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NFT
Web3.0
メタバース

VERBAL 独占インタビュー NFT領域であらたな挑戦を続ける——

Iolite 編集部
2023/03/29

アーティストVERBAL氏が率いる
ファッションブランド「AMBUSH」が
NFT領域であらたな挑戦を続ける

——VERBALさんがNFTやメタバースに触れたきっかけは?

VERBAL:僕はもともとVR、つまり仮想空間でライブを行う可能性を探っていた時に、NFTのユーティリティの部分に着目しました。端的にいえば、そこで閃きが生まれたのがきっかけです。

それまで、NFTやブロックチェーンについては聞いたことはあるけども、何のことかわかりませんでした。暗号資産を売買している人や詳しい人は周囲にいたのですが、あまり自分のやっていることとのつながりを感じていなかったのが正直なところです。

少し過去を遡ると、僕は2012年頃からモーションキャプチャースーツの企画・レンタル事業も行っていました。その当時「Skrillex」が上半身だけでアバターを操作していて、それがオランダ発のモーションキャプチャースーツ「Xsense」だと知り、僕も何台か購入しました。

しかし、当時僕たちがやりたかったことと技術者のできることが国内で一致しなかったんですね。そんな時にさまざまな点で一致したフランスの方と出会い、モーションキャプチャースーツを使ったいろいろな演出を僕が所属する音楽グループ・m-floのライブで実験的に行いました。

その体験やノウハウがきっかけで、「仮想空間のなかでもライブができるじゃん!」と感じましたね。

世界中の人たちと仮想空間のなかでつながれると感銘を受け、ちょうど注力し始めた時に新型コロナウイルスが感染拡大しました。

コロナ禍でフィジカルなライブができなくなり、バーチャル空間の活用を模索していたタイミングで、ひょんなきっかけから友人にNFTを教えてもらいエアドロップしてもらいました。

それが2020年の年末から2021年にかけてでしたね。手にしたタイミングとしては後発組に分類されると思うのですが、そこから「NFTとは何だろう」と興味が湧いてきました。

『これを持っているとトークンゲートされた部屋に入れる』『これを持っているとディセントラランドのような空間でスニーカーを履くことができる』などを知って、「そんなことができるの! ?」と驚きました。

従来のゲームでも似たようなスキームがあるのは知っていたのですが、それを分散型でトレードや分配ができるという発想はすごいなと思いましたね。

アクセスパスのようなチケットにもできるし、おまけを付けることができるなど、可能性を感じました。そこから閃きが生まれ、ハマっていきました。

——同じm-floのメンバーである☆TakuTakahashiさんともNFTについて話しますか?

VERBAL:TakuももちろんNFTが好きで、みている角度は高いなと思います。僕が立ち上げたAMBUSH®(アンブッシュ)というブランドのNFTをエアドロップしたのですが、その際に「最近はカルダノ(Cardano)っていう暗号資産を買ったんだよね」という話が出て、どちらかというと暗号資産投資の方に関心が高いのかなとは感じました(笑)。

特定の暗号資産に関しては詳しいと思うので、今度じっくり話を聞かせてもらおうと思います。


NFT、メタバースでは自分のアバターと周りとの「差別化」を意識するようになる。
そのために必要なアイテムが「ファッション」——


——2022年にNFTを発売してわずか2分で完売。何か気をつけたことなどは?

VERBAL:タイミングが良かったということに尽きるかなと。あとは販売までにかけた準備とケアを慎重に行った点は良かったのかなと思いますね。

というのも、日本のプロジェクト、ブランドですので、国内法に準拠する必要があります。エアドロップにしても、行う際にアナウンスをしないと課税の対象になる可能性があるので気をつけました。

また、「ファッションNFT」という位置付けで行っていましたので、ファッション業界からの注目もありました。NFTやメタバースに対する知識が追いついていない方には直接会ったりZoomなどを利用してウォレットの使い方等を解説させていただきました。

こうしたオンボーディングに加え、既存のWeb3.0領域に属する人たちへの訴えなどが十分にできた段階でリリースできたのも大きかったのではないでしょうか。

あと、僕たちが出したNFTは「POW!® Reboot」というものなのですが、実はAMBUSH®も2008年に「POW!® Ring」というものからスタートしたんですね。

その時とまったく同じデザインのNFTは、特別ブランドというものを意識して始めたわけではなくて、妻でデザイナーのYOONと一緒に「面白いものができたからプレゼントしよう」という発想や流れから生まれました。

「POW!® Reboot」を出す前に99個のNFTをギフティングでエアドロップしたのですが、それがきっかけで「それって何?」「NFTをリリースするの?」といった声もいただきました。そうした反響があった上でのNFTリリースでしたので、流れが良かったのかなと思います。

——「ファッション×NFT」のメリット・デメリットとは?

