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特集1暗号資産運用
暗号資産
Web3.0
金融・経済

長期視点でみる暗号資産の現物運用の選択肢 暗号資産の冬は脱したか—

Iolite 編集部
2023/12/19

暗号資産の現物保有と資産運用

デジタル上にあるためイメージが付きにくいかもしれないが、暗号資産にも現物保有という考え方がある。

現物で暗号資産を保有することで通常通りの取引ができるほか、預け入れるだけで暗号資産そのものの量を増やしたり、第三者に貸し付けることで貸借料を受け取ることができるサービスもある。

このように、暗号資産の現物運用にはさまざまなものがあり、自身の運用の幅を広げてくれる。ここではどのような暗号資産の運用方法があるのか紹介していく。



現在の暗号資産市況

暗号資産市場は米国におけるビットコイン現物ETFの承認可否を巡り、10月中旬頃から好調だ。当初はビットコイン優勢の相場となり、ドミナンス(市場占有率)は2021年4月以来となる50%を突破。

つまり、暗号資産時価総額の半分をビットコインが占めたということになる。しかし、11月時点ではイーサリアムを始めとした主要アルトコインへの資金流入もみられるようになっており、暗号資産市場には大幅上昇に向けた前兆が訪れつつある。

市場全体の価格上昇に伴い、投資家心理も急激に強気へと傾いた。ビットコインの恐怖指数を示す「Fear & Greed Index」によれば、現時点のスコアは73となっており、強気相場であることをあらわしている。

この指標では0に近付くにつれ弱気であることを示し、100に迫るほど強気であることを示唆する。73というスコアは2021年11月にビットコインが過去最高値を更新した時の水準であることから、これから大幅な価格上昇を起こり得ると予想する投資家が増えているといえるだろう。

こうした状況で悩みの種となるのが、暗号資産の運用方法だ。千変万化の暗号資産市場において、どのような運用を行うかは利益を生み出す上で大きなポイントとなる。

そこで今回は、暗号資産で利益を得るためにどのような取引・運用方法があるのかピックアップしていく。


レバレッジ取引は現在の相場においてリスクの塊

大きな利益を得やすい取引方法として、一部国内暗号資産取引所でも提供されている「証拠金取引」があげられるが、現在のような相場感ではなかなかおすすめしにくい。

そもそも、証拠金取引とは少ない元手で多くの利益を享受できる可能性を秘めた取引方法だ。預け入れた証拠金を担保として、その数倍もの金額を取引することができる。

なかでもFX(外国為替証拠金取引)は良く知られた存在だ。たとえば、10,000円を元手に倍率を2倍にした場合、20,000円分の取引が可能となる。

仮に利益が出れば、本来10,000円で得られる利益も2倍になる。また、現物取引と違い「買い」から入るだけでなく、「売り」から取引を開始できる点も証拠金取引ならではのメリットだ。

一方、デメリットもある。倍率を上げた際に数倍の利益を得られるということは、その反面、数倍の損失を生むこともありえるのだ。

さらに、日本のFXは最大倍率25倍までと定められているものの、海外では数百倍にも及ぶ倍率でサービスを提供している事業体もある。

そうしたサービスを利用することで利益を得られるのは一握りであり、多額の負債を抱えるケースが後を絶たない。証拠金取引の一長一短ともいえる特徴は価格変動リスクが大きい点だ。

証拠金取引では価格変動が激しくなることで利益が出やすくなるが、それと同じくらい損失を生む可能性も高まる。そのため、価格変動が大きい暗号資産などの証拠金取引は比較的、中・上級者向けのものといえ、初心者には少々ハードルが高いものだ。

国内における暗号資産の証拠金取引は現状2倍までと定められているため、証拠金の元手にもよるが、損失を生んだ際のダメージは比較的軽く済む。

それでも、現在の市況はビットコイン現物ETFの承認可否等を巡って価格変動が激しくなっており、初心者・上級者問わず難しい取引環境になりつつあるといえる。

再三になるが、こうした市況では大きな利益を得る可能性もあるが、多大な損失を生む可能性もある。取引をする際には市況をしっかりと見た上で、仮に損失を出しても日常生活に支障のない範囲で投資することをオススメする。


将来性を見据えた現物投資

ではこうした局面でどのような運用をすべきかというと、暗号資産であれば「現物」への投資だと考える。暗号資産の価格変動は非常に大きく、特に現在のような市況で証拠金取引をするのは大きなリスクを伴う。

そこで、初心者や中長期的な目線で暗号資産への投資を検討するユーザーには現物暗号資産の運用がオススメだ。暗号資産の現物を運用する方法はいくつかあるが、その前にどういった暗号資産取引所を選ぶべきかポイントを紹介する。

まず暗号資産取引所を選ぶ上で、特に重視すべきは下記のような特徴を持った取引所だ。

・取引所サービスでの高い流動性
・取り扱い銘柄の多さ
・運用サービスの種類

順に説明していこう。

取引所サービスでの高い流動性

まず流動性については高いに越したことはない。なぜなら、流動性がないところではそもそも取引が成立しないからだ。価格が大幅に下落している際に買い注文が枯渇していると、資産の逃げ道がないため、ただ価値が下がっていくのを呆然とみているだけになる可能性がある。

