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『三国志大戦』シリーズなどを手がけた西山泰弘氏インタビュー ブロックチェーンゲームが生み出す〝あたらしい〟体験とは?

2024/08/26Iolite 編集部
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『三国志大戦』シリーズなどを手がけた西山泰弘氏インタビュー ブロックチェーンゲームが生み出す〝あたらしい〟体験とは?

『三国志大戦』シリーズの生みの親が語るブロックチェーンゲーム

スゴロックス株式会社の西山泰弘氏がdouble jump.tokyo株式会社(以下DJT社)が手がける新作ブロックチェーンゲーム『Battle of Three Kingdoms -Sangokushi Taisen-(三国志大戦B3K)』のプロデューサーに就任した。西山氏はセガのゲームプロデューサーとして『三国志大戦』シリーズなどを手掛け、2024年に”コンテンツプロデュースカンパニー”であるスゴロックス株式会社を創業したばかりだ。

三国志大戦シリーズを始め、セガを代表する多くのゲームタイトルを手がけてきた西山氏が、なぜブロックチェーンゲーム開発に取り組んでいるのか。詳しく話を聞いてみた。

——まずは『三国志大戦B3K(以下、B3K)』のプロデューサーに就任することになった経緯を教えて下さい。

西山:今年、私はスゴロックス株式会社を起業したのですが、そのタイミングでノブさん(DJT社CEO・上野広伸氏)に声をかけられたんです。

——B3K自体は、セガからDJT社がライセンスを受けて、それ以前から開発していましたよね。

西山:はい。私はもともとセガで三国志大戦シリーズを作った張本人だったんですが、B3Kにはまったく関わっていなかったので「がんばっているなあ」なんて気楽にみている立場でした(笑)。

——B3Kは当初2023年リリース予定でしたが、スケジュールを延期して2024年内リリースになり、西山さんがジョインしたということになります。なぜ西山さんに声がかかったのでしょう?

西山:ノブさんを始めとしたDJT社の方がB3Kについて「もっとやれるのではないか」と試行錯誤しているタイミングで、何やら相性が良さそうな私をみつけて声をかけてくれたのかなと。

——すでにある程度開発されているタイトルに途中から参加するというのは難しい決断のように思えますが、やってみよう!と思えたのはなぜですか?

西山:私は30年弱務めていたセガを辞めて起業したタイミングで、あたらしいことにチャレンジしていこうと考えていました。ブロックチェーンとAIについては、いわば”ソフトウェアのイノベーション”であると考えていて、それを民主化させたい、それを使ってあたらしい体験を作りたいという思いを持っていたんです。

DJT社は『My Crypto Heroes(※1)』を作った会社で、ブロックチェーンゲーム業界の老舗企業といえます。私自身も、彼らと組むことで多くのことを学べるし、多くの経験も得られると感じました。

ブロックチェーンという領域が得意で、かつブロックチェーンゲームを開発した経験やノウハウを持っているDJT社と、さまざまなゲームを作ってきた私が組んで、すごいブロックチェーンゲームを作ってやろうということです。途中から参加するということについては、実は会社のメンバーからも「やめた方がいいのでは」といわれたりしましたが。

——そういう意見が出るのも理解できる気がします。せっかく起業したなら、チーム作りなども含めて一から自分でやった方が、成功しても失敗しても納得できるというか。

西山:これでもし失敗したら「西山が入ってダメにした」といわれるでしょうしね。でも、これで颯爽と勝ったら格好いいじゃないですか(笑)。もちろんそれだけじゃなくて、実際に声をかけてもらってから、ノブさんや開発リーダーの坂本さん(DJT社執行役員/ブロックチェーンゲーム開発統括・坂本康朗氏)を始めとした開発メンバーと話したり、ドキュメントを読んだりして、これはイケるなと。

——すごく大雑把な印象ですが、ブロックチェーンに関わる企業は結構技術寄りというか固い部分があって、エンターテインメントのど真ん中である従来のゲーム企業とは文化が違うというか。しかも、開発途中から外部のプロデューサーがやってきて、あれこれと意見するとなると軋轢が生まれるのではないかと心配になるのですが、実際に開発にジョインしてからの感触はいかがですか?

