昨今、ChatGPTに代表される生成AI技術が注目を浴びている。文章だけではなく、イラスト・プログラム・3Dモデルなど、生成AIはさまざまなクリエイティブな表現が可能になっているからだ。
「多くの人間の職を奪う」とまでいわれている生成AIによって、我々の生活やビジネスにどのような変化が起きるのだろうか。
——本日は最近話題になっているAI技術についていろいろと質問させていただきます。そもそも、なぜここ数ヵ月ほどでこれほどAIが話題になっているのでしょうか?
B氏:きっかけは2022年の7月から8月にかけて『Midjo urney(ミッドジャーニー)』や『Stable Diffusion(ステイブルディフュージョン)』といった画像生成AIサービスがリリースされたことです。これらのサービスはいくつかのキーワードを入力すれば、適切な画像を自動的に生成してくれるというものでした。
まったく絵が描けない人でも、まるでプロが描いたかのような画像を数秒で作成できるという革新的なサービスですね。ただし、これらの画像生成AIサービスはIT技術に興味を持つような一部の人たちから注目を浴びていたという印象です。
それがより多くの人に広まったのは、昨年11月にリリースされた『ChatGPT』というサービスからでしょう。このサービスはユーザーから与えられた質問文に対して、まるで人間が作ったかのような自然な文章で回答できることが話題になりました。
ChatGPTは瞬く間に世界中で使われるようになり、今年1月には月間で1億人のアクティブユーザーがいると発表しています。
A氏:以降、生成AIサービスは世界中で次々と立ち上がっています。最近では検索エンジンを提供している企業が、生成AIを活用したサービスを立て続けにリリースしました。
MicrosoftはChatGPTを支える技術である大規模言語モデル『GPT-4』をベースにした『新しいBing』、Googleは『Bard』をリリースしていますね。いずれも、ユーザーからの質問に対してインターネット上の検索結果を踏まえた回答を生成してくれます。
B氏:今ブームになっているのは『AI技術』というよりも、『生成AI技術』です。AI技術はすでに数十年前から開発されており、『AIが人間を超える』だなんて話を過去に耳にしたことがある方も多いでしょう。
たとえば画像をみて、その情報を解析するようなAI技術はすでに発展していました。ほかにも将棋AIのように特定の分野において人間を凌駕するようなシステムもいくつか誕生しています。
それが2023年に入ってブームになっているのは、人間と同等か、あるいはそれ以上のモノをAIが生成できるようになったからです。文章や画像、さらに小説やプログラミング、3Dモデル、音楽など、これまで『人間にしかできないクリエイティブな活動』とみなされていた分野にもAIが進出するようになりました。
これまでのAI技術は、データを認識することは得意でしたが、それを人間と同じレベルで出力することは苦手でした。特に自然言語処理と呼ばれる、人間が作るような自然な文章の作成はAIには難しい作業でした。ところが、『Transformer』という技術によって、それが可能になったのです。
この技術はもともとはGoogleが翻訳に関する研究をしている過程で論文として発表したものですが、それがAIに応用された結果、人間が書いたような文章を作ってくれる生成AIサービスが生み出されたんです。
——ChatGPTが話題になったころに、試しにいくつか質問をしてみたところ、的はずれな回答をもらうことがありました。それをみて、AIといっても間違いを起こすし、あまり信頼できるものではないという印象があります。
A氏:ChatGPTのような文章生成AIは大量のテキストデータを学習して、それをもとに『適切であろうと予想される』回答を生成する技術です。なので質問内容に関して十分な学習データがなければ、回答を誤る可能性はあります。
実際、ChatGPTの場合は2021年9月までのデータを学習してるため、2022年以降に起きた時事問題などについてはまったく見当違いな回答をすることがありました。
B氏:生成AI技術に関して、よくある誤解として、『人間が知らないような物事の正解を教えてくれる』といった認識があります。これは誤りで、生成AIはすでに存在している大量の学習データをもとにして出力をするので、学習データに存在しない情報についてはもちろんAIも知らないんです。
ちなみに、質問に関する回答が的外れになってしまう問題や最新の時事情報に疎いという問題については、インターネット上の膨大な検索結果をもとに回答する『Bard』や『新しいBing』ではかなり解消されています。
