1.災害復旧大国とあらたな都市型水害
日本は地震への初動対応や耐震化が進み災害復旧大国となった一方、記録的豪雨による都市型水害というあらたな脆弱性に直面している。従来のインフラ処理能力を上回る事態に対し、過去の経験則に縛られない抜本的な対策の見直しが必要。
2.IoTやAIを活用した「流域思考」
ダムや堤防で水をおさえ込む従来の手法から、IoTやAIを活用し流域全体で水量を一元管理する体制への転換が急務。都市のあらゆる空間で降雨を分散して受け止め、自治体の枠を超えて被害を最小限におさえる発想が求められる。
3.防災テックの活用とあらたな産業創出
過疎地のインフラ維持が困難になるなか、スタートアップが牽引する防災テックの導入が重要視されている。企業は最新技術を自社のBCP(事業継続計画)に組み込むだけでなく、日本の高度な防災ノウハウを世界へ展開し、あらたな産業へと昇華させる視点が必要。
──最大震度7の令和8年熊本地震では迅速な復旧が進む一方、首都圏の重要拠点である千葉県の水害では想定を上回る被害が拡大。日本が誇る防災インフラにはどのような脆弱性が存在すると考えられますか?
佐々木俊尚(以下、佐々木):私は毎日新聞の記者として1995年の阪神・淡路大震災を取材しました。発生翌日に芦屋へ派遣され、阪神高速が横倒しになった現場で1週間ほど取材をしていました。
当時は1981年の建築基準法改正による「新耐震基準」施行から14年しか経っておらず、基準を満たした建物は少なかった。
現場では5階建てビルの2階や3階など途中の階だけが押し潰され、30cmほどの高さに押し潰された建物が点在。特定の階だけが潰れる光景は想像を絶するもので、周辺の古い木造住宅も倒壊していました。
ただ震災以降は耐震基準への対応も進み、鉄筋コンクリートのビルが地震そのもので倒壊するケースはかなり少なくなりました。
一方、当時は自衛隊の出動や対策本部の設置が遅れるなど初動対応が問題となりました。その背景には戦後、大規模災害の少ない時期が続いていたことと、田中角栄元首相の「日本列島改造論」があります。
新潟県出身の田中は、かつて“裏日本”と呼ばれた日本海側を始め全国のインフラ整備を掲げ、経済発展に貢献しました。しかしこの政策は土建業と政治の癒着を生み、「利権誘導」や「政治腐敗」を招く。そこで「コンクリートから人へ」のスローガンのもと、教育や福祉へ資源を割く方向へ転換します。
その後、民主党政権下では八ッ場ダム建設を巡り政治論争が起きました。ところが2019年の台風19号直撃の際、試験湛水中の八ッ場ダムと渡良瀬遊水地が大量の水を貯留し、利根川の決壊が食い止められ、下流域の江戸川・利根川下流の市街地も甚大な水害を免れた。負より正の側面が大きかったんですね。