logo
ログイン会員登録
OKCoinJapan記事詳細
OKCoinJapan記事詳細
佐々木様vol4
Web3.0
金融・経済

佐々木俊尚の考える「マスメディアの未来」 Tech and Future Vol.4

Iolite 編集部
2023/11/30

「情報の伝達」という部分においては
マスメディアがなくても完結している

Transfer of information

佐々木俊尚氏にテクノロジーと社会の未来を訊ねる連載企画。
今回のテーマはマスメディア、そして新聞やテレビの「未来」


——現代のメディアのあり方についてお聞きできればと思います。まずコミュニケーション学者ウィルバー・シュラムが60年代にマスメディアの役割を「監視」「討論」「教師」の3つの機能としましたが、現在ではSNSや動画プラットフォームの普及によりその意味合いも変化してきたように思えますがいかがでしょうか?

佐々木俊尚(以下・佐々木)メディアの役割というのは色々な考え方がありますが、まずは「情報の伝達」、次に「権力の監視」、もう1つは今何が社会にとって重要なのかという「アジェンダの設定」という3つがあげられます。

そのなかで「情報の伝達」に関していうと、インターネットの出現でメディアの役割は低下してるといえます。 たとえば、新聞でいうと災害や紛争などが起きた場合に朝刊夕刊よりもSNSの方がもはや情報発信は早いわけです。

テレビもインターネットと同じぐらい早いですが、情報源となっているのがインターネットとなっているものが多いですよね。テレビや新聞の世論とインターネットの世論は乖離している部分があります。

たとえば、政権支持率に関しても世論調査の支持率とインターネット上の支持率が近いということもあり、自民党政権はインターネット上の支持率を重要視して、新聞やテレビを経由せずに有権者に向けてインターネット上で情報発信しています。

このように「情報の伝達」という部分においては、もはやマスメディアがなくてもインターネット上で完結するということが起こっているといえると思います。


——「アジェンダの設定」に関してはいかがでしょうか?

佐々木「アジェンダの設定」ということに関してはインターネットは弱いかなと思います。インターネットは情報が集約されないまま拡散するという特性があり、WebサイトやSNSアカウントが無限に作られる世界です。

つまり、枠の有限性がないので、何が重要なのかという共通認識が生まれにくいんです。実際に、SNS上の一部だけで盛り上げるということが起こるのはこのためです。

その一方で新聞とテレビは限られた枠内で情報を発信し、その枠内のトップがニュースの重要性の担保になっている、もしくは掲載されるだけで重要にみえるんです。


——「権力の監視」に関してはいかがでしょうか?

佐々木権力の監視もインターネットでは難しいのではないでしょうか。今のインターネットの重要な問題というのは儲からないということなんです。権力の監視、調査報道というのは取材にものすごくお金がかかるんです。1本の取材で何十万円や、取材によっては100万円以上かかるものもあります。

インターネットのない時代は媒体の数が限られ、需要に対して供給が少ないため、テレビCMや新聞の広告費が高額でした。そのため、かつてのテレビや新聞は高額な調査費用を補うだけの余裕がありました。

一方でインターネットはいくらでも情報量が増やせるので需要過多になります。そのため、Webメディアを立ち上げたとしても、いきなり何百万人に読まれるということは難しいと思います。確かに1つの記事が偶然バズって何百万人に読まれるということはあるかと思いますが、その記者が書いた記事が継続して読まれるということはまずないと思います。

つまり、かつてのテレビや新聞ほどの広告費は入らないので、調査報道をインターネットでやろうと思っても不可能です。ただし、新聞も部数がどんどん減って衰退局面に入って、仮に新聞がなくなった後に調査報道や権力監視をどうするかというのが悩ましい問題になってきていると思います。


2000年ぐらいから議論されてきたテーマ
「通信と放送の融合」は現代でほぼ完成している


——今後、生き残るメディアと消滅するメディアの違いなどはありますか?

