【ビットコインETFを徹底解説】特徴やメリットデメリット 気になる承認時期はいつ?
ビットコインETFとは?
ビットコインETF(Exchange Traded Fund)とは、証券取引所で売買が可能な上場投資信託の一種で、暗号資産(仮想通貨)のビットコインの価格と連動するように設計されている。
◉「編集長Focus」
次世代テクノロジーや金融・経済のトピックを題材とするビジネス誌、「Iolite(アイオライト)」の編集長が、今話題のトピックと最前線を追います。
一般投資信託と上場投資信託の違い
では、一般投資信託と上場投資信託の違いはどこにあるのだろうか?
ETF(上場投資信託)には以下のようなメリットがあるとされる
- リアルタイムで変動し、何度でも取引が可能
- 信託報酬と取引手数料が一般投資信託に比べて安い
- 指値注文などの購入方法も可能
ビットコインETFの特徴とメリット
ETFは、証券取引所で株式と同じように取引される投資信託であるが、一般投資信託とは異なり上場投資信託を指す。特定の指数に連動するように設計されているため、ビットコインETFは基本的にビットコインの価格と連動するように設計されているということになる。複数の暗号資産の価格に連動するETF(バスケット型)も存在する。
そのほかにも以下のようなメリットがある。
安全で透明性の高い取引が可能
ビットコインETFは、規制当局の一定の審査を受けて証券取引所に上場するため、安全で透明性の高い取引ができる。
流動性の増加
機関投資家の資金が暗号資産市場に流入する可能性が高まるため、流動性が増す可能性がある。
管理コストの削減
機関投資家等の大口の資金を運用する側からすると、ビットコインの現物に投資する場合には、ハッキングのリスク等、管理コストがかかることが想定される。しかし、ビットコインETFの場合、証券取引所及び暗号資産取引所によって安全性を一定程度担保されているため、管理コストが抑えられる特徴がある。
ビットコインETFのデメリット
ビットコインETFには、さまざまなメリットがあるがデメリットはないのだろうか。ビットコインの現物と比較をすると以下の2点のデメリットは少なからず頭に入れておきたい。
管理コストがかかる
ビットコインの現物を保有する場合には、詐欺や盗難のリスクはあるものの持っているだけで費用が発生するということはない。しかしビットコインETFの場合、ごくわずかな金額ではあるが取引所に対する管理手数料がかかってしまう。
取引可能時間の制限がある
取引所を介した取引であるため、取引所が開いていない時間帯の取引は原則できない。ビットコインは性質上、ボラティリティが激しいとされているため、突発的な急騰急落で即時対応ができない点は現物とは異なる点だ。
2023年、承認の可否が話題になっているビットコインETFについては、厳密にいえば「ビットコイン現物ETF」の事を指す。すでにいくつかの国で承認された「ビットコイン先物ETF」と、現在米国を中心に申請されている「ビットコイン現物ETF」の違いをみてみよう。
ビットコイン先物ETF
ビットコインの先物価格に連動するETF。それぞれに決済期間(限月)が定められており、現時点から限月までの価格変動に対する期待や保管コストが反映されているため、それぞれの先物ETFごとに価格は異なることがほとんどだ。
一般的には限月までの期間が長いほど価格の不確実性を反映するため価格は高くなることが多いとされており、現物価格との乖離があることも多い。
2021年10月に米国においてビットコイン先物に連動するETFは承認されている。
ビットコイン現物ETF
ビットコインの現物価格に連動するETF。2023年11月現在は承認に至っていないものの、2023年6月に世界最大の資産運用会社であるブラックロック(Black Rock)が、SEC(米証券取引委員会)にビットコイン現物ETFを申請したことによって、現物ETF承認間近なのではないかという期待感が生まれている。
というのも、ブラックロックが過去に申請した500件以上のETF申請において、非承認となったETFはたった1件であるためだ。
ビットコイン現物ETFの承認時期は?