西山:DJT社の開発メンバーはものづくりに関して非常に柔軟で、私が「勝ちたいならこう変えなきゃ駄目です」と意見を伝えていくと、皆さんキュンキュンしてどんどん作り変えていってくれています。実際、昨年のTGS(東京ゲームショウ)で発表したゲームのニュアンスはほぼゼロといえるくらい、変わっていますね。

もちろんそれまで作ってきた土台はそのまま使っていますが、ユーザーが手に持った時の体験は一新されています。そんな大きな変更があったのに、それをものすごいスピードで成し遂げてくれているので、事前に私が感じた通りか、それ以上にDJT社は優秀だったということでしょう。

今、本格的に参画して3ヵ月ほど経っていますが、コミュニケーションコストもどんどん減っていて、もう課題を同じレベルで共有して開発できるようになっていますよ。

「ブロックチェーンという、“あたらしい”体験を作るヒントがある。ならば、それを活かしきった“あたらしい”ゲームを作ってやろう」

——そう聞くと、三国志大戦B3Kへの期待感がどんどん上がってきました。

西山:そういう期待に応えるという心意気でやっているので、ぜひハードルをあげて期待してください。

私は、体験が変わらないと“あたらしい”ゲームとはいえないと思っています。たとえば、『PUBG』は「100人のプレイヤーが同時にオンライン対戦をする」という体験を生み出して世界的にヒットしましたよね。B3Kでも、そういう“あたらしい”体験を生み出していきたいんです。

ブロックチェーンという、“あたらしい”体験を作るヒントがある。ならば、それを活かして“あたらしい”ゲームを作ってやろうということです。トークン(FT)やNFTがあり、セキュリティを担保してくれるブロックチェーンという仕組みがある。それを使えば「レバレッジが効く」とか「こんな風に儲けられる」みたいな話ではなくて、ユーザーにどういう体験を届けるか、ということなんですよね。

——ブロックチェーンゲームの話になると、どうしても「トークンの需給バランスが優れているか」、「どのチェーンを使っているのか」といった話になってしまいがちなので、“あたらしい”体験や“あたらしい”ゲームという言葉にとてもワクワクします。

西山:そういう「仕組みの話」ばかりしている人は、そもそも前提が間違っていると感じます。”熱狂”や”体験”に人がまつわるのであって、仕組みにまつわるわけではないんです。

——「仕組みの話」ばかりしてしまうというのは、我々も反省しなくてはいけない部分かもしれません。

西山:そんなことよりも、まず“熱狂”を作れ、ということです。ユーザーが夢中になって時間やお金を「ここに費やしたい」と思えるものを作ろうとしているのですから。

ユーザーから預かる資産を安全に管理するとか、トークンなどのリワードをフェアに分配するとか、そんなのは当たり前の話なんです。

ブロックチェーンという仕組みによってやれることが増えたのだから、それを使ってユーザーにどんな体験を届けるのか、どういう”熱狂”を届けられるのかこそが、重要だと私は考えています。

——ブロックチェーンというものは、ゲーム作りにおいて体験を生み出すためのヒントであり、材料であると。

西山:ブロックチェーンに関連してWeb3.0という概念もありますよね。私は、Web3.0=ブロックチェーンとは考えていないのですが……。

——辞書的な解説をするのであれば、GAFAなどの大企業が中央集権的にデータを集めて管理するような現在のWeb2.0と比べて、よりユーザー自身が主体的にデータを扱う「分散型インターネット」がWeb3.0であり、そのベースになるのがブロックチェーンであるといわれています。が、ちょっとバズワード化していて、さまざまな切り口や捉え方がある言葉ですね。

西山:私は、ユーザーが主体となって何かを決断したり、何かを作ったりするという意味で捉えています。たとえばゲームの世界でいえばMod(※2)文化は、ユーザー主体で出来上がっているものですよね。

もっといえば、対戦ゲームで「今日は5勝するまでやめない」とか「この特別ルールで対戦だ」とか、そんな風にユーザーが自分たちで何かを決めて、自分たちで面白さを作っていくという文化こそが、Web3.0といえると思います。

——なるほど。「ユーザーが主体となる」という部分にフォーカスしているんですね。

西山:そこについてはB3Kでも取り入れようと思っていますし、そういうゲームエンジンを作っています。たとえばB3Kの中華マップという画面をすでに公開しているのですが、この中華マップはユーザーに委ねようと思っているんです。

