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日本を変えるかもしれないAIアプリ
AI
Web3.0
2023/07/27

日本を変えるかもしれない業界別効率化AIアプリ 前編

身近な存在になったAI各業界での活用と導入状況は?


AIの本格的な利用が各種の産業分野で拡大傾向にある


近年、急速に発展するAI技術を利用して、パソコン、スマートフォンやタブレットなどのデバイス上で動作するアプリケーション「AIアプリ」を開発、取り入れる動きが各業界で加速している。

AI技術を用いることによって、データの解析や予測、判断などの高度な処理が可能となるが各業界ではどのように運用、もしくは開発、導入されているのだろうか。


さまざまな業界で導入され始めたAI技術


AI技術は、近年急速に発展しており、さまざまな業界で導入されるようになってきた。AIを利用することで業務の効率化、コスト削減、ビジネスの成長促進などに役立つため、加速度的に多くの企業が積極的に開発と導入を進めている。

一般的に、AIの導入状況をみると、IT業界や製造業界が業界の体制・体質とAIとの親和性から比較的早い段階でAI技術を導入し、その効果を実感している。現在では日常的に利用されているといっていいだろう。

その一方で、近年はそのほかの業界においても積極的に各業界に特化したAIアプリ開発、導入が進められており、今後はさらに身近な存在となっていくことだろう。

このように各業界ともAIの導入を推進しているという現状ではあるが、現段階でのAI技術ではできることとできないことがハッキリとわかれており、それが各業界の共通認識であると共に、ある種の大きな課題のひとつにもなっている。

現段階におけるAI導入の最大のメリットは大量のデータを高速かつ正確に処理、分析することなのは説明するまでもない。ここ数年で加速度的に進んだペーパーレス化の現代社会においては、どの業界もビッグデータを有している。

過去から蓄積されたビックデータをマーケティングにどう活かすか、これは昨今のマーケティング業界のトレンドである。この一点だけとっても、現状でも十分な処理能力を有するAIを導入するメリットがあるといっていいだろう。


「ChatGPT」や「Midjourney」にみる現状のAIの課題


人間が処理しきれないほど大量のデータを短時間で分析して精度の高い判断を下すという現段階でのAI導入最大のメリットを活かしているものとして、たとえば金融分析や天気予報、 医療診断などがあげられる。また、一定の規則に基づき効率的にタスクをこなすことも可能なことから、たとえば産業分野ではAI搭載ロボットが代替することで、単純作業や危険作業の効率化とリスク軽減に役立っている。

近年、一般社会においても「ChatGPT」や「Midjourney」といったAIアプリが話題となっているが、これらが登場する以前、AIが不向きとされてきたのがアーティスティックやクリエイティブという分野だった。

ところが、このデメリットを解消したのがChatGPTやMidjourneyだ。たとえば、過去の膨大なデータをもとに、まったくゼロからではないものの、ChatGPTやMidjourneyで自然かつクオリティの高いイラストや画像の生成が可能となったのだ。

これはつまり、写真家やイラストレーターなどある程度のスキルや専門知識が必要とされるアーティスティックやクリエイティブという分野 において、極端で大げさな例になるが、知識ゼロ、スチールカメラを扱ったこともない、画も描いたことがない人間でもChatGPTやMidjourneyを利用することでプロ並みの作品を生み出すことができるようになったともいえる。

その一方でChatGPTやMidjourneyのようなAIアプリの登場でみえてきたAIの現段階における課題もある。たとえば、出版業界における盗作問題、あるいは著作権問題などがあげられる。ChatGPTやMidjourneyでイラストや画像を生成した場合、権利関係の所在がどこにあるのか悩ましいところだ。

通常、イラストであれば、当然作成者が著作権を有している。ところが、過去の膨大なデータから生成するChatGPTなどで生成した場合、ゼロベースから生成しないため、収集したデータのなかに何らかの権利物を含んでいる可能性もある。そうしたことから、ChatGPTやMidjourneyで生成した作成物は、法的にも道義的にもそれを生成者の権利だといえるのか?というのが現在の出版業界におけるAI利用の課題としてあげられている。

