締め切った部屋でタバコを咥え、言葉少なにアコースティックギターを爪弾く父。タバコとその旋律は、酒を飲まない彼にとっての酒とその“アテ”のようなものだったのかもしれない。ただ音に身を委ねることで、1日の澱(おり)を洗い流していたのだろう。
隣の部屋からは妹が練習するピアノの音が重なり、旋律は家のなかに溶け込んでいく。私は楽器を奏でることはないが、音は常に、身近な存在だった。
最近も、ひとときの静寂を求めて休息の時にクラシックを聴くことがある。
オーケストラにおいて、バイオリンは「顔」であり、物語を牽引する主役だ。その最高峰に君臨する名器「ストラディバリウス」がその名声を不動のものとする所以を解くカギが、意外な学問にあると知った。「デンドロクロノロジー(年輪年代学)」だ。