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金融・経済
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【NEWS】金融庁、デジタル証券の発行拡大と普及促進で規制緩和へ

里見 晃
2024/05/09

STの普及見据えた動き

金融庁が不動産などを裏付けとしたST(デジタル証券:セキュリティトークン)の普及に向け、8月に内閣府令を改正し、規制を緩和することがわかった。8日、日本経済新聞が報じた。

1つの金融グループが発行から引き受け、販売までを一貫して手掛けられるようにすることで、商品数の拡大を促進し、投資家が購入しやすくするとしている。同時に、日本証券業協会は投資家保護のルールを整備するという。

STは社債などの有価証券をブロックチェーン上で発行してトークン化したものだ。1円単位にまで小口化することで個人でも購入しやすいという利点があるほか、ブロックチェーン上で発行されることで原則24時間365日取引することができる。

2023年度の国内発行額は累計1,000億円。そのうち85%を占めているのが不動産物件を裏付けとしたSTだ。

STは信託銀行が保有者から管理を受託、信託受益権という形式で小口化した証券を組成することが多い。STは証券会社が引き受け、投資家に販売する流れであるが、これまでは価格決定の透明性の確保からグループの証券会社は引き受けすることはできなかった。

今回の規制緩和により、発行会社と同じ金融グループで発行することだけでなく、引き受けや販売まで一貫して実施することが可能となり、収益予想が立つようになるためデジタル証券による案件が増加すると見込まれている。

規制緩和後は、透明性確保に向け、価格決定の協議の経緯を開示することが必要になる。価格決定の透明性を保つため日証協は規制緩和にあわせて、金融機関が投資家に公表する項目を拡充する。さらに、投資家保護のため、STを発行する信託銀行が自社グループ以外の独立証券会社と進めた価格決定の協議の経緯、支払った手数料の有無などを開示するようにするとしている。

価格設定にあたっては、不動産鑑定士や公認会計士による評価額を算出することが適当であると規則に定めた。独立証券会社の承認も条件となる。


拡大するST市場

現在、STの市場規模は世界中で広がっている。ボストン・コンサルティング・グループ(Boston Consulting Group)は2022年に3,100億ドル(約48兆円)だった世界のSTの発行額は2030年には16兆ドル(約2,500兆円)規模になると試算している。

証券取引所がSTの売買市場を作る動きもあり、スイス証券取引所を運営するSIXグループはデジタル資産の取引市場を運営している。また、ニューヨーク証券取引所などを傘下に持つインターコンチネンタル取引所もデジタル証券の売買サービスを提供するtZEROに出資した。

国内では、SBIグループや三井住友ファイナンシャルグループが出資する大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)が私設取引システムの「START(スタート)」を開設し、2023年12月にはSTの売買を始めている。なお、日本取引所グループ(JPX)もSTの流通市場を2024年度末までに創設を目指している。

参考:日本経済新聞
画像:Shutterstock


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