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金融・経済
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一部の事業者が想定外の損失を被ったマイナポイントの“落とし穴”

Iolite 編集部
2024/06/09

政府が大判振る舞いしたマイナポイントの落とし穴とは?

マイナンバーカードを取得した人に各種キャッシュレス決済で利用できるポイントを付与する事業「マイナポイント」。

政府がマイナンバーカード普及促進策として、1兆円規模の国家予算を投じたこの事業は2020年から第1弾、2022年から第2弾が行われ、事業が終了した2023年9月までに計7,556万人の利用者がマイナポイントを申請。決済事業者にとっても、会員獲得や決済利用の好機となったことは記憶にあたらしい。

しかし、このマイナポイントで一部の事業者が想定外の損失に直面したことは意外と知られていない。

たとえば、「セブン&アイ・ホールディングス」傘下のセブン銀行は、2023年4~12月期決算説明会で12億円ほどのマイナスを計上したと報告している。損失の核となったのはセブン銀行の子会社でクレジットカードや電子マネー「ナナコ」を発行するセブン・カードサービスだ。

マイナポイント事業に参加していたセブンカードだったが、付与したナナコポイントが想定以上に使われた結果、当初見込んでいなかった12億円を費用として計上した。同社は2024年1~3月期にも別途20億~25億円程度の損失を見込んでおり、セブンカード単体では通期ベースで最終赤字に転落する見通しだとしている。

このような損失が出たのはマイナポイント事業の制度設計にある。

マイナポイント事業は第1弾で5,000円、第2弾で15,000円分のポイントが受け取れ、各種キャッシュレス決済で利用できるというものだったが、利用先に指定された決済事業者は会計処理としてポイント付与額を売上高から控除したり、費用として計上したりする必要があった。

そこで政府は、付与したポイントと同額の補助金を交付するとしたが、ポイントには有効期限があり、有効期限が切れて失効したポイントは会計上は事業者の収益になり、失効ポイント分だけ得をする事業者も出てくることになる。

こうした状況を踏まえ、マイナポイント事業への参加希望の事業者に対して政府は、過去数年の利用実績に基づくポイントの「失効率」を事前に事務局に提出させ、失効が見込まれる分をあらかじめ控除し、実際に利用されるであろうポイントにのみ補助金を出すことにした。

つまり、失効率が想定通りであれば、利用ポイントに補助金が交付されるため、事業者は損も得もしないが、事務局提出時の想定よりもポイントが多く利用されると、失効ポイントは減るが補助金は提出時の失効率に基づいてしか交付されないため、事業者は損をしてしまうのだ。セブンカードが損失を計上することとなったのはこのためだ。

さらにセブンカード側は事業で利用者に付与されたポイントは散発的に使われると想定していたところ、一気にポイントを消化する利用者が多かったのも誤算だったとしている。

東洋経済の調査によると、現状ではまだマイナポイントの有効期限を迎えておらず、最終的な損益分岐点が出ていない事業者も多いため、予測の域を出ていないが、セブンカードのように損失を出す事業者が潜在的に多くいるとしている。

また、事業者のなかには有効期限を設定していない事業者もあり、そういった事業者は影響がないだろうとしている。


POINT

マイナポイント使用期限が無期限だった主な事業者


セブンカードはマイナポイント事業で付与されたマイナポイントに使用期限を設けていたが(4月1日から翌年3月末日までに付与された場合は翌々年の3月末日まで)、マイナポイント事業への参加事業者のなかには使用期限を設けていない事業者もいた。

たとえば、楽天グループの楽天EdyやイオングループのWAONなどは使用期限が無期限だった。また、PayPayやau Payなども付与されたマイナポイントの使用期限は設けていなかった。

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