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2023/04/09

識者談「今、この人のハナシを聞きたい」——藤野周作 後編

取引所サービスとNippon Idol Token(NIDT)のIEO申込開始を同時期に行うという異例の展開は、どのような経緯で実施された?


——今回のIEOは2社で行われるという比較的珍しい事例かと思いますが、どのような経緯からこのような取り組み方になったのですか?

藤野:オーバースさんが発行するNippon Idol Token(NIDT)の売出しは15億円で、ほかのIEOに比べても大規模な案件です。この件では最初にcoinbookへ声をかけていただいたのですが、当時、我々もこれから新規で口座開設を受け付けるといった状況でした。

そのため、我々1社よりもいくつかの取引所と連携した上でさまざまな人たちにリーチしていった方が良いと考えました。このプロジェクトを成功させていくためには、私たちが独占的にIEOを行い取引手数料で収益を上げるという考え方ではなく、複数の会社でやった方が良い成果が生まれるだろうという考えです。

そうした考えのもと、エンタメに強いDMM Bitcoinさんに相談させていただき、連携させていただくことになったのです。単純に1社でやるよりも、ほかの会社と共に売り出した方が間違いなくプロジェクトの成功率は高いと思います。ユーザー側の利便性も高くなりますしね。

今後、複数の会社が協力してIEOを行い、プロジェクトを盛り上げる事例というのも徐々にみられていくのではないかと思います。


——IEO申込と取引所サービスを同時期に開始することは極めて大変なことだと思いますが、これまでの苦労や困難であったポイント等を教えてください。

藤野:あたらしいトークンというのは発行する前から審査を始めますが、一方で基本的に審査が終了する前にトークンは発行される形となります。そのため、審査の過程でトークンのアルゴリズムが変わっていくなど、仕様が変わる点は1つ調整が大変な部分としてあげられます。

仕様が変わるのは、プロジェクト的に追加すべき機能が出てくるからです。すると当初説明した部分に乖離が生まれてきますので、理由等を説明しなければいけません。これが大変なのです。もちろん、我々だけではなくて審査側も大変だと思いますよ。

しかし、審査側も積極的な姿勢でこれを受け入れてくれます。審査が甘いということはないですが、決して事業者を邪魔しようだとか、あたらしいプロジェクトを潰してやろうなどという考えはありません。

今回のNIDTに関するやり取りでも、今の状況はどうなっていて、何を考えていて、ツールは何を使っているのかなどの確認をして進めていくので、我々や発行体も情報を管理していくとか、考え方を整理していくということに関してヒントを得られるなど、有意義な話し合いができました。

思い返せば、ありとあらゆるものが本当に困難でしたし苦労の連続でした。

先ほども申し上げた通り、IEOの審査段階ではまだトークンが発行されていないので、どういうトークンになるかといったイメージも掴みにくかったですしね。取引所で扱うウォレットをどうするかなど含めて、新規で暗号資産を取り扱う際には本当にチェックすべきポイントが非常に多いんですよ。

取引所のサービスをリリースすることに関して、まずシステムからというよりは作りたい世界観を優先して、それを実行するためのオペレーションをどうするのかという話から始まり、オペレーションを実行するためのマニュアルを作り、そのマニュアルを業務フローに落としこんで成立させるためのシステムを開発することになります。

我々としては本当にゼロからすべてを作り上げ、その上でIEOを通じてどのように進んでいくか未知数なトークンを扱うことになります。

IEOは日本国内ではまだ4つしか事例がありません。株式市場におけるIPOとは違いますし、参考がないに等しいのです。

IEOの事例として、1件目2件目で利益等があったとしても、その内側の情報というのはなかなか得ることができません。本当に手探りの状態で進めていくしかないので、これはすごくストレスがかかる作業となりました。

IEOでいえば、オーバースさんもしっかりとスケジュールを組んでいるわけです。4月に〇〇、5月に□□というように。

すると、我々としては取引所サービスを3月にリリースしなければならないとなりますので、すべての社員が悩みながら取り組んできました。だからこそ、コミュニケーション、チームのビルドという意味では取引所サービスの開始やIEOへの取り組みというのは大変有意義な活動であったと感じています。


——coinbookさんの今後の展開や意気込みをお願いします。

coinbookとして価値のあることをやらなければいけないという考え方は会社全体として持っています。つまり、すでに世の中に溢れていて、それをユーザーが満足しているような状態にあるシステムの二番煎じ的な取引所や販売所を立ち上げるつもりはまったくありません。

我々の取引所サービスでは、IEOを行いたい方の支援や、初めて扱うトークン、またこれまで日本になかった金融資産の運用というところまでチャレンジしていきたいと考えています。とにかく独自性を出していこうと社内で議論を交わしています。

そのなかで我々の強みであり特徴でもあると考えているのは、エンタメという領域です。

今回のNIDTをみてもわかる通り、エンタメ業界にいる人、そしてそのファンの方々が喜ぶことをブロックチェーンでどのように実現させていくことができるのかと考えていく1年にしたいと思います。

それは、単純に暗号資産の理解だけでは生まれにくい話であるので、我々1社だけではなくこれから提携させていただくような会社さんも含めてしっかりと進めていこうと思います。手数料が安いとかではなくて、あたらしいブロックチェーンの使い方を提供する、まったくあたらしい暗号資産交換業者を目指します。

あともう1つ、coinbookの強みは何だろうと考えた時、今お付き合いしている人たちとの縁を大切にすべきだという想いが私のなかでありました。

こうした縁を通じてエンタメ関係の人たちとお付き合いをして、そのファンの人たち、ユーザーに喜んでもらえる仕組みを、我々は考えられるんじゃないかと思っていますし、それを突き詰めなければいけません。

そのほかですと、たとえばすでに古くからある技術との連携をブロックチェーンを使ってできないかということも考えています。30年前にもてはやされたテクノロジーと我々が組むことにより、いろいろなシナジーが生まれると思います。そのような事業も展開していきたいですね。

〈前編はこちら〉

識者談「今、この人のハナシを聞きたい」− 藤野周作 前編



◉藤野 周作
Profile│ファミリーマートではM&Aの事業戦略、プロジェクトに従事するとともに、商品券やプリペイドカードなどの金券(電子マネーを含む)を用いた決済事業スキームの構築に従事。その後、世界三大暗号資産取引所の1つオーケー・コインの日本法人COOに就任。暗号資産交換業者としての登録〜ブロックチェーンを活用したサービスの開発運用を遂行。2021年、NFTマーケットプレイス開発運営のためORADAを設立。大手〜スタートアップまで幅広い企業へブロックチェーン活用の新規事業開発を支援中。2022年、暗号資産交換業者 株式会社coinbook COOに就任。

Iolite 編集部