英携帯企業ボーダフォン(Vodafone)は24日、住友商事、チェーンリンク(LINK)を開発するチェーンリンクラボ及びInnoWaveと共同で、ブロックチェーン上で発行されたデジタル船荷証券を交換するPoC(概念実証)を行い成功したと発表した。
32兆ドル(約4,800兆円)規模に及ぶ世界貿易エコシステムの長年における課題解決を目的として行われたこのPoCではボーダフォンが提供するDAB(デジタルアセットブローカー)と、チェーンリンクのCCIP(Cross Chain Interoperability Protocol)を使用し、IoTデバイス間でデジタル船荷証券の相互運用性を確認した。
このDABは、IoT、ブロックチェーン、スマートコントラクトを自動化し、モノの経済を可能とするシステム。IoTデバイスにはSIMカードとデジタルIDソフトウェアが搭載されている。
船荷証券は輸送中の貨物の所有権だ。輸出者がコンテナを船に積み込む際に、船は輸出者に船荷証券を発行する。輸出者は物理的な船荷証券を輸入者に宅配便で送り、貨物が到着した際にそれを提示することにより受け取ることができる。
船荷証券は貿易金融において重要な文書だ。近年はブロックチェーンを使用する貿易金融プラットフォームも出てきている。複数の配送ソリューションにおいて分散型台帳技術(DLT)を、数十のデジタル船荷証券(eBL)サービスがブロックチェーンを使用している。物流会社は十数の異なるブロックチェーン技術との統合を望まないため、後者の点は物流会社にとって悩みの種であった。
これらのデジタルソリューションの多くはあまり活用されていない。昨年は4,500万枚の船荷証券のうち、デジタル化されたものは僅か2.1%に過ぎなかった。Swiftなどを含む海運業界団体は、2025年初期までに世界最大の貨物輸送会社から証券をデジタル化するよう求められている。相互運用性を有効にすれば、物流に関わるすべての企業がデジタル証券を導入しやすくなることにつながるという声もある。
ボーダフォンDABのホルヘ・ベント(Jorge Bento)CEOは「ボーダフォンDABとチェーンリンクは従来の市場と高度な分散型プラットフォームの架け橋となることで、自社のプラットフォームをどのように組み合わせて非互換性の海を切り抜けることができるかを示した」とコメント。
今回のPoCを通じて、「データとサービスのシームレスかつ安全な交換が保証される」と述べた。
PoCに住友商事が参加した背景には、今年5月に同社がDABを開発するボーダフォン傘下のDABCO Limitedの株式20%を取得し、出資参画したことがある。
ボーダフォンは船上で火災などの事故が生じ、貨物に取り付けられたIoTデバイスが検知し、ただちに保険会社に連絡するほか、保険料を自動的に請求することを可能にできる「海上貨物保険システム」を住友商事と共同開発しているという。以前も自動車分野で同じようなシステムを構築した実績を有する。
参考:発表
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