本記事のキーポイント
1.高度なコンプライアンス体制
Binanceは全従業員の25%超を配置する強固な管理組織を構築し、持続的成長とリスク管理を両立する両利きの経営を実践。厳格なグローバル規制の遵守により業界をリードし、機関投資家や個人顧客からの高い信頼を獲得している。
2.伝統金融とのパートナーシップ
同社は伝統金融と争うのではなく協働する方針を掲げ、BlackRock等の大手との連携を進めている。3億2,000万人超の顧客基盤が生む世界最大の流動性プールを武器に、取引コストを削減できる最適なパートナーとして確固たる地位を築く。
3.AI活用とマルチアセット展開
世界30億人が利用する取引所への成長を目指し、KYCや不正検知など全社的なAI統合による運用効率化を推進。最高水準のセキュリティを維持しながら、暗号資産や株式、コモディティ等を網羅する総合金融プラットフォーム化を図っている。
──2023年11月にCEOに就任してからBinanceの今に至るまでの成果を、ご自身ではどのように評価をしていますか?
リチャード・テン(以下、テン):Binanceは2026年7月をもって創立9周年を迎える非常に若い組織ですが、これまでの成果は間違いなく組織全体、チームの努力によって成されたものです。
私たちの成果の1つとしてあげられるのが、「規制への対応力」です。暗号資産関連のプロダクト開発における初期段階では、規制が明確ではありませんでした。世界中の多くの国が暗号資産を規制していなかったため、当時のプレイヤーは成長にのみ焦点を当てていましたが、ここ数年で状況は大きく変わっています。
私たちが長期的かつ持続可能な成長に焦点を当てるためには、コンプライアンスやリスク管理にも注力するという「両利きの経営」が非常に重要です。だからこそ、私たちはコンプライアンス、リスク管理、コーポレート・ガバナンスの分野に多額の投資を行ってきました。
明確な規制があれば、機関投資家や企業、そして一般の個人ユーザーも、規制された事業体と取引し、接点を持ちたいと考えるようになるでしょう。これらはマスアダプションをもたらす上で非常に重要です。
現在、Binanceのコンプライアンス担当者は約1,600人にのぼります。当社のグローバル人員は約6,000人であるため、コンプライアンス担当が実に全体の25%以上を占めているのです。私たちはこの分野において他社との差別化を図る上で、“規制対応能力”を大きな強みとして定義しています。
Binanceは規制対応という点で組織として成熟し続けています。これにより、Binanceは最も規制された事業体となり、ユーザーのオンボーディングからAML(アンチマネーロンダリング)取引モニタリング、リスク管理、さらには上場に至るまで、グローバルな規制基準に準拠した業界をリードする存在となりました。また、あらゆる規制当局との連携を通じて、世界中の利害関係者と非常に緊密に協力し続けています。
主な成果の2点目は、「マルチアセット取引所としての確立」です。現在、私たちは世界中で3億2,000人以上のユーザーを抱えており、加速度的な成長を続けています。その上で、私たちは暗号資産だけでなく、株式や貴金属などのコモディティ取引も提供するグローバルなマルチアセット取引所となっており、その多くが非常に好調です。
伝統的な市場をみると、通常は1日7時間、週5日稼働していますが、私たちは24時間365日体制で稼働しています。これにより、企業や個人ユーザーはポートフォリオをより効果的に管理することが可能になります。
また、AIエージェントやAIを活用した取引手法の出現により、今後の金融は24時間365日ベースの取引が当たり前になる世界へと移行していくでしょう。私たちはこれらすべての主要な開発をサポートしており、他社と比較した際にも優位性があり、強気なポジションをとることができます。

──CEOに就任後、最も困難であった仕事についても教えてください。
テン:急成長する企業の経営方針を、持続可能な成長性と強力なコンプライアンスの双方に焦点を当てる「両利きの経営」へと舵を切り、急速に進化する環境を乗り切ることは、組織全体での大規模な変革でした。規制の明確化が進むなかで、ガバナンス、リスク管理、コンプライアンスの強化は、私たちが規制当局や利害関係者とのかかわりを強める上での重要な注力分野となっています。これらの取り組みは信頼を構築し、長期的な回復力と持続可能な成長の基盤となります。