1.「18番目の成長投資分野」とAIエージェント
政府はオンチェーン金融をAIや半導体と並ぶ「成長投資分野」に位置づけ。将来はAIエージェントが自律的に決済や契約を行う時代となり、ブロックチェーンがその信頼基盤を担うこととなるという展望。
2.アジア市場を起点とした国際ルールの主導
海外プラットフォームへの依存を防ぐため、日本は国際的な標準づくりに主体的に関与する必要がある。特にデジタル金融の需要が大きいアジア市場で事実上の標準を確立し、日本のプレゼンス向上を目指すべきである。
3.制度整備から社会実装へ向けた官民連携
時代はすでに「制度整備」から「社会実装」のフェーズへと移行している。政府は予算面を含めた政策支援を検討し、民間事業者がリスクを取ってあらたな決済インフラの構築に挑戦できる環境づくりを強力に後押ししていく。
──「次世代AI・オンチェーン金融構想PT」を立ち上げ、わずか数ヵ月で提言を取りまとめられましたが、「AIとオンチェーン金融の融合」に着目された背景と、国際社会・主要国と比較した時の日本の現在地について所感をお聞かせください。
村井英樹(以下、村井):まず私は次世代AI・オンチェーン金融構想PTの事務局長だけでなく、金融調査会の決済・イノベーション推進PTで座長を務めています。そのため、次世代AI・オンチェーン金融構想PTには自民党政務調査会デジタル社会推進本部(以下、デジタル本部)の視点と金融調査会の視点の双方から取り組んできました。
ブロックチェーンは長い停滞期を経て、まさに金融分野で本格的な実用フェーズに入りつつあると考えています。足元の動きをみても、世界的にステーブルコインやトークン化預金の議論が加速しており、金融機関の取り組みも実証実験から社会実装の段階へと移り始めています。まさに、決済インフラそのものを大きく刷新する可能性が現実味を帯びてきていると感じています。
さらに、生成AIの急速な進化が状況を決定的に変えました。私自身、岸田政権で政府のAI戦略チームの初代チーム長を務め、司令塔として政策を担ってきた立場からも、生成AIの普及がもたらすインパクトの大きさを実感しています。
これからはAIエージェントが人に代わって情報収集や意思決定を行い、実際の金融取引や契約執行まで担う時代がやってきます。その際、改ざん耐性と透明性を持つブロックチェーンが信頼基盤となることで、金融の効率性や利便性は格段に向上します。
この世界的な潮流に乗り遅れてしまえば、将来の決済や金融インフラを海外のプラットフォームや通貨に依存することになりかねず、金融主権や通貨主権の問題にも直結してしまいます。だからこそ、現時点での日本の強みを活かし、社会実装と国際ルール形成をリードしていくことが重要だと考えています。
──次世代AI・オンチェーン金融構想PTと、決済・イノベーション推進PTとの役割分担やアプローチの違いについてどう整理されていますか?
村井:大きな違いはアプローチの視点にあります。デジタル本部の次世代AI・オンチェーン金融構想PTは、「AI×オンチェーン×金融」の将来像を見据え、100のゴールからバックキャストして大きな絵を描いていく取り組みです。一方、決済・イノベーション推進PTは、足元の決済システムの進化を踏まえ、1から2、2から3へと漸進的に仕組みを落とし込んでいく側面があります。どちらも未来志向の取り組みではありますが、絵を完成させる手法が異なるといったイメージです。

──日本がオンチェーン金融において国際社会をリードするために必要な条件、また解決しなければならないと考える課題についてどのように考えていますか?
村井:単なる制度整備にとどまらず、国際的な標準づくりに主体的に関与することです。金融は国境を越えてつながるものですので、米欧で進むステーブルコインやトークン化資産、次世代決済インフラとの相互運用性を確保し、日本発の仕組みをグローバルスタンダードの一部として位置づけていかなければなりません。BIS(国際決済銀行)や主要中央銀行もあらたな金融アーキテクチャの検討を進めており、規制当局間や民間プレーヤー同士の議論、官民両者の連携もより重要になっていきます。
特に強みを発揮すべき領域はアジア市場です。アジアはクロスボーダー決済やデジタル金融の需要が大きく、成長の伸び代も非常に大きいです。日本発のステーブルコインやオンチェーン金融サービスが広く利用される環境をいち早く構築し、アジアで事実上の標準を確立できれば、日本の国際的なプレゼンスも自ずと高まっていくはずです。