佐々木インターネットはメディアの役割をさまざま奪ってきたと思いますが、マスメディアが旧来持っている役割で奪えないものも残っているので、そこをどうすみ分けして古いメディアを一新させるかが課題となっていると思います。

たとえば、テレビに関していうと報道部門と番組部門があるので生き残る余地があると思います。『VIVANT』のようにNetflixのドラマに見劣りしないドラマもありますから、テレビ局はしっかり番組作りさえしておけば経営自体は維持できると思いますし、そういったことで利益を出して報道部門を維持していくというのはありえると思います。


——新聞の方はいかがでしょうか。

佐々木新聞の方は難しいと思います。読者が現状すでに平均年齢50代後半から60代に差し掛かるといわれてお り、実質は高年齢者しか読んでいない状況です。このような状況下で日本の新聞各社は電子版に活路を見出したわけですが、成功といわれているのは日本経済新聞だけといわれています。

部数もかつてに比べて半減、もしくはそれ以下になってきているので、このペースでいくと今後10年でほとんど消滅していくのではないかといわれていますが、そうはいってもすべてなくなることは考えにくいので、かつての銀行のように統廃合を繰り返すなどの可能性もありつつ、1、2紙ぐらいは残るのではないかともいわれています。

——それはズバリどの新聞社でしょうか?

佐々木たとえ紙のメディアがなくなっても、Web媒体として全国規模の取材体制を整えたメディアが生き残る可能性はあるといわれています。ではそれはどこかというと、読売新聞や日本経済新聞です。部数がこの20年間減っていくなかで同時に読者が高齢化していくわけですよね。

数が少なくなっていく読者にあわせて極端化していっているのが近頃の新聞で、朝日や毎日が左傾化したり、産経が右傾化したりしています。そういった状況を見渡すと、わりとニュートラルな読売新聞や日本経済新聞が生き残るという予想は妥当な予想かと思います。

新聞の可能性としてもう1つ考えられるのは、10年ほど前にジェフ・ベゾスがワシントンポストを買収してテクノロジードリブンで成功したという例もあるので、現在の旧態然とした新聞の作り方・販売の仕方を一新させて、取材力そのものを生かしつつテクノロジードリブンでWebメディアに変えるみたいなことをして、そこに外資の参入があるかどうか。

ただ、そういったメディアができたとして、どのように利益を維持するかというビジョンが存在していないのであくまで可能性の話ではあります。少なからず期待されているのは確かです。


民放各局の努力次第でTVerは地上波に代わる
広告費を稼ぐメディアに成長する可能性がある


——YouTubeなどの動画サービスのメディアとしての今後の可能性はいかがでしょうか。

佐々木YouTubeも玉石混交なので、結局は制作能力でいうと既存の制作会社が強いというのがわかってきたということでしょうか。2000年代初頭には給料も安く労働時間も長いとのことで優秀な人材が集まらなくなってテ レビ局は衰退していくといわれていました。

それがここ10年ぐらいでNetflixが登場したことにより、日本の映画業界やテレビ制作業界から優秀な企業が巨額のお金が入ってくるNetflixに参入していく状況が生まれています。『全裸監督』や『今際の国のアリス』 がそうですよね。

先述の通り、地上波でも『VIVANT』のようなドラマも制作されていますし、制作能力の点ではフラットかなと思います。その一方で、そういった番組をどういう形式でみるのか、つまり、地上波なのかオンデマンドなのかで考えると地上波は厳しいといえると思います。

コロナ禍において、Netflixなどの加入率が上がり、オンデマンドでみるのが当たり前になりました。一方、このような地上波に厳しいような状況でTVerが登録者6,000 万人を突破するなど伸びているんです。TVerは民放各局の努力次第では地上波に代わる、もしくは地上波を補完する形で広告売り上げを上げるメディアに成長する可能性が十分にあると思って注目しています。


Book Review

『この国を蝕む「神話」解体 市民目線・テクノロジー否定・テロリストの物語化・反権力』

「権力は常に悪」「庶民感覚は常に正しい」「弱者は守られるべき存在」「人工的なものは危険」「自然由来が最良」…日本の社会に居座り続けている古くさい価値観。先端テクノロジーの進化と逆行している“神話”を解体し、未来を思考する道標としての最新論考。

佐々木俊尚 (著) 徳間書店 (2023/9/28)



Profile

佐々木 俊尚(Toshinao Sasaki)
1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、月刊アスキー編集部を経て、フリージャーナリストとして活躍。『キュレーションの時代』(ちくま新書)、『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス)、『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマ・スタジオ)など著書多数。


関連記事


佐々木俊尚の考える「AIと人間の"対話"」 Tech and Future Vol.3

佐々木俊尚の考える「デジタル世代間ギャップ」 Tech and Future Vol.2

Iolite 編集部