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編集後記vol.5
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Sensibility「蓋が外れた瞬間」——Iolite vol.5 編集後記

Noriaki Yagi
2023/12/03

Editor’s Note
「蓋が外れた瞬間

9月13日、11月発売号の撮影とインタビューがあった。感動を原稿に落としたくて、当日の夜に熱を帯びたまま、この原稿を書いている。

ご存知の通り、今回表紙を飾ってくれたのはギタリストMIYAVIさん。

数日前からインタビューをイメージして、彼が書いた著書を読んでいた。初めに本を読んで思った印象は、アーティストとしての顔とそのアーティストのマネジメントをする顔が、彼の中に共存しているような点。そして、著書の中で複数回出てきて印象に残った「自由」というキーワードを、インタビューを通して深掘りしたかった。

実際に会った時の印象は、「竹のようにしなる刀」のような存在感。しなやかな柔軟性のなかに力強さを感じた。本番に臨む時、ギターを持った時、彼の内に秘められた力が噴き出すような勢いがある。インタビュー開始直後、近くに立て掛けたギターの演奏を恐れも知らずに彼に依頼した。

インタビューまでの1週間、仕事に行く時も帰る時も、夜ランニングする時も、移動している時間はずっと彼の音楽に触れていた。彼の前に向き合ったインタビュアーは、Ioliteの編集長でありながら、ビックスターに会う少年のようだったと今になって自分でも思う。

その空間が幸せで、忖度のようなものは一切なかった。私の無邪気さに彼も答えてくれたのだろう。「おぉ、今(笑)」といいながらもギターを叩いてくれた。まさにスラップ奏法は弾いているというより叩いているようだ。

彼もインタビューのなかで、相撲や三味線などの日本の伝統的なモノを例にあげ、海外とは違った日本特有のタイミングやリズムの取り方は、世界で活動をしていても武器になると話していた。

私の目の前で奏でられた音楽は、毎日のように聴いていた音楽とは全くといっていいほど違った表情を見せた。最初の一音は音というより振動に近い。衝撃を受けた後にじんわりと感動が迫ってくる感覚は、光と音の関係のようで実に自然だった。

彼はメタバース上でのライブを経験していたこともある。「メタバース上のライブパフォーマンスを経験された感想は?」という質問に対して、「音楽はイヤフォンや動画を通しても聴くことができるけれど、五感に直接伝わる波動のようなものは実際のライブじゃないと現時点では伝えられないと思った。」と答えた。

手を伸ばせば届くような距離で彼の音楽を目の当たりにしたからこそ、彼のいう言葉には強烈な説得力を感じた。それでも付け加えるように、「現実世界ではできないことをできるのも確か」と話した。彼のなかでも、現実の世界と仮想の世界のそれぞれの良さを汲み取ろうと向き合っていて、将来起こるであろう現実と仮想の間の“調和”を思い描いているようだった。

自由についても語ってくれた。私の抽象的な質問に対して、「自由かぁ(笑)」と笑みを浮かべながらも、真剣に向き合い口を開く。「自分が自分として存在することが許さ れていること。でも、自由であるからといっ てなんでもして良いわけではなくて、前提に他者との関係性が含まれている。」と語ってくれた。

“和”を持って目の前の世界と対峙するサムライギタリストの姿は儚く尊い存在で、彼が語ってみせてくれた物事との向き合い方は、良い意味で感性の蓋を外してくれる貴重な出会いであった。



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