本記事のキーポイント
パートナーシップ型経営への転換
コインチェックは単なる暗号資産交換所から、デジタルファイナンスのインフラ基盤へと舵を切った。自社完結型からパートナーシップ型ビジネスへ移行し、機能開放を通じて市場全体の拡大を目指すCaaS(Crypto as a Service)戦略を推進している。
大手企業とのCaaS連携と機関投資家対応
KDDIやクレディセゾン、メルカリ等の大手顧客基盤を持つ企業との連携を強化。ポイントプログラムや組み込み型金融を展開しつつ、グループシナジーを活かして2028年の暗号資産ETF解禁を見据えた機関投資家向け事業も加速させる。
AI時代を見据えた信頼性の向上
将来的にAIエージェントによる自動取引が普及する未来を見据え、システム連携や本人確認の高度化を推進する。高水準のガバナンスとセキュリティを提示し、人からもAIからも選ばれる取引所として持続的な成長を図る。
──今年4月にパスカルさん(PascalSt-Jean氏)がCoincheck GroupのCEOに就任しました。グローバルな視点を持つ方がリーダーになったことで、社内で起きた変化があれば教えてください。
井坂友之(以下、井坂):ガラッと変わりました。Coincheck Group傘下には当社コインチェックのほかにカナダの3iQ Digital Holdings、フランスのAplo SAS、日本のNext Finance Techがあります。グローバルな視点のトップがグループを率いているのは以前から変わりませんが、パスカル自身が起業家で、事業にがっつり取り組むタイプです。
CoincheckGroupとして「コインチェックとグループ全体をどう成長させていくか」を深く議論しています。Coincheck Groupは2024年12月のSPAC上場後、これまではさまざまな会社をM&Aで傘下に収めて事業を広げていく方針でしたが、現在はグループ4社が連携して事業をエグゼキューションするフェーズへと大きく舵を切りました。
当社はリテール向けビジネスを中心に事業会社や機関投資家向けのサービスを手がけていますが、当社以外のグループ会社3社はかねてより事業会社・機関投資家向けビジネスがメインです。日本でも2028年に暗号資産ETF解禁の動きがあり、Coincheck Groupも各社の実績と知見を活かして日本における機関投資家ビジネスへの参入に向けてすでに動き始めています。
日本のリテール向けサービスを成長させながら、Coincheck Groupとしては、日本の機関投資家とともに日本における機関投資家向けの暗号資産運用環境を整備し、あらたなビジネスを立ち上げることに注力しています。
グループ各社の協働により、これまで築いてきた暗号資産交換業ビジネスをデジタルファイナンスのプラットフォームへどう昇華させるかがマネジメント間での論点になっています。取引所経営で培ったインフラを活かし、BtoBとBtoBtoCのインフラ事業に進出する。Coincheck Groupとして『パートナーシップ型』のビジネスを創っていきます。
──リテールからインフラ事業者側に変わるなかで、課題はありますか?
井坂:まず、システムのアーキテクチャの変化への適応です。これまでは当社内に閉じていたシステムに、パートナーとの結節点を持たせることになります。しかも24時間365日安全に運用し、当社システムにもパートナー企業側のサービスにも影響を及ぼさないようにする必要があります。加えて重要なのは、お客様やパートナー企業から信頼され、ともにビジネスを進められる存在になることです。
パートナー企業にはそれぞれに個別で固有の要求があります。パートナー企業と対話を重ね、最適な形を一緒に創っていけるカルチャーになれるかがポイントです。自社中心の開発からパートナーとともにビジネスを創るカルチャーへと、コインチェックは変わっていきます。
──企業文化から変えていくということですね。
井坂:そうですね。コインチェックのミッションは「あたらしい価値を、もっと身近に」で、暗号資産やブロックチェーン技術を使った価値交換体験を広げていくことを掲げています。
安全にご利用いただける環境を整えてご提供することは当然ですが、我々は前面には出ずに、お客様との接点はパートナー企業に担っていただくのが良いと考えています。API連携でコインチェックの機能を開放し、私たちコインチェックはパートナー企業との良きパートナーシップを創っていく。そういったパートナーシップを形にすることができるカルチャーを、組織として持ちたいと思っています。
パートナーシップは2つの形で進めていきます。1つは銀行や信託銀行、資産運用会社といった金融機関の皆様とのパートナーシップで、ETFやファンド組成とそれを支えるカストディの仕組みを作っていくこと。もう1つは、インターネット上でサービスを展開している事業者様に暗号資産を取り込んでもらう組込型金融、クリプト・アズ・ア・サービス(CaaS)を展開していきます。
