──現状のWeb3.0領域をどのように捉えていますか?
田本英輔(以下、田本):セキュリティ・トークン(ST)の1番の魅力は、ユーティリティ・トークン等と組みあわせることでアセットファイナンスにおいて金銭的メリットに加えてサービス提供・割引・体験等のあらたなメリットを投資家に提供することができる点にあると考えております。
これにより、今までファイナンス対象となっていなかったアセットについても金融商品の対象としてファイナンスを行える可能性が出てきます。その対象となるアセットも不動産等のリアルアセットにとどまることなく、著作権等、無形のアセットまで広がっていくことでしょう。
STにおける課題は、STの魅力とコスト感のバランスをどう取っていくか、という点にあると思います。国内のST基盤として多く用いられている「Progmat」、「ibet」はノードを自社で持つ場合には一定のコストが必要となります。このようなSTの魅力がより発揮されることで、より多くの証券会社や信託銀行等の参加企業がコストを払ってでもST領域に参加したいと思えるかが今後国内のST拡大に向けてのカギとなるでしょう。
日本の眠れる銭をActivateする
──自社のプロジェクト・サービスを通してどのような魅力を届けて、どのようなことを成し遂げたいと考えていますか?
田本:弊社では「ALTERNA(オルタナ)」を通じて、STを利用したデジタル証券ファンドを個人投資家の皆様にお届けしております。ALTERNAを通じて今まで機関投資家等のプロ投資家のみに機会が限られていたホテル、レジデンスや商業施設等の大型不動産への投資機会を提供し、あらたな資産形成の選択肢を作り出したいと考えております。
ALTERNAではファンド組成時に特典を付与することで投資家の皆様に金銭メリットに加えた保有体験を持ってもらえるような取り組みも行っております。将来的にはユーティリティ・トークンの実現も視野に入れており、より多様な保有体験・メリットを投資家の皆様に得ていただけるよう計画中です。
これを実現することで、投資商品を提供するオリジネーターにとってもあらたな資金調達手段としてALTERNAを使っていただける機会が増えると考えております。将来的には、不動産に加えて航空機や船舶等の新規リアルアセットや上述した無形アセットについてもALTERNAで取り扱えるよう検討を進めています。
また、地域ファンドの実現についても動きを進めております。具体的には、各地の地元金融機関様との連携を推進し、地域の方がより身近に感じられるような地域の象徴的な施設などに、現地の方々にご投資いただく、といったようなお金のサイクルをALTERNAで作り出したいと考えております。
投資家・オリジネーターどちらにも価値を提供することで、日本の眠れる銭をActivateし、社会・家計どちらにも活力を与える中心となるプラットフォームを目指して参ります。
今後の展望▶︎
STの課題は魅力とコストのバランス感
今後多様な保有体験・メリットを提供していく
https://lp.alterna-z.com
Profile
◉田本英輔 Eisuke Tamoto
三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社 デジタル投資銀行部長
東京大学法学部卒。2019年3月にインターンとしてLayerXに入社。三井物産デジタル・アセットマネジメントの設立準備から携わり、設立と同時に同社へ出向。デジタル投資銀行部を立ち上げ、デジタル証券の社会実装に向けてBizDevを担当。