ビットコイン現物ETFの現状をみてみよう
※Iolite編集部 作成
ご覧の通り、2024年1月以降に再度承認期限を迎えるビットコイン現物ETFがいくつかみられる。先にあげた市場の期待を背負ったブラックロック申請の「iShares Bitcoin Trust」の承認期限も1月15日となっているため、2024年内にビットコイン現物ETFが米国にて承認される可能性は、90%を超えるとも市場予測されているようだ
ビットコイン先物ETF承認までの歴史
2013年7月、ビットコインETFの申請を、世界で初めてウィンクルボス兄弟が行なってからおよそ8年。
SEC(米証券取引委員会)は、ビットコインの価格操作の危険性について、対策が必要だとして長らくビットコインETFの申請を却下してきた。
2019年には、ビットワイズ(Bitwise)が提出したビットコインETF申請についても却下。
その際に「原資産に関連する規制を受けた、かなりの規模の市場との監視共有協定が必要である」と述べている。
ここでいう、「原資産に関連する規制を受けたかなりの規模の市場」というのは、米国最大規模の暗号資産取引所コインベース(Coinbase)と監視協定共有が必要であったことを示唆していたと想像する。
ウィンクルボス兄弟のビットコインETF申請から約10年以上の歳月をかけて、2021年10月15日に米国で初めてビットコイン先物ETFがSEC(米証券取引委員会)に承認された。
先んじて先物ETFが承認されることになったが、これはビットコインの価格操作の懸念を商品先物取引委員会(CFTC)の管理下にある、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で上場されることによって、対策がなされていると判断されたことが理由と考えられている。
ゴールドETF承認までの歴史
デジタルゴールドとも比喩されることがあるビットコイン。ゴールドのETFの承認までの歴史はどうだろうか。
1974年、ニューヨーク商品取引所で金の先物取引が開始された。1970年代初頭に35ドルだった金価格は、1980年に一度700ドル近辺の高値をつけたものの、当時の紛争リスクが緩和されつつあったこともあり、ゴールドの価格はジリジリと1990年代後半まで値を下げていきます。
しかし、1999年に欧州中央銀行が「中央銀行ゴールド合意(CBGA)」に署名し、市場への金の売却・貸し出しを制限。
また、2004年には米国で初の金現物ETFが承認された。
金の供給量は減ったことに加えて、コストやリスクを抑えてゴールドを機関投資家等も取引することができるようになったことから下落トレンドからの転換を迎えることとなった。
その後に起こった地政学的なリスクやパンデミック、昨今の世界的なインフレ等の要因によって、「有事の安全資産」として再び注目を浴び、2023年11月現在、約1,800ドル/toz付近で価格は推移している。
今後の見通し
先にあげたように、現段階でSECは商品先物取引委員会の管理下にあるCMEにて、上場されたビットコイン先物の市場が、十分な規制下にあると判断しているといえる。
そうなれば、自ずとビットコイン現物ETFの上場先の監視協定の相手としても認められる可能性は高く、SECが承認要件の1つとしてあげてきた、監視共有協定の課題がクリアになる。
このような理由から、ビットコイン現物ETFが承認される可能性は極めて高いといって良いだろう。サプライズがなければ承認期限が近いタイミングで、SECはビットコイン現物ETFを承認するとみられる。直近では2024年1月中旬、1つの節目を迎えることとなるだろう。
ビットコインETFは日本で買えるのか?
結論からいうと、2023年11月時点では日本での購入はできない。しかし、金のETFが日本でも購入が可能であることと同様に、米国でのビットコイン現物ETF承認を受けて、将来的にビットコインETFを購入することができるようになることは大いに考えられる。
ビットコイン現物ETF取扱開始のメリット
ビットコインの現物ETFが承認された場合に実際に私たちに関わる要素はどのように変わるのだろう。
ビットコインの需要増加
ビットコイン現物ETFの解釈は上場投資信託。承認された国の証券取引所で取引が可能になり、原則現物のビットコインを裏付け資産として保有する取り決めだ。ビットコインは有限のデジタル資産とされているため、より大きな資金が流動している証券の市場で取引が可能になることによって、必然的に購入される機会は増え、現物のビットコインが買われる可能性が考えられる。
税金面の負担軽減
また、税金面でも進展があるだろう。日本の税制上、ビットコインの現物に投資して得た利益は現時点では雑所得とみなされる。ビットコインの現物の場合、課税所得によって段階的に税率は異なるものの、売却して利益が出た際には最大で55%の税金が課される。加えて損失が出た場合は、株式や投資信託などとの損益通算ができない。
しかし、ビットコイン先物ETF及び現物ETFに投資して得た利益は、株式や投資信託と同様、分離課税の譲渡所得となる可能性が考えられるのだ。税率は20.315%。日本国内でビットコイン先物・現物ETFの取引が可能となった場合には損益通算ができる可能性があるという点も今後、ビットコインを税金面で懸念していた層を取り込むという点で期待できる要素だろう。
ビットコインETF まとめ
ビットコイン現物ETFの承認は、2024年中に行われる可能性が高いとされている。特に2024年1月には注目だ。承認されれば、米国の証券市場において事実上、ビットコインへの投資が可能になる。これにより、ビットコイン及び暗号資産市場にも、間接的に資金が流入されることが期待されている。
また、現在課題となっている税金面で投資家にとってポジティブに働く可能性もあるため、現物とETFそれぞれのメリットデメリットを理解した上で、投資検討の材料としてもらいたい。
画像:Shutterstock
Profile
◉Noriaki Yagi
大学在学中に飲食業務に従事。その経験から、飲食店のコンサルティング事業及び、アミューズメント領域への人材派遣事業を立ち上げ、代表に就任。同時に自身のブランドを確立させる目的からSNS運用を始める。SNSの運用では、合計フォロワー数1万人を達成後に認知度の拡大を受け、自身のアパレルブランドを立ち上げる。2021年9月に株式会社J-CAMに入社。YouTubeやTwitter運用に従事した後、2022年4月より編集長に就任。2023年3月に「Iolite(アイオライト)」を創刊。