逆に市場が過熱し、取引をしたいという時に売り注文がなければ、市場価格よりも高い価格で取得せざるを得ない場合も出てくる。

こうした取引所で取引を続けていくのは長い目で見た際に損失につながる可能性がある。そのためチャートをみた際、ローソン足にまったく変化がなかったり、ローソク足とローソク足の間にぽっかりと空間が空き「窓」を頻繁に形成するような取引所はできる限り避けたい。

また、特に手数料面で損をしないために極力「取引所サービス」を活用することが重要だ。国内暗号資産取引所では大半が「販売所」と「取引所」という2種類の取引サービスを提供している。

違いを端的に説明すると、販売所は「サービスを提供する暗号資産取引所との取引」で、取引所は「ユーザー同士の取引」だ。

販売所のメリットは、よっぽどの問題がない限り暗号資産の売買が可能である点。そのため、すぐにでも取引したいけれども取引相手がいない、またはどれくらいの価格で取引したら良いかわからないといた際には販売所を利用するといいだろう。

しかし、販売所では購入時に5%、売却時に5%の手数料が求められる取引所もある。売り買いをするだけで10%も手数料として引かれてしまうのは非常にもったいない。

一方の取引所は販売所と比べて圧倒的に手数料が安い。キャンぺーンなどで取引手数料が無料になる場合もある。また、比較的自分が求める価格で取引を行いやすい点もメリットだ。

デメリットは、先述した通り流動性が低い場合にはそもそも取引が成立しない可能性がある点。資産を退避できないといったケースに陥らないためにも、流動性が高い取引所サービスを選ばなければいけない。


取り扱い銘柄の多さ

続いて、取り扱い銘柄の多さについて。これも運用の選択肢を広げる意味で重要となる。いくら手数料が安い取引所だったとしても、そもそもお目当ての銘柄がなければ取引が始まることすらない。

これまで国内暗号資産取引所では取り扱い銘柄数が海外と比べて圧倒的に少ない点が大きなデメリットであった。

しかし、近年は取り扱いにおける要件が緩和されたことにより、急激に銘柄数が増加しつつある。その一方、取り扱い銘柄がどれくらい取引所サービスで取り扱われているのかというのはよくチェックしておかなければならないポイントだ。

というのも、取り扱い銘柄は多くてもそのほとんどが販売所サービスでしか取引できないとなれば、長い目でみた際、手数料が大きな重荷になる可能性もある。

また、取り扱い銘柄が多いというのは初心者にとって頭を悩ます問題にもなりやすい。なぜならば、どのような暗号資産なのかわからないところに多くの銘柄があれば、何を取引すればいいのかわからなくなってしまう状況に陥りがちだからだ。

そのため、まず初心者が暗号資産取引所を選ぶ際には、時価総額順位上位の暗号資産が取り扱われているかどうかをチェック。

その後、取り扱い銘柄がどれほどあるか、将来的なことを考えて取引の流動性がどれほど高いのかをみて選ぶといいだろう。


運用サービスの種類

最後に運用サービスの種類だが、暗号資産取引所が提供する運用サービスとしては大きく

・積立
・ステーキング
・レンディング

の3つがあげられる。

積立投資

積立は言葉の通り、定期的に対象となる暗号資産を一定額購入し、積み立てていくサービスだ。

取引所に暗号資産を保有しながら少しでも資産を増やしたいというユーザーにとって、まず初めに手をつけるサービスだろう。

そしてステーキングとレンディングだが、この場合取引所に預け入れるという点では一緒になるためよく混同されがちであるものの、その仕組みは異なる。

ステーキング

まずステーキングだが、こちらはビットコインでいうところのマイニングに似たもので、対象となる暗号資産を保有し、ブロックチェーンの稼働に貢献することで、その報酬として保有する暗号資産を受け取れるものだ。

暗号資産取引所が提供するサービスの場合、簡単に手続きを行えるため暗号資産取引に少しでも慣れてきたユーザーにオススメだ。

レンディング

一方、レンディングは概念的に自らが保有する暗号資産を預けることで、取引所に運用を行なってもらい資産を増やすサービスとなる。

基本的にはどのような暗号資産についても預け入れることが可能だが、対応銘柄は各取引所によって異なる。


ステーキングとレンディングの違い

両者の違いだが、大きく異なるのは「預入期間」「途中解約の有無」「年率の変化」「対応銘柄」だ。

まず預入期間だが、ステーキングはネットワーク貢献を行うことで報酬を得られるため基本的に無期限であるものの、レンディングは決められた期間しか預けることができない場合が多い。

これに関連して、ステーキングはいつでも止めることができるが、レンディングでは即時引き出しができない。

さらに、ステーキングであれば途中解約しても預け入れた期間の分報酬を受け取ることができるが、レンディングでは基本的に途中解約すると報酬が発生しないことがほとんどであるため、ここも留意すべきポイントだ。

年率については、レンディングは基本的に募集時点で決まっているが、ステーキングは日本に留まらず各国の事業者等との兼ね合いで報酬量に変化が生じるため変動しやすい。

対応銘柄についても、ステーキングは基本的にPoS(プルーフ・オブ・ステーク)という仕組みを導入している暗号資産しか対応していない。その反面、レンディングは概念的にすべての暗号資産に対応しているという点で大きな違いがある。

そのため、もし保有する暗号資産がステーキングに対応しておらず、それでも運用をしたいという場合にはレンディングを活用するのがいいだろう。

このように、レンディングとステーキングでは運用の仕組みが異なるため、対応銘柄や利率にも変化が生じる。

どちらにも一長一短な部分があるため、運用をする際には双方の特徴をよく理解した上で活用したいところだ。

報酬は高くなる傾向にあるのは?

