テクノロジーと国家規制が交錯するなかで、「本物の人間」であることを証明する生体認証ネットワークが世界の金融システムにあたらしい風を吹き込みそうだ。 ボットやAIが氾濫するデジタル空間において、150ヵ国以上で提供が開始された自己管理型(セルフカストディ)ウォレットアプリ「World Money」は、虹彩認証による固有の「World ID」を基盤とし、生体情報という究極のアナログデータで価値の循環を担保しようとする野心的な試みだ。
従来の「World App」から金融機能を実質的に独立させたこのアプリは、すでに1,800万人前後の「実在する人間のみで構成されたネットワーク」を築き上げている。 World Moneyの最大の強みは、この人間証明をベースにした強固な決済・金融エコシステムにある。USDCやEURCを始めとする8種類のステーブルコイン(円建ては除く)に対応し、米決済大手Stripeや、ステーブルコイン決済を手がけるBridge社のインフラを経由し、スムーズな入金を実現している。米国などではApple Payからの資金変換が数分で完了する設計だ。さらにアプリ内には、無担保で最大1,000ドルが即時借入れできるクレジット機能、Morpho基盤の変動利回り生成機能、そして予測市場のKalshiまでもがシームレスに統合されており、単なるウォレットを超えた包括的な金融プラットフォームとして機能している。
しかし、国境を越えたシームレスな金融体験の裏には、各国の厳格な規制と技術的な未成熟さという壁が立ちはだかっている。特に日本では、海外発行ステーブルコインの取り扱いや無登録業者に対する規制・罰則が近年強化される方向にあり、当局の監視も厳しさを増している。