本記事のキーポイント 1.DeFiテクノロジー部の新設 SMBC日興証券はDeFiテクノロジー部を設立し、TradFiとDeFiの融合 を推進する。ステーブルコインをWeb2とWeb3のバイパスと位置づけ 、既存金融のエッセンスを活かしたあらたなオンチェーン金融の構築を目指す。
2.ルールのアーキテクト 実証実験などを通して規制当局と議論を重ね、Web3の規制枠組み構築を牽引する姿勢を示す 。証券会社ならではのコンプライアンスと、複雑なWeb3領域を分かりやすく顧客に伝える翻訳ノウハウを強みとして活かす。
3.主要アセットのオンチェーン化 株式や債券といった主要アセットのフルオンチェーン化を進め、グローバルな流動性を創出 する。2030年に向けた未来からの逆算思考により、インフラ整備とブロックチェーン上でのAI社会実装を加速させていく。
──「DeFiテクノロジー部」が新設されました。改めて、どのような経緯や社内での意思決定を経て立ち上げに至ったのか、また初代部長として、最前線でどのような取り組みを牽引していきたいと考えているかお聞かせください。
磯野太佑(以下、磯野): DeFiテクノロジー部自体は2026年2月に発足しましたが、実はその前から「Nikko Open Innovation Lab(NOIL)」という部署でWeb3の取り組みを進めていました。同部署は、主に社内ベンチャープログラムで採択された新規事業のアイデアをビジネスへと育てる、いわゆる「0→1(ゼロイチ)」のアクセラレーションを担っています。
近年、ブロックチェーンの特性自体が金融サービスと非常に相性がよいことも明白になってくるとともに、暗号資産が金商法(金融商品取引法)の枠組みで規制される議論が進んできました。そこで、これまでの非金融領域での取り組みも大切にしつつ、我々自身の強みである「金融機関としてのエッセンス」を強化していく方針へと舵を切ったのです。
特にDeFiの領域は我々にとっても新境地であり、あたらしい可能性を秘めていると確信して、AIエージェントを活用した投資などが盛り上がった2024年の後半頃から注目し始めました。
こうした法改正などの大きな波も相まって、金融のエッセンスを本格的に扱うブロックチェーン事業領域を単独の部署として独立させようという意思決定がなされ、今回のDeFiテクノロジー部設立に至りました。
── 一般的に、ステーブルコインを用いた決済システムは従来の国際送金(コスト0.5%〜1.5%程度)に比べ、中継組織を排除することで送金コストを0.1%程度へと削減できる可能性が指摘されています。ステーブルコイン決済インフラにおいて、こうしたコスト削減インパクトや社会への影響をどのように試算されていますか?
磯野: 前提として、私はステーブルコインには大きく2つの役割があると思っています。
1つは、「電子決済手段」としての役割です。ご指摘のように、中継組織を排除して決済コストを大幅に低減させ、送金スピードを早めるといった実務的な決済ニーズは、間違いなくあると考えています。
そしてもう1つが、法定通貨と価値が連動するデジタルマネーとして、「Web2とWeb3のバイパス」になる役割です。法定通貨を持ったままでは、DeFiでの投資などオンチェーン上の金融活動は非常にやりにくいですよね。
今後はTradFi(伝統的金融)とDeFiの世界が全体として融合し、発展していくことが望ましい世界観だと思っており、その両者をつなぐバイパスとしてステーブルコインは非常に重要な意味を持ちます。
今後、これらが社会にどう浸透していくかについては、この2つの要素が産業界でどう必要とされ、理解されていくかが大きなポイントになります。
両者に共通する特徴は、「オンチェーン上の資産である」ということです。現在、企業側はバランスシートにオンチェーン資産を組み入れることを、あらたなリスクとして認識している段階だと思います。しかし、先ほどの融合した世界観が浸透してくると、将来的には逆に「オンチェーンとオフチェーンでリスク分散をする」という考え方が出てくるはずです。