神奈川大学工学部機械工学科3年、神奈川大学宇宙ロケット部部長

和田 聡一郎│ワダソウイチロウ
Profile│神奈川大学経済学部経済学科4年、神奈川大学宇宙ロケット部広報、神奈川大学web3研究会共同代表。 

神奈川大学
神奈川県横浜市に2つキャンパス(文・理11学部)を構える総合大学。2023年4月には理工系学部の再編を行うなど、世界水準の研究・教育環境の実現に向け取り組む。神奈川大学宇宙ロケット部は、「超小型衛星を安全・安価に打ち上げる超小型ロケットの開発」を目的としたサークルで、同学宇宙構造研究室(高野研究室)と合同で活動。ロケット制作から打ち上げまでの大体を独自で開発し、2021年にはハイブリッドロケット到達高度国内最高記録(10.1km)を樹立。

Iolite 編集部