ここまでは暗号資産取引所の話を中心に展開してきたが、現物暗号資産の運用となるとそのサービスに特化した専門の事業者の方が高い利率を叩き出す傾向が強い。

たとえば、レンディングにしても暗号資産取引所が年利1~2%ほどでサービスを展開するのに対し、専門事業者は5~10%ほどの年利で募集をかける場合がある。

暗号資産取引所だと運用時にさまざまな制約がかけられるため、利率が抑えられてしまう傾向がある。一方、レンディング専門事業者であれば現状ライセンスを必要とすることなく、より自由度の高い運用を実現することができる。

そのため、レンディング専門事業者の方が暗号資産取引所と比べ高い利率でサービスを提供することが可能となっているのだ。

しかし、ライセンスを必要としないことで無責任かつ悪徳な事業者があらわれる可能性も考えられ、万が一預け入れた事業者の運用が失敗した場合には資産が返ってこないリスクもある。

高い利率で資産を増やすことができる反面、多大なリスクを追う可能性があることを理解した上で利用するようにすべきだ。

また、専門事業者を選ぶ際にはサービスの評判や実績等を必ずよく調べてから利用することを推奨する。


イールドファーミング

暗号資産取引所にはない資産運用法として、「イールドファーミング」と呼ばれるものもある。これは管理者不在の非中央集権取引所であるDEXなどのDeFiサービスに特定の暗号資産を預け入れ、流動性を提供することで報酬を得るというものだ。

貸し出すユーザーは流動性プールと呼ばれる場所に暗号資産を預け入れ、その暗号資産を取得したいユーザーは流動性プールを相手方として取引を行う形となる。

イメージとしては、暗号資産取引所の販売所サービスに近い。しかし、販売所サービスと違う点としては比較的手数料が低いこと、そして取引するために事前に取引ペアとなる暗号資産を準備する必要があるところだろう。

たとえば、イーサリアムとテザーの取引ぺアがあり、テザーを取得したい場合には、イーサリアムを準備する必要があるといった具合だ。

流動性を提供した際に得られる報酬は、預け入れた暗号資産によって違いがあるものの、年率数十%を超えるものもあるなど、比較的高いことで知られる。

しかし、管理者不在のサービスということですべての行動が自己責任となる点は留意しなければならない。実際、DeFiサービスを狙ったハッキングなどが近年多発しており、多額の被害が生じている。

また、サービスは基本的に英語仕様となっており、操作もわかりにくい点があるため、暗号資産運用を行う上で比較的、中・上級者向けのものであるといえるだろう。


ここまでさまざまな暗号資産の運用方法を解説してきたが、いずれにおいてもいえるのは、「自分でよく調べ、万が一損をしても問題ない資金」でスタートするのがいいだろう。

運用資産を増やすのは慣れてからでも良く、その過程で運用方法を多少分散することもリスクを軽減することにつながる。

まずは自分が納得できる形で暗号資産を保有し、その後運用に目を向けることが暗号資産と関わっていく上で最も大切になる。


Short Column

「暗号資産冬の時代」が抜けつつあるなかで、運用する際のポイント

暗号資産をこれから運用したいと考えている方に必ず意識してもらいたいのは「買うタイミングは分散させること」です。暗号資産に触れたことがないという方はポイント投資のようなものからスタートしてもいいでしょう。

暗号資産の値動きはほかのアセットクラス(投資商品)と比較してもかなり大きい値動きとなるため、リスク管理の方法はとても運用する上で大事なポイントになります。

資産運用のポートフォリオの1つとして暗号資産を組み入れる場合はドルコスト平均法で毎月積立するのもいいでしょう。また暗号資産の値動きを考えた場合に、毎日細かく積立を行うという方法でもいいかもしれません。

リスクを取っても大きくリターンを狙いたいという投資であれば、ビットコインではなくアルトコインでプロジェクトを調整し、時価総額が小さいもので今後のびていきそうなプロジェクトのトークンに焦点を当ててもいいでしょう。

リスクが高くなることは理解した上で、暗号資産をどのように利用するか考えながら投資を行っていく必要があります。



Profile

◉中島翔 | Sho Nakashima
株式会社Mmenu Japan代表取締役兼FX,仮想通貨トレーダー 
一般社団法人日本カーボンニュートラル機構理事
学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、証券アナリスト資格を取得。 
Twitter:
@sweetstrader3



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Iolite 編集部