盲ろう者の教育・権利擁護の先駆者として知られるヘレン・ケラーには、あまりにも有名で、立ち返りたくなるエピソードがある。
1歳7ヵ月の頃に患った病で光と音を失っていたケラーは、それ以前の言語習得がなかったため、意思を伝えられないもどかしさから、日々激しいかんしゃくを繰り返していた。
7歳になる前のある日、ケラーのもとにアン・マンスフィールド・サリバンが家庭教師としてやって来た。サリバンは着任直後から、マグカップ(mug)や水(water)といった単語を、指文字でケラーの手のひらに熱心に綴り続けた。しかしケラーは、それを単なる指の動きとして面白がるだけで、それが意味を持つ言葉だとは理解していなかった。
転機が訪れたのは、それから約1ヵ月後のこと。2人が散歩の途中で井戸小屋へ行き、誰かがポンプで水を汲み上げているところにケラーが手を差し出したときである。片手に冷たい水が流れ落ちるなか、サリバンはもう片方の手のひらに「w-a-t-e-r」と指文字を綴った。