──現状のWeb3.0領域をどのように捉えていますか?
朏仁雄(以下、朏): Web3.0はブロックチェーン技術を活用した暗号資産から始まり、パブリックブロックチェーン上にさまざまな機能が実装され、多様な「価値」がトークンに紐付き、相互交換、移転などが瞬時に行われ、価値移転の革命とも称される機能をもたらしています。
もともと電子データである暗号資産は主に投資目的として取引されてきており、暗号資産交換業者が現実の通貨との交換の出入り口になっているものの、これらを経由せず暗号資産・ステーブルコイン間の交換がなされるDeFiのような仕組みもブロックチェーン上に実装されています。
加えて、データの所有や利用の権利としてゲームトークンやアートなどさまざまな権利を表象するNFTや、RWA(Real World Asset)と呼ばれる実在する資産価値に紐付くトークンが発行され、これらがさまざまな経済活動により発生するデータをユーザー所有と明確に位置付けたことが、インターネット発展の歴史のなかでも革新的な出来事であると捉えています。
一方で、トークンを保有するユーザーのインセンティブは、ステーブルコインなど一部を除き、多くが「値上がりによる儲け」のためとなっているのがまだまだ実情でしょう。こうした状況ですと、ブロックチェーンの特徴を熟知しウォレットの操作に慣れた一部の限られたユーザーの利用に留まります。
本質的に「データ主権・価値移転の革命」を幅広く一般に受け入れられるようにするには投機以外のユースケースが必須となり、今後もその利用シーンがさまざまなプロジェクトにより模索されていくものと考えています。
あらゆる種類のトークン間での価値交換をシームレスに ──自社のプロジェクト・サービスを通してどのような魅力を届けて、どのようなことを成し遂げたいと考えていますか?
朏: 国内では、暗号資産、セキュリティトークン、ステーブルコイン、その他(NFT等)と定義は明確になっており、弊社はそのなかでも最も規制が厳しいとされる有価証券・セキュリティトークンの流通市場を担っています。
Web3.0プロジェクトの現場ではよく、発行するトークンを規制に該当させないよう、暗号資産にもセキュリティトークンにも当たらない設計にするという話を聞きます。
単なる電子データとしてそのものに価値を有するゲームなどのクリエイティブコンテンツであればそのような設計も可能ですが、RWAといわれる世界では「現実世界の資産とトークンの紐付けを行う信頼すべき機関」の存在が必須となります。従ってWeb3.0の特性をそのまま活用することが難しい一面があります。
このような制約のなかで、限りなくWeb3.0的に行え、合法的にあらゆる種類のトークンの間で価値交換がシームレスに、かつ合法的に可能となる世界を、セキュリティトークンにおける「発行・投資・移転・交換・償還」等の流れにおいてもつくっていきたいと考えています。
今後の展望 ▶︎ 現実世界の資産とトークンの紐付けを行う機関は必須 あらゆる価値交換がシームレスな世界をつくっていくhttps://www.odx.co.jp/st/ja/
Profile ◉朏仁雄 Kimio Mikazuki
大阪デジタルエクスチェンジ株式会社代表取締役
あおぞら銀行にてコーポレートファイナンスのベースを積み上げ、ITX(旧日商岩井系IT事業投資会社)にて幅広くベンチャー投資、買収投資に従事。2019年~2020年ビットポイントジャパンICO事業部長/COO(日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)ICO/STO部会長)2020年よりSBI証券にて社債、不動産STO各初号案件に従事、2021年大阪デジタルエクスチェンジ設立より代表取締役。