ここまでは出版業界を例にあげたが、これは研究論文などを扱う学術界でも同様の課題があるといえ、著作権というものは調査結果を含むデータ関係にも当然存在するので、このような権利関係の問題がAI導入・活用する上で、課題としてあがってくるのではないだろうか。

そのほか、有識者によると、非定型的な問題の解決や感情、人間関係の理解、倫理的な判断という点やサイバー攻撃リスク、データ品質の問題、トラブル時の責任問題などでAI導入に際して直面する課題があるとされるが、あくまでも現段階における課題であるということは指摘しておきたい。当然、AIは今後も進化していく技術であるし、その進化の過程でこうした課題は解消されていくだろう。


日本企業のAI導入状況とAIシステム利用割合


PwC Japanグループが毎年行っている日米企業を対象にしたAI予測調査によると、2022年の調査では日米のAI活用度にほとんど差がなかったが、2023年の同調査では乖離が生じていると指摘している。

同社の調査によると、日本ではAIをビジネス活用している企業が約50%であるのに対し、米国では70%超と大半の企業が活用している。未導入企業に着目するとその差はさらに歴然となり、米国ではAI未導入企業が12%で少数派であるのに対して、日本ではAI未導入企業が35%と、企業の約3分の1がいまだ検討・実証段階を脱していないとしている。

その一方で、IDC Japanが発表した「2023年の国内AIシステムに関する企業ユーザ調査結果」によると、限定された部門でのPoC(概念実証)から全社利用までを含めると、国内企業のAIシステムを利用する割合は72.4%になったと指摘している。

こうした調査などから世界的にみると日本企業のAI導入はやや遅れ気味ではあるが、国内AIシステム市場は、データ分析、業務自動化、顧客サービスへの適用など、AIの本格利用が産業分野各種で拡大していることがわかる。


実際にAI導入してさまざまな企業が成果をあげている


では、実際にどのような企業がどのようにAIを導入しているのだろうか。各業界のAI導入事例をみていこう。

まず長時間労働が社会問題として認知され、働き方改革の名のもとに是正されるよう取り組みが進められている物流業界では、長時間労働のほか、再配達・受け取り拒否問題による業務過多、積載率の低下によるドライバーの負担増加といった課題に直面していた。このような課題を是正するため、AIを導入し、課題解決に向けて推進している。

AIの導入により、蓄積した過去のデータを大量に分析することで物流量やピークタイミングの予測精度を上げることが可能になり、需要予測による在庫の適正化が実現し、物流センターの作業人員シフトの最適化や、トラック輸送の人員配置を最適化することで、省人化や効率化が可能となり、長時間労働の是正につながっている。

そのほか、自動走行システムを利用した高速道路のトラック走行の実証実験が進んでおり、これによって制約条件下での配車計画を自動立案して、台数やルートを効率化することが可能になる。

また、IoT技術によりモノをインターネットにつなげることで商品にセンサーや通信機能を搭載して、状態や動作を確認したり、RFIDタグを用いた商品管理によって検品作業を効率化することも可能だ。

もうひとつ、製造業界におけるAI導入事例をみてみよう。製造業界では外観検査、異常検知、予知保全といった業務領域において、AI導入が日々進んでいる。これまで製造業界では少子高齢化による慢性的な人手不足や従業員の高齢化のほか、若い労働者不足による技術継承の減退、さらに人口減少とグローバル化による競争の激化という課題に直面してきた。こうした課題の解消を目的にAIが導入されている。

AI導入により、作業の効率化が図られ、作業の安全性も向上し、品質も均一化、従業員へのストレスも軽減、従業員の疲労によるパフォーマンス力の低下も抑制でき、人的事故の減少にもつながっている。

本特集の後編では、導入例とした物流業界や製造業界のほかにも、主な業界の導入事例や動向などを紹介する。ぜひ各業界のAI事情の認識に役立ててもらえたら幸いだ。


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日本を変えるかもしれない業界別効率化AIアプリ 後編(8月8日掲載)

Iolite 編集部