AIバブル崩壊は本当か。今起きているのは「幻滅期」 佐々木俊尚 Tech and Future Vol.21

2026/07/30 10:00 (2026/07/30 11:14 更新)
佐々木 俊尚
SHARE
  • sns-x-icon
  • sns-facebook-icon
  • sns-line-icon
AIバブル崩壊は本当か。今起きているのは「幻滅期」 佐々木俊尚 Tech and Future Vol.21

生成AIは「幻滅期」へ

本記事のキーポイント

1.生成AIの幻滅期とワークスロップ
AI投資の成果がみえにくいなか、生成AIは期待過熱の反動で「幻滅期」へ入っている。一見綺麗だが中身の薄いワークスロップの蔓延が課題だが、ユーザーの鑑識眼の向上や自律型AIエージェントの進化により、この問題は徐々に解消へと向かう。

2.PoC停滞と外部知識の融合
多くの企業でAI導入がPoC段階で失敗する背景には、情報漏洩を恐れて社内データのみに閉じた環境がある。真のAI活用には自社データだけでなく、社会全体の巨大な知識の塊と統合させ、セキュリティと効果的な知識融合を両立させることがカギとなる。

3.人間の役割とダメ出しの危機
AI時代の人間には目的の「指示」と成果物への「ダメ出し」の役割が残る。しかし業務の自動化に伴い若手が現場のノウハウを学ぶ機会が減り、将来的に正しい評価ができる人間が不在になるリスクがあるため、技術継承とAI学習の質の担保が課題だ。


──最近、生成AIで作られた「見た目は整っているが中身が空疎な資料」を指す「ワークスロップ」が注目されています。2026年はAIエージェントが実行段階へ移行するとされる一方、多くの企業がテスト段階で停滞している。このギャップをどう読み解くべきでしょうか?

佐々木俊尚(以下、佐々木):「AIバブル崩壊」が囁かれる背景には、半導体株の高騰の反動と、経済成長や生産性向上への寄与がまだみえにくいという2つの要因があります。

米国ではAI関連投資が急増していますが、現状は主にデータセンターの建設にとどまり、その先にどれだけ富や生産性を生み出せるかはまだ十分にみえていません。そうした状況から、AIへの“幻滅”が始まりつつあるように感じます。

テクノロジーの成熟度と採用進捗を可視化したガートナーのハイプ・サイクルでいえば、新技術はまず期待が一気に高まり、その後に幻滅期が訪れ、最後に安定的な普及期へ進んで行きます。生成AIは今まさに幻滅期に入りつつある段階なのではないかと思います。

結局は「プロンプトが大事」というのはこれまでも散々いわれてきたことです。適当な質問をすれば適当な返事が返り、それがワークスロップと呼ばれるような出力物につながっているのでしょう。

以前は内容の薄さと文章の稚拙さが一目で判別できましたが、今やAIによって誰もが綺麗な文章を書けるため、一見しただけでは中身の有無を見分けにくいという問題が常に生じています。

これはコンピューターの根源的な問題にもつながっている気がします。私が1988年に新聞社へ入社した当時、ワープロで印刷した原稿をデスクにみせたら「手書きに直してくれ。印刷されていると正しいことが書いてあるようにみえて、間違いに気づきにくい」といわれました。今のワークスロップ問題もこれに似ていて、ユーザーがAIの出力に慣れ、良し悪しを即座に見分けられるようになれば、自然と減っていくでしょう。

さらに、AIエージェントがユーザーの意図を先回りして、自律的に良質な成果物を作れるようになれば、この問題は解消へ向かうはずです。

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

SHARE
  • sns-x-icon
  • sns-facebook-icon
  • sns-line-icon
Side Banner
Side Banner
MAGAZINE
Iolite(アイオライト)Vol.21

Iolite(アイオライト)Vol.21

2026年9月号2026年07月30日発売

Interview Binance 共同最高経営責任者(Co-CEO)リチャード・テン、SMBC日興証券株式会社 Nikko Open Innovation Lab兼DeFiテクノロジー部 部長 磯野太佑、Fintertech株式会社 取締役/暗号資産金融事業責任者 神脇啓志 PHOTO & INTERVIEW 中野優作 特集「暗号資産取引所の生存戦略─金商法移行後の新秩序─」 Interview コインチェック株式会社 代表取締役 社長執行役員CEO 井坂友之 株式会社マーキュリー 取締役副社長 藤原崇亮 [対談連載]The NISHI Talk:Crypto Conversations 「ビットコインの取得にとどまらない社会実装」 、仮想NISHI×株式会社ANAPホールディングス 代表取締役社長 川合林太郎 連載 Tech and Future 佐々木俊尚…等

MAGAZINE

Iolite(アイオライト)Vol.21

2026年9月号2026年07月30日発売
Interview Binance 共同最高経営責任者(Co-CEO)リチャード・テン、SMBC日興証券株式会社 Nikko Open Innovation Lab兼DeFiテクノロジー部 部長 磯野太佑、Fintertech株式会社 取締役/暗号資産金融事業責任者 神脇啓志 PHOTO & INTERVIEW 中野優作 特集「暗号資産取引所の生存戦略─金商法移行後の新秩序─」 Interview コインチェック株式会社 代表取締役 社長執行役員CEO 井坂友之 株式会社マーキュリー 取締役副社長 藤原崇亮 [対談連載]The NISHI Talk:Crypto Conversations 「ビットコインの取得にとどまらない社会実装」 、仮想NISHI×株式会社ANAPホールディングス 代表取締役社長 川合林太郎 連載 Tech and Future 佐々木俊尚…等