——おお!「ユーザーが主体となって何かをする」要素が入るということですね。

西山:そういうことです。ブロックチェーンもNFTもトークンも活かして、Web3.0の概念を取り入れて、“あたらしい”体験を届けます。

まあいうのは簡単ですが、とてつもなく難しいことにチャレンジしていることは間違いありません。4月の時点では、できるかもとは思ったけれども、アイデアは固まっていませんでした。でも、今はもうアイデアも固まってきて、皆さんの期待感を煽っていけるくらいになっています。結果、2024年の今このタイミングでは、DJT社としか絶対にできないようなものを作れていると、自信を持っていえますね。

——ちなみに、先ほど「勝つためにはここを変えなくてはいけない」というようなお話をしていましたが、B3Kが「勝った」といえるのはどのような成果を出した時ですか?

西山:「『三国志大戦B3K』が、ブロックチェーンゲームのイメージを変えたよね」といわせたいですね。ブロックチェーンという仕組みは、本来はゲームユーザーにとってありがたいし便利なものなんです。でも、どうしてもトークン価格とかそういう話ばかり注目されていて、敬遠しているという人もいますよね。そんななかで、ブロックチェーンを使ってあたらしい体験ができる三国志大戦のゲームを作りました」と。それを楽しんでいただいて、「ブロックチェーンゲームいいじゃん!」と思わせたら、「勝ち」ですね。

もちろん、サービスを作っている以上は売上も重要ですが、私はもともとあまり売上は気にしません。お客様が熱狂するようなあたらしい体験を届けられれば、売上は後からついてくるものですから。

——ブロックチェーンゲーム業界はグローバルな市場で、世界中で開発が行われています。そんな中で、日本の企業が勝つために必要なものは何だと思いますか?

西山:もともと日本はゲーム開発が世界一得意なんです。アーケードゲーム、コンシューマーゲーム、スマホゲームといったように、ゲーム業界ではハードウェアのイノベーションが次々と起きてきましたが、その度に日本のゲーム会社はあたらしい体験を生み出して勝ってきました。一方で、中国や米国などの海外のゲーム会社は、グラフィックをリッチにしたり、ゲームの規模をスケールさせたりという面で優れています。ブロックチェーンやAIといった技術はソフトウェアのイノベーションですが、そこでも日本の勝ち筋は、やはり“あたらしい”体験を生み出すことだと思います。

——まさに、三国志大戦B3Kで西山さんが取り組んでいることですね!お話を聞いていると、どんどんリリースが待ち遠しくなってきました。最後に今後の意気込みを聞かせてください。

西山:三国志大戦B3Kをまず5年間やるぞ、と私はチームに伝えています。

リリースに向けて、ブロックチェーンだからこそできることを次々と組み込んでいますが、いきなりブロックチェーンゲームの”正解”のようなものができるとも思っていません。だからプレイヤーの皆様と一緒にWeb3.0らしくどんどんバージョンアップしていこうと思っていますし、ユーザーに5年間楽しんでいただけるアイデアもすでに持っています。これこそ“あたらしい”体験だ、と思っていただけるものを必ずお届けするので、ぜひ期待していてください!

Battle of Three Kingdoms

double jump.tokyoが株式会社セガより『三国志大戦』のライセンス許諾を受け、開発中の本格ブロックチェーンゲーム。アーケード版『三国志大戦』に登場した武将はもちろん、今回のために描きおこされた新しい武将たちも登場する。NFTカードになって生まれ変わった三国志の武将たちを使った戦略的オートバトルとして2024年冬にリリース予定となっている。

公式サイト:https://lp.battle-of-three-kingdoms.games/ja

公式Twitter:https://x.com/b3k_games

2024年4Qリリース予定

ゲームリリースに先駆けて、事前イベント『義勇の夜明け』を秋頃から開催。


Profile

西山泰弘 Yasuhiro Nishiyama

セガ入社後、『三国志大戦シリーズ』、『Code of Joker』、『maimai』、『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド4』、『チェインクロニクル』などのヒット作をプロデュース。また、ビジネスプロデューサーとして、国内外の様々な企業とのアライアンス、新規技術への投資などを手掛ける。2024年4月よりスゴロックス株式会社を創業し代表取締役に就任。

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