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WebコラムWeb3.0用語
Web3.0
暗号資産
NFT

麻生太郎氏の一言を思い出す Web3.0を推進するために求められる“専門用語”を使わない世界観

Shogo Kurobe
2023/10/03

今こそ響く麻生氏の一言

“Web3.0業界”と一括りにされる前、まだ“仮想通貨業界”と呼ばれる方が馴染みある時代に参入した身としては、現在の市況や企業の動きをみると随分時の流れに身を任せてきたものだと感じる。その過程で生まれたもの、廃れたもの——数多の出来事を眺めてきた。


当然、仕事柄多くの言葉やあらたに生まれる専門用語などを目にするわけだが、その都度思うのが「この言葉は本当に人に伝わるのだろうか?」ということだ。

もちろん端的に伝えるべき状況であったり、伝わる人間にのみ伝われば良いといわれてしまえばそれまでだが、まだまだ狭いこの業界でそれをさも当然のように日常でも多用し続けるのはナンセンスだと自戒している。

きっかけは何年か前、国内で「仮想通貨」の呼称が法的に「暗号資産」へと変わった時期だ。当時の財務大臣であった麻生太郎氏が国会答弁で一言つぶやいた。

「暗号資産よりデジタルコインの方がイメージが良いんじゃないか?」

これを聞いてたしかにと思った。何も知らない状態であるならば想像しやすいなと。

ただ、これだと現在各国で開発が進められているCBDC(中央銀行デジタル通貨)や地方自治体で発行される地域通貨とも重なる部分がある。だからこそ呼称をわけるべきではあるのだが、もっと馴染みやすく適切なものがあるかといわれると自分自身答えは未だにみつかっていない。


NFTは「デジタルアイテム」ガス代は「手数料」でいい

Web3.0というと、本格的になかに入って資産を動かしたりする前に知っておいた方が良い言葉が多々ある。Web3.0という概念では基本的にあらゆるものを自己管理する必要があり、自己防衛の意味でも知識を積み重ねることは重要だ。さまざまな領域でも同じことがいえるだろうが、特にこの業界ではそれが顕著だと思う。

だからこそ、人が集まりにくい。正確には取っ付きにくいといった方がいい。ビットコインなどの暗号資産は寝て起きれば価格がひっくり返っていることもあるほど乱高下しやすい資産であり、既存金融と比べてハッキングリスクも高いというのは周知の事実。これに加えて、難解な専門用語が散らばっていてなおかつ自己責任の範囲が広いのであれば、誰が簡単に足を踏み入れてみようと思うのだろうか。

「Web3.0のマスアダプションを目指す」というからには、我々メディアも含めて業界全体がもっと寄り添う姿勢をみせなければいけない。マスアダプションという言葉も本来使う必要がない。「Web3.0という概念を広めていくことを目指します」。これでいいのだ。

NFTも「デジタルアイテム」、ミントは「作成」、ガス代は「手数料」。本来はこれでいいと個人的には思っている。専門用語やカタカナを並べたところで現状では参入障壁を上げるだけだ。

ずっとこのように思っていたところ、先日業界で著名なインフルエンサーが同様の疑問を投げかけていた。それに対する反応をみると、同じように考えている人はまだまだ多くいるのだろうと感じる。それと同時に、自分自身も気を付けなければならないと心から思った。


Web3.0を広める上での好事例

最近の事例だと、ブロックチェーンゲームを手がけるdouble jump.tokyoの子会社・Oasys Walletが提供を開始した「Oasys Passport」というウォレットは親切な設計だと思った。宣伝する気は毛頭ないと先に断っておくが、難しい言葉は限りなく少ない上に視認性も高く、個人的にも使ってみようと思えた。

また、カルビーが博報堂と手を組み提供した「ポテトNFT」も体験としては良かったのではないかと思う。

これはカルビーがすでに実施している「ルビープログラム」の一環で、パッケージを織り込んで二次元バーコードを読み取るとNFTを取得・成長させることができるというものだ。

NFTに触れたことがない方であれば、ポテトチップスを食べてついでによくわからないけどデジタルデータがもらえるということで、「ひとまずやってみるか」という気持ちになった人も少なくないと思う。Web3.0領域に触れる最初の一歩を踏み出させるための動機付けとしては十分だと感じた。


求められる専門用語を使わない世界観

これからウォレットを始めWeb3.0関連サービスを作ろうとするのであれば、まずはサービスを使うユーザーのことを考え、もう少し目線を下げる必要があるだろう。

現在進行形で「暗号資産の冬」と呼ばれる市況が続くなか、「今が仕込み時だ」と声をあげる企業やプロジェクトは少なくない。そうであるならば、我々の業界風にいうとWeb2.0領域にいる層をもっと意識する必要がある。

意識するポイントとして、まずはやはり専門用語を多用しないことだ。専門用語を多用しなければ伝えることができない状況ではなく、誰もがわかる言葉で目線をあわせて伝えていく。

市況も芳しくなく土台作りのフェーズと捉えるならば、そうした地道な活動が後に大きく響いてくる。Web3.0の国内での広がりや各企業の現状などを踏まえれば、これがWeb3.0を推進する上でまず求められる世界観だと思う。

画像:Shutterstock



Profile

◉Shogo Kurobe
2018年より暗号資産業界に参入。学生時代に文章を学び小説執筆などを行ってきた経験から暗号資産やブロックチェーンに関する記事執筆及び企画・編集に携わる。株式会社J-CAMで2022年4月より副編集長に就任し現職。2023年3月に「Iolite(アイオライト)」創刊。



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