クリプトアナリストとして活躍する仮想NISHI氏が“本音”で暗号資産業界の動向などについて語り合う本企画。今回は、企業向けソフトウェア製品の開発等を手がけるアステリア社長の平野洋一郎氏と対談。満を持してリリースした日本初の企業向けJPYC入出金管理サービス「JPYC Gateway」の真価、上場企業としてステーブルコイン普及にかける想いなどについて話を聞いた。
仮想NISHI:アステリアは2017年という早い段階で、日本初とされる日本円ステーブルコイン「ZEN(JPYZ)」の実証実験を手がけられていましたよね。当時はまだ「ステーブルコイン」という言葉すら一般化していなかった時代ですが、なぜそこに着目されたのですか?
平野洋一郎(以下、平野):アステリアの生業は、もともと企業向けシステムをつなぐ基盤ソフトウェアです。ブロックチェーンという技術が登場した際も、思考の根本にあったのは「いかに企業実務で使えるか」という点でした。
その頃にはすでにビットコイン(BTC)が注目を集めていましたが、当時は特に価格の変動が大きく、企業決済や日常の取引には到底使えない状態でした。どれほど優れた技術であっても、価格が安定しなければ企業での活用は広がりません。だからこそ、価格を安定させるステーブルコインが必要不可欠だと確信して、当社が発起した一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)でZENを発行したのです。
仮想NISHI:ZENの実証実験が後に日本円ステーブルコイン「JPYC」を発行するJPYC社との関係強化につながったのですね。
平野:その通りです。これは私たちが発行したことだけでなく、“人と人をつなぐエキスパート”であるという属性も関係していたと思います。
ZENの実証実験はフェーズ1を成功裏に終えることができました。しかし、次にフェーズ2へと進む段階で2018年1月に国内暗号資産取引所での不正流出事件が起き、多くの取引所が業務改善命令を受けたことから、実証実験を継続できるような状況ではなくなってしまいました。そんな状況が続いていた時にJPYC社の岡部典孝代表から起業の連絡をもらい相談を受けたのです。
仮想NISHI:もともと同じような世界観を描いていたからこそ、お互いの意思疎通もしやすかったのだろうと感じます。
平野:ステーブルコインというのは単なる実証実験で終わるようなものではなく、いわばビットコインを生み出したサトシ・ナカモトのビジョンであり、“念い”そのものでもあるわけです。ビットコイン論文の冒頭でも「デジタルキャッシュ(P2P電子金銭システム)」について記載があるくらいですからね。
しかし、当時の市場では単なる投機対象として「ビットコインがいくらになった」と話題になるばかりで、サトシの意図した本来の「デジタルキャッシュの流通」が起きていなかった。その思想を現実社会で実現するための解がステーブルコインだと考えています。
岡部さんが相談に来られた際、私たちが思い描いていた「デジタルキャッシュの社会実装」と完全に目線が重なり、体制がある程度整ったところで出資・支援を決断しました。