VERBAL:わかりやすいところでいえば、たとえば類似品が出たとしてもそれがオフィシャルでなければ偽物だと判断できる点はNFTのメリットでしょう。また、デザインの自由度が高い点は貴重だと思います。

ファッション業界にはトラディショナルな部分があって、僕たちがミラノやパリコレなどに行くとある程度お決まりごとみたいなものも存在します。

その点、Web3.0の文脈でのファッションというと、全くあたらしいクリエイターの人たちを迎え入れることになるので面白くなるのかなと感じています。

たとえば、メタバースに入った時というのは重力の縛りを受けないので、サイズ感や面白い形などを表現できると思います。

もともと、ファッションも19世紀中頃まではオートクチュールとレディ・トゥ・ウェアの境目はありませんでした。

強いていえば、お金持ちの人が高額な料金を支払って職人に作ってもらった派手な服と、そうではない人たちが鮮やかでない服をユーティリティベースで、仕事がしやすいから着るというだけで分かれていました。NFTとの関連性でいうと、今はファッションがスタートした時と同様に基準がないレベルだと思いますので、エキサイティングな時期だと思います。

——NFTとファッションを掛け合わせた時の課題を感じる部分は?

VERBAL:やはり複雑なところですかね。どうしてもファッション業界の人に話をしてみてもまだ理解しきれていなさそうだなと感じます。その反面、いろいろな表現を交えたり、さまざまなメディアを通して技術を入れていこうとする方々もいます。

僕自身もそういった方々には極力Web3.0領域の難しい用語を交えないようにして話をするよう努力しています。


音楽とNFTの親和性は難しい面もある。

——「音楽×NFT」で期待している部分は?

VERBAL:やはりコピーができない、すぐに偽物だとわかる点がメリットとしてあげられますし期待できると思います。

自分の原盤を発売することや、アクセスパスやライブチケットといったものでも、NFTとして販売すればもとの持ち主が誰なのかを証明したりロイヤリティの仕組みを構築することもできます。

そもそも転売されることが前提の話ではありますが、メリットの部分で考えるとさまざまな期待値があって、そのなかでトランザクションが行われるというのは音楽とNFTが掛け合わさった時の可能性かなと思います。


臨場感はボリュメトリックスキャンで、
アーティストのライブの動きを録画、
メタバースにインポートするといった工夫はできる——

——音楽のライブで体感することができる振動や躍動感をNFTで表現するアイデアは?

VERBAL:臨場感は難しいポイントですね。それでも、ボリュメトリックスキャンという技術を使って、アーティストのライブの動きを録画し、それをメタバースにインポートしてみんなでみるなど工夫することはできます。

自分の好きなアーティストが目の前に現れてみることができるというのは面白いと思います。たとえばですが、実際の東京ドームでのライブだと観客席からステージが遠いですが、メタバースなら目の前でみることができる。

極端な話だと、そのアーティストの楽屋に入るなんてことも可能でしょう。

アーティスト目線でも、現実の世界で急にお客さんが楽屋に来たといわれると少しハードルの高さを感じてしまいますが、それがメタバースなら安全性も担保できますし、双方にとってあたらしいコミュニケーションの形としてエンタメ的な距離の縮め方が可能になるのかなと感じます。

——NFTやメタバース領域における海外とのギャップは?

VERBAL:やはり英語が主流ですので、日本で情報を習得しようとするとワンテンポ遅れるなと感じる部分はあります。

NFTが大好きな人はオンタイムで情報を得ていて、ある程度の知識はあるのかなと思います。

しかし、ロサンゼルスなどに行くと多くの人たちが一定の知識やノウハウを持っていて、日本との空気感の差を感じます。

現状、NFT領域は英語圏の人たちの間で普通なものとして広がりつつある文脈だと思いますので、そこはギャップというか、ネックになっている部分なのかなと思います。

——ファッションや音楽と同様、NFTのようなデジタルアセットにも流行はある?

