──現状のWeb3.0領域をどのように捉えていますか?
宮下大佑(以下、宮下): 現在のWeb3.0領域、特にNFTは、デジタルデータの唯一性と真正性を保証する革新的な技術として注目されてきました。そしてこれらは今後、すでに普及しつつあるデジタルアートやゲームだけでなく、現実のモノやサービスの利用権等の「消費財の流通」においてこそ、その真価を発揮していくと考えています。
そもそも消費財の流通は「物流」「商流」に二分することができ、前者のコストは多くの人が実感している通り年々小さくなってきています。NFTはデジタル上の共通の流通規格として、後者の商流に関わるコストを劇的に削減する可能性があります。マルコム・マクリーンが1950年中盤に発明し、世界の物流の様相を一変させたコンテナに倣い、私はNFTを「権利のコンテナ」と呼んでいます。
その意味でチケミー社が発明し、令和5年10月に特許を取得したRFT(Redeemable Fu tures Token)は、この文脈で注目すべきトークン規格です。RFTは、NFTを基盤とし、現実のモノやサービスの利用権などの消費財の権利をデジタル化して効率的に取引できるようにします。
NFTと同じように自由な流通が可能である一方、モノの受け取りやサービスの利用(償還)と同時にSBT(Soulbound Tok en)化される特徴により、消費財をトークンに紐づけた際に発生する二重消費問題を防ぐことができます。また、消費した後は消費した証としてウォレットに残り続けます。総じて、Web3.0、NFT、RFTは、インターネットと現実世界の交わりのあらたな段階を形成し、生活やビジネスに大きな変革をもたらす可能性を秘めています。
社会全体の価値の流通を変革する ──自社のプロジェクト・サービスを通してどのような魅力を届けて、どのようなことを成し遂げたいと考えていますか?
宮下: チケミー社は、「あるべき場所にあるべき価値を届ける」というミッションのもと、日本初かつ最大のNFTチケット販売プラットフォーム「TicketMe(チケミー)」を開発・提供しています。ブロックチェーン技術を活用し、チケットの偽造や不正転売を防ぎつつも、定価以上でのリセールが可能となる仕組みや、NFTの特性を活かした付加価値の提供などを実現しています。また、これらの取り組みにより、チケットの「売れない」と「買えない」という課題を解決することを目指しています。
現在、国内外の演劇やライブ、スポーツなどさまざまな興行で利用されており、さらなる成長が期待されています。将来的には、NFTチケットを通じてあらゆる権利を流通させることを視野に入れており、世界のチケット業界の大部分のシェアを獲得することを目指しています。このように、チケミー社はあたらしい技術を駆使し、エンタメ業界に革新をもたらすと同時に、社会全体の価値の流通を変革していきます。
今後の展望 ▶︎ 特許を取得したRFTで権利をデジタル化 将来的なチケット業界のシェア獲得を目指すhttps://ticketme.co.jp/
Profile ◉宮下大佑 Daisuke Miyashita
早稲田大学政治経済学部入学と同時に、アパレルを扱うECサイトを起業。その後、事業売却したのち、独立系VCのEastVenturesにてリサーチ業務に従事。2022年6月日本初のNFTチケット販売プラットフォーム「TicketMe」を提供する株式会社チケミーを設立。代表取締役に就任。