
「NFT」そして「メタバース」は地方を救えるのか?
Web3.0における地方創生・観光復興の可能性とリスク
世界的なウイルスパンデミック、常態化する異常気象、そして経済不況。
数多くの要因が重なり、現在窮地に立たされている地方と観光業。Web3.0のトークンエコノミーやメタバースは現状をどう変えられるのか。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大以降、旅行・観光業界は大きな痛手を受けている。規制やその影響も徐々に少なくなってきているが、それでも以前と同じように回復するにはまだまだ時間がかかるだろう。
そして、そのダメージは産業において観光業の占める割合の高い地方であるほど大きい。そうしたなかで、大きな可能性があるものと考えられているのがWeb3.0の「NFT」と「メタバース」だ。
NFTにおいては、地方のご当地キャラや名産品、御朱印などその土地独自のコンテンツをNFT化し、収益を上げるモデルが注目されている。メタバースにおいては、観光地をメタバース上に構築することで距離や感染リスクなどを気にせずにインターネット上で人を集められるモデルが注目されている。
特にWeb3.0時代においては、NFTとメタバースが組み合わさることによって、従来よりもリアルな経済圏をバーチャル空間上に構築することもできる。それまで距離や時間の都合で足を運ぶことがなかった人からの収益、さらには多言語に対応すれば海外からのインバウンドも大きく見込める事になる。
幸いなことに、Web3.0の時代では翻訳や対話型のAIも驚くほどに進化している。
加えていえば、NFTのマーケットは基本的に希少性の高いものに価値が付く傾向がある。あまりメジャーではない地方や小規模な施設、無名な観光スポットなどにも十分なチャンスがあるということもできるだろう。
こうしてみると、旅行・観光業や地方創生にとって利点しかないように感じられる。もちろん、可能性が大きくあるのは間違いない。
しかしながら、メタバースやNFTを闇雲に「導入すればいい」というのは端的にいって間違っている。
たとえば地域の有名な土産物として、長く人気のあった商品をそのままNFTと紐づけても、そこに魅力を見出せなければ購入する人は増えていかないし、通販でただ普通に商品を購入すればいいと考える人もいるだろう。
それでは現状以上の収入や将来的により成長・発展していくビジネスにはなり得ない。
メタバースにしても、その地方や観光地がメタバース化していることの面白さやシステム上の魅力がなければ人は集まってこないのは当然だ。すでに今現在においてもメタバースは数多く存在し、しのぎを削り合っている。
さらにはその地方から距離の遠い人であっても、それぞれには別の「近場で行きやすい観光地」というものが存在しているのだ。
現在は注目が集まり一種の「バブル」となっている状況ではあるが、結局のところ「NFTならではのブランド価値」や「メタバースならではの観光的メリット」を作り出す必要がある。
そしてそれは現在、アーティストやデザイナーら多くのクリエイターが常々頭を悩ませ、四苦八苦していることでもある。
地方創生、旅行・観光業においてWeb3.0で成功するには、やはりNFTやメタバースの特性や利点、そして同時にその土地独自の特性や魅力を、把握・理解できるディレクターやプランナーが必要になる。
また当然、NFTを基軸にした経済圏を構築するに当たっては、NFTと密接な関係にある暗号資産の価格暴落などのリスクも考慮しておかなければならない。
こうしたリスクを無視しようとすることは、世界的なパンデミックで客足が減るリスクを無視することと、同レベルの愚行だといえるだろう。