VERBAL:大前提として、暗号資産等のデジタルアセットはボラティリティが激しく、良くも悪くもエキサイティングな市場ですので、ステーブルコインのような比較的安定したトランザクションを生み出せるものが広がっていかないと怖がってなかなか人が寄ってこないのではないかというのが個人的な印象です。

——あたらしいプロジェクトが新規ユーザーの心を掴むアイデアは?

VERBAL:僕は実際に暗号資産で決済ができるようになるなどの利便性が重要になると思っています。なかには暗号資産で決済をしたいという人もいるでしょうし、特に初めてこの世界を体験する人たちにメリットを感じてもらう取り組みが大事だと思います。

飛行機に乗り続けてマイレージが貯まったとしても既存のシステムでは譲渡できませんが、ブロックチェーンを活用すればそれが可能になります。そういった点は面白いところでしょう。

そうした取り組みが広がっていくと、友人同士での「ちょっとそのNFTを貸してよ」なんてやり取りも増えていくでしょうね。

——メタバースの魅力とは?

VERBAL:僕はもともとゲーマーで、なおかつこの世界観が好きなのでバイアスがかかるかもしれませんが、やはり表現の可能性を秘めている点は面白いなと思います。

僕がすごく感銘を受けたのが、現実世界でなかなかアーティスト活動をすることが難しい人が、メタバースで活躍していることですね。デザイン感や世界観の幅広さも要因としてあげられるでしょう。

身近なところでいえば、デザイナーの方が履歴書代わりに自らが作成したメタバースのリンクを送るなんてこともできるので、自分を知ってもらう活動をする時により視覚的に相手に物事を伝えられる、自分の発想を発揮できるツールであるというところは魅力だと思います。


「自分の気持ちに正直になって追求することが将来へつながる」

——VERBALさんが牽引するAMBUSH®の展望は?

VERBAL:AMBUSH®ではコラボレーションを通じてシナジーを生んだり、あたらしい発想を取り入れています。その点で、我々がWeb3.0を活かしているというのは自然な流れになります。

今後もWeb3.0領域で取り組みを深く進めていきたいと思います。僕たちが手がけた「POW!® Reboot」も2023年2月で開始から1年になりますので、あたらしいことをして現実世界にもつながる次のステップに進みたいですね。

——今後コラボしていきたいジャンルは?

VERBAL:コロナ禍ですごく感じたのはWeb3.0の加速で音楽とファッションの垣根が薄れつつあるのではないかという点です。

音楽とファッションは近いようで遠いものだったのですが、Web3.0の出現によって双方が混ざる瞬間というのを目の当たりにしたんですね。僕はそこがヒントになるのかなと思いますし、追求していきたいです。

現段階でいえば、音楽関連のNFTに関する法的整備も進んでいないので、うかつに「音楽NFTを発行しよう」とはなりにくいと思います。それでも、ファッションと音楽をつなぎ込むことはロングタームで考えていきたいです。

今最も追求したい領域ですと、DeFiを活用した楽しさのあるWeb3.0ならではのショッピング体験ですね。頭の片隅に常にこの考えがあります。

——最後に、Web3.0領域へこれからチャレンジしていく方々やクリエイターに対して一言。

VERBAL:自分が何をしたいのかを明確にすることが大事だと思います。例としては買い込みたいNFTをみつける、何のためにメタバースを散策するかなどですね。

投機的にNFTを集めるでも、勉強するためにメタバースを利用するでも、はたまた暗号資産だけに集中するでも良いと思います。自分の気持ちに正直になって追求することが将来にもつながっていくのではないかと思います。



Profile

◉VERBAL
m-floでの活動の他、超豪華ラップグループTERIYAKI BOYZ®、新たにスタートしたクリエイティブユニット PKCZ® 、HONEST BOYZ® のメンバーとしても知られ、独自のコネクションを活かし数多くのアーティストとコラボレーション。Pharrell、Kanye West、AFROJACK など海外のアーティストとも交流が深い。近年はDJとしても飛躍を遂げ、そのスタイルはファッション界からの注目も熱い。デザイナーのYOONと共に2008年にスタートしたジュエリーブランド ”AMBUSH®” ではクリエイティブディレクションを手掛け、これまでに Louis Vuitton (Kim Jones)、SACAI、UNDERCOVERなど錚々たるブランドともコラボレーション作品を発表している。2015年にはファッションニュースサイトBusiness of Fashion にて【BoF500〜世界のファッション業界人トップ500】の一組に選抜。



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Iolite 編集部