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暗号資産
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【NEWS】米上院、SECによる暗号資産の会計規則撤回を可決 バイデン大統領は拒否権行使の姿勢

里見 晃
2024/05/16

上院でもSEC方針撤回案が可決

米上院は、SEC(米証券取引委員会)による暗号資産(仮想通貨)の会計処理に関する規則「SAB第121号」を撤回させる決議案を可決した。

SAB第121号と呼ばれるSECの方針は、銀行による暗号資産を含むデジタル資産の会計報告に関するものだ。銀行が顧客の暗号資産保有を貸借対照表に負債として記録することを義務付ける内容となっており、暗号資産業界の内外で物議を醸していた。

この決議案は上院において60対38で可決された。今月8日には、共和党が多数派を占める下院においても228対182で可決されており、党派を超えてSAB第121号に異論を唱える声がみられた。投票では民主党のチャック・シューマー(Chuck Schumer)上院議員を始め、コーリー・ブッカー(Cory Booker)上院議員、ジョン・テスター(Jon Tester)上院議員らが賛成に回った。

可決されたことにより、決議案はホワイトハウスへと送られることになるが、バイデン大統領は拒否権を行使することを明言している。その理由として、「暗号資産に対する包括的かつ効果的な金融規制の枠組みを維持するSECの能力を制限すれば、大幅な金融不安と市場の不確実性がもたらされる」と説明している。

バイデン大統領が拒否権を行使した場合、法案は再度議会に戻され、投票の必要性が生じる。その際、大統領の拒否権を無効化するには3分の2の賛成票が必要となる。具体的には、下院で290名、上院で67名が賛成に回る必要がある。


バイデン政権の姿勢がより鮮明になる可能性

共和党のシンシア・ルミス(Cynthia Lummis)上院議員は声明で「バイデン大統領は、このCRA(議会審査法)が下院と上院の両方で受けた超党派の支持を留意し、これを法制化するために署名する必要がある」と述べた。CRAは1996年に制定され、政府機関の規則制定に対する議会の監視を強化することを目的としている。

また、デジタル商工会議所の政策担当副会長のコディ・カーボン(Coby Carbone)氏は、「大統領がこの決議に対する超党派の支持を政権への叱責と捉えるのではなく、法律を超越する独立した規制当局はなく、不遇な業界に対する個人的な復讐よりも、消費者保護が優先されるべきであるという総意として捉えてもらいたい」とし、政権の主張に固執するのではなく、柔軟な対応を求めた。

採決前の討論で、この法案に反対票を投じた民主党の重鎮であるエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員は、暗号資産がほかの資産と比べてリスクがあることなどを主張した。理由としてハッキングなどの事件をあげ、そのリスクについて企業は財務情報開示において説明する必要があると述べた。

今回の議決案が可決されたことは、上院下院議員らがSECの暗号資産業界に対する執拗な取り締まりを批判していることを意味している。拒否権の発動などにより正式に法制化される可能性は未知数ではあるものの、法案が無効となった場合には、バイデン政権が暗号資産に対して後ろ向きである印象がより強くなることは必至であるといえる。

参考:投票結果
画像:Shutterstock


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