
What's Metaverse “結局、メタバース とはなんなのか?” 後編
メタバースの土地を売り出すのはいいけど、結局その土地で何ができるのか?っていうのはよくわからない。
継続的に人を集められるような魅力がないとメタバースの構築は失敗する
A氏:ここからは、主にWeb3.0の文脈で使われる『メタバース』の現状について話していきましょう。Bさんは、いわゆるメタバース銘柄にもいくつか投資しているんですよね。
B氏:かなり早い段階で『The Sandbox』と『Decentraland』に投資しています。それ以外でも『NFT Worlds』とか、話題になったメタバースプロジェクトの土地やトークンを買っていますが、正直なところ投資結果としてはボロボロですね。
たとえば『The Sandbox』のLand(土地)は100万円超えが当たり前みたいな時期もありましたが、今は1ETH(約20万円)で買えます。
A氏:どのメタバースプロジェクトもだいたいそんな状況ですか?
B氏:そうですね。当初はメタバースが流行すれば土地の価格も上がるだろうと意気込んでいたのですが、予想がはずれました。メタバース内の土地のことを『ランド』と呼んで、それを売り出すパターンが多かったのですが、メタバースの不動産バブルはひどい弾け方をしています(笑)。
A氏:それって結局、Web3.0的メタバースは話題性ばかり先行して失敗したってことなんですか?
B氏:ゲームの発展、インターネットの発展という方向性でみれば『リッチな3Dデジタル空間』という意味でのメタバースはまだまだこれからの段階なので、失敗云々を論じる段階ではありません。
ただし、NFTや暗号資産を絡めた『Web3.0的メタバース』は期待感だけが先行しすぎたとはいえますね。暗号資産もNFTも、投資的観点からみればとにかく早いもの勝ちという面があったので、メタバースについても私のように我先にと飛びつく人が大量に生まれたのは仕方ないと思っています。
A氏:土地を売り出すのはいいけど、結局その土地で何ができるのか? っていうのはよくわからないというのが正直なところです。
少なくとも今の段階では、ブロックチェーンやNFTを活用したメタバースというものは、現実的には動いていないですよね。振り返ってみれば、ランドの売り出しというのは資金調達の手段でしかなかったのかなと。
B氏:一応、『Decentraland』内で音楽フェスが開催されるなど、3Dデジタル空間だからこそ実現できるようなイベントは開催されているんです。ただ、日常的に人々がメタバース内で生活するというような状況にはなっていません。
土地を所有していればそこに自身のお店を出したり、賃貸収入を得られるようになったりする、ということになっているんですけどね。現実世界と同じで、人がいなければ土地にもあまり価値がない、という当たり前のことにみんなが気づいてしまいました。
A氏:NFTや暗号資産の有無にかかわらず、メタバースというものが実際に広く普及するまで、まだ相当時間がかかることは間違いないですよね。最近では、メタバース内での迷惑行為や性被害を問題視するようなニュースも報じられているように、問題は山積みです。
B氏:メタバースにログインした女性が、多くの男性アバターに取り囲まれて嫌がらせを受けたり、性的な言動をされたり、という問題ですね。
そのへんは今のインターネットでも問題になっていますが、リアリティがある3D空間ともなればより一層その被害が深刻化するとも懸念されています。デジタル空間がリアルな世界に大きく近づいた時には、良い面だけではなく悪い面も出てくるということでしょうね。
現実世界と同じで、メタバースも人が集まらなければ土地にもあまり価値がない
A氏:では、今後メタバースがどのように発展するのかについて話しましょう。
B氏:まず大前提として、メタバースというのはさまざまな技術が発展したその先にようやくできあがるものだと思っています。そもそもキレイなグラフィックの3Dデジタル空間で何かをしようという時点で、ハイスペックPCが必要になるので、ほとんどの人にとってはハードルが高いですよね。
また、インターネット回線のスピードも必要になります。近年話題になっている5Gが普及してようやく誰もがメタバースを楽しめる時代が来るといえるのではないでしょうか。
さらにいえば、NFTや暗号資産を絡めた場合はユーザーが自分でウォレットを管理しなくてはいけません。
暗号資産が多少普及してきたとはいえ、大多数の方は取引所を介して取引するだけで、自分のウォレットを作ったことすらないでしょう。そういう意味ではWeb3.0に関するリテラシーの向上も必須です。
A氏:NFTが絡むようないわゆるWeb3.0的メタバースが普及するまでの道のりはかなり遠いように思えますね。それよりは、現在のオンラインゲームの延長線上にあるようなメタバースの方がはるかに希望があるように感じます。
B氏:私もそう思います。何より、『メタバースにログインして何するの?』という問題を解決できそうなのは、今のところゲームだけなんですよね。
ただ、そうなると普通のオンラインゲームとして成功するような面白いゲームが、わざわざ暗号資産やNFTを導入する意味がないので、Web3.0的メタバースとは異なるものになるでしょう。
A氏:今、世界中でメタバースを作ろうという企業やプロジェクトが増えていて、国内でもNTTドコモ、KDDI、グリーなどの大企業がメタバースの構築を始めています。
ただ、どのメタバースも『その仮想世界で何をやるのか?』という問いへの回答を提示できていないと思うんですよね。今のところ、音楽フェスとかファッションショーといったイベント開催によって人を集めるという動きだけはありますが。
B氏:それだけだと日常的にログインする動機になりませんからね。結局、継続的に人を集められるような魅力がないとメタバースの構築は失敗すると思います。昔の自分にいってあげたいくらいですが、メタバースならなんでも投資する、みたいな考え方は危険ですね。
A氏:今のところメタバースが活用される見込みがある分野ってゲーム以外にあるんですか?
B氏:個人的にはEC(ネットショッピング)、防災あたりはメタバースだからこそできること、というのがありそうな気はしています。
ECメタバースなら、実物と変わらないみた目の3Dデジタル商品をメタバース内でみて商品を選んだり、メタバース内の店員さんに相談しながら選んだり、ということが広まると思っています。
このあたりは今のネットショッピングサイトでは実現できていないユーザーニーズを満たせる部分ですから。
A氏:メタバース百貨店ができたり、今のAmazonや楽天市場みたいなECサイトがまるごとメタバースになったら1回使ってみようと思う人は多そうですね。
B氏:防災分野は実は密かにメタバースの活用が広まりつつあります。現実の街と変わらない空間をメタバースで作って、そこで地震や水害が起きた時のシミュレーションをしたり、交通渋滞をシミュレートして街の設計に活かしたりという方法です。
A氏:なるほど。投資とかそういう観点とは違いますが、メタバースが社会を良くするという意味で期待できそうですね。
B氏:まあ後者はメタバースというよりもVRの進化と考える方が適切かもしれませんが、とにかくそんなふうに少しずつ『メタバースって役に立つ』という認識が広まり、その先にようやくNFTなどを絡めたWeb3.0的メタバースの時代があるのかなと考えています。
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◉A氏
Profile│元ゲーム会社勤務のゲームライター。Web3.0業界やブロックチェーンゲーム・メタバースに関心を持って動向を追っているが、従来のゲームと比べて魅力的ではないと感じている。◉B氏
Profile│Web3.0とブロックチェーンゲームをこよなく愛すインフルエンサー。個人投資家として、暗号資産投資と同程度の予算をブロックチェーンゲームやメタバース関連プロジェクトに投じている。