DeFiの旗手としてもてはやされたプロトコルが、既存金融の強固な包囲網によって静かに追い詰められようとしている。無許可のイノベーションが、法という名の重力に引き寄せられることは避けられないのだろうか。
8月6日、JPMorganのアナリストチームは、分散型無期限先物取引所であるHyperliquid(ハイパーリキッド)に対する重大な構造的脅威を指摘するレポートを公開した。かつて市場を牽引したHYPE関連ETFへの資金流入が停滞し、米国の厳格な規制下にある取引プラットフォームとの競争が激化している事実を、データとともに示している。
5月に上場したBitwiseと21Shares、さらに6月に上場したGrayscaleをあわせた計3本のHYPE現物ETFは、短期間で資金流出入の傾向が大きく変化している。6月下旬には週間で約1億1,100万ドルの純流入を記録したものの、7月17日から8月3日までの12営業日は連続で流入がゼロとなり、同期間の合計で2,980万ドルの純流出へと転じている。
こうした市場動向と並行し、5月29日にCFTC(米国商品先物取引委員会)は重要な決定を下した。予測市場プラットフォームのKalshiに対してビットコイン現金決済型の無期限先物「BTCPERP」を承認し、同時にCoinbase Financial Markets(CFM)に対しても、暗号資産取引所Deribitを外国先物として扱うノーアクションレター(不答弁書)を発行している。
この規制当局の動きにより、米国の規制下にあるデリバティブ取引所では、取引所の自己資産と顧客資産を完全に分離する分別管理が義務化され、顧客保護が大幅に強化される可能性がある。さらに、IRS(米国内国歳入庁)の税法「セクション1256」で定められた特定の先物契約に対する税制優遇ルールが適用されれば、トレーダーの実質的な最高税率は26.8%まで引き下げられることになる。
しかし、この税制優遇の適用は決して確定事項ではない。満期が存在せず、ファンディングレート(資金調達率)によって価格を連動させるパーペチュアルが、法的に「先物」なのか「スワップ」なのかについて、IRSは未だ明確なガイダンスを示していない。事実、CMEは「パーペチュアルはスワップである」と主張し、承認を出したCFTCを提訴している。すなわち、税制優遇の前提となる法的根拠そのものが、現在連邦裁判所で係争中なのである。
規制下に入る代償として、Kalshiの初期レバレッジは最大5.7倍に制限されることとなった。一方、暗号資産分散型取引所のHyperliquidも、CFTCの決定に先立つ5月14日に大きな戦略転換を行っている。同社は独自のステーブルコイン「USDH」を事実上廃止し、Coinbaseをトレジャリー・デプロイヤー(資金運用担当)として迎え入れる形でUSDC陣営へと合流した。これにより、USDC準備金利回りの約90%をアシスタンス・ファンドへ還元するという、あらたな収益モデルを確保している。