
NFT History and Today——歴史から学ぶNFTの現在地 後編 監修:仮想NISHI
コンテンツ大国である日本がゲームで世界のWeb3.0をリードする
一方で、日本に目を向けるとやや出遅れ間は否めない。さまざまな要素が考えられるが、最も大きな理由としてやはり規制による影響は大きいだろう。規制があることでユーザーの保護を強化できる一方、実質的に行動制限をかけてしまうことはいうまでもない。
それでも、FTXの破綻や2022年に発生したさまざまな事件を通じて、日本の優位性は高まりつつある。規制面で世界と比べ先行していたことや、税制面の規制緩和に向けた議論の加速等もあり、日本のWeb3.0業界には追い風が吹いている。当然、そのなかにはNFTも含まれており、実際に大手企業の参入なども相次いでいる。
重要視されているカテゴリーとして、ゲームの存在は欠かせない。世界的に人気のあるゲームやIPを数多く有するコンテンツ大国日本にとって、ゲームは世界でWeb3.0をリードする上で大きな武器となる。2023年初頭からさまざまな国産ブロックチェーンゲームが登場しており、すでにスクウェア・エニックスやGREEなども参入を表明している。今夏からはさらに多くのゲームコンテンツがリリースされる予定で、このなかから大ヒットブロックチェーンゲームが登場することも期待される。
日本でウォレットが普及しない「3つ」の理由
しかし、日本でブロックチェーンゲームを浸透させる上では課題もある。特に参入障壁となっているのはウォレットの存在だろう。
ウォレットと一概にいってもさまざまな種類がある。インターネットに接続された状態のウォレットを指す「ホットウォレット」や、その対局にありインターネットに常時接続されていない「コールドウォレット」がある。
ウォレットの代表格としては、「MetaMask」や「Ledger」、日本でも馴染みが深いLINEの子会社が開発した「DOSI Wallet」、SBI傘下の暗号資産取引所SBI VCトレードが手がけた「SBI Web3ウォレット」などがあげられる。
国産のウォレットも登場するなかで、最もポピュラーなウォレットの1つであるMetaMaskにしても、日本はG20のなかで普及率が特に低いとされる。その要因として、「高い銀行口座普及率」「インセンティブの低さ」「DeFi等の規制外のコントラクトへの接続」などがある。
▶︎ウォレットを普及させるためにはUI/UXの改善、そしてオンボーディングが必要不可欠。まずは初心者でも触れやすいサービスに加え、身近な体験を通じて親しみを持ってもらうことが普及への近道。
日本の銀行口座保有率は約97%ともいわれており、世界銀行が発表した世界全体の口座保有率76%と比べても非常に高い。つまり、日本は金融包摂への取り組みが進んでいることから、実生活で暗号資産に頼るケースが少ない。さらに、現状の個人に対する暗号資産税制がユーザーフレンドリーなものでない点に加え、暗号資産に対する日本人ならではのマイナスイメージも普及の妨げになっているかもしれない。
これが2つ目の理由にもつながる。暗号資産に積極的になる必要がなく、負のイメージも持ち合わせているとなると、何かしらのインセンティブがない限り動き出しは鈍くなる。ウォレットをダウンロードしたからといって大きな特典が付くケースも極めて稀であり、人によっては設定すらも煩雑かつ億劫に感じてしまうだろう。
自己責任という言葉が強く付きまとうDeFiなどでも同様のことがいえる。日本では原則として金融庁より暗号資産交換業者としてのライセンスを付与されたサービスを利用するよう推奨されており、言語の壁も有する海外サービスを利用するとなるとハードルは格段に高まる。
また、暗号資産を持つ理由が低いとなれば、特別な機会がない限り積極的に知識を得ようとすることもないだろう。
こうした背景も踏まえ、国内の関連事業者はウォレットの設定などを含むオンボーディングに加えて、UI/UXの改善も必要だと述べる。また、通常NFTを取引する際にはイーサリアム等の暗号資産を準備する必要があるが、そのためには事前に取引所で暗号資産を入手しなければならないなど、工数がかかる点もネックになっている。
その点、国内ではユーザーの利便性を解消すべく、日本円でのNFT購入を可能にするサービスも大手を中心に増えてきた。SBIWeb3ウォレットでは、暗号資産を自動で円転することにより、暗号資産取引やウォレットへの移動が不要。日本円だけで取引しているような、初心者にも優しい設計であるといえるだろう。
今や日常でも耳にする機会が増えたNFT。その歴史と今を直視しつつ、目的にあわせて学びながら触れていくことが大切だ。
〈関連記事はこちら〉
NFT History and Today——歴史から学ぶNFTの現在地 前編

◉仮想NISHI
Profile│SBI VCトレード(クリプトアナリスト/新規事業戦略担当)/ SBIホールディングス デジタルスペース室副室長
ディーラー経験を活かし、オンチェーンデータを始め暗号資産市場を分析、Twitterでの情報発信のほか新聞・雑誌等で暗号資産市場の解説を行う。
Twitter→https://twitter.com/Nishi8maru