——実物資産の代表格で実需・投資ともに盛んな不動産。近年はNFTを活用したDXがトレンドだが、果たしてそのメリットとは?
近年、あらゆる分野でDXが加速しているのはご存じの通り。業務改善や効率化のためのシステム導入やオンライン化など手段・方法は多岐にわたるが、ブロックチェーン技術の活用もそのひとつ。なかでも、不動産と掛け合わせる事例が増えている。
たとえば、株式会社Zofuku(東京都渋谷区)は不動産仲介業を営む傍ら、ブロックチェーンセンターの運営やマイニングマシンの販売・管理を行う。2021年には暗号資産決済の不動産売買仲介サービスやステーブルコイン決済の賃貸借契約の締結を始めている。
前者であればビットコインやイーサリアム、ステーブルコイン各種など、さまざまな通貨の決済に対応していて、ブロックチェーン技術を活用することで取引の透明性や信頼性、契約の自動執行といった長所を活かすことができる。
海外在住者でも日本国内の不動産を売買できることがメリットだ。
一方、暗号資産支払いによる賃貸借契約では、敷金や家賃の支払いをドル建てステーブルコイン・USDTなどで行う。
借主は24時間送金ができ、振込み手数料は銀行に比べて安価、いつでもブロックチェーン上で支払いを確認できるメリットがある。
NFTを活用するケースもある。NFTとは偽造や改ざんが難しいブロックチェーンにより、デジタルデータに固有の価値を付与するもので、その名の通り「代替できない」というのが最大の特徴。
アートなどの分野で活用されてきたが、現在は不動産投資でも使われ始めている。土地や物件をNFTに変換することで、実際の不動産のようにキャピタルゲインを狙ったり、ほかのユーザーに貸し出すことで賃料を得ることができるという。
すでにメタバースでは、ゲーム内の土地を購入して売買・賃貸が可能で、現実に存在する家をNFTとして販売する事例もある。
ただし、不動産NFTは情報が少なく、法整備も追いついていない。少なくともメタバース内の不動産は認知度が低く、世界的にユーザーは多くない。
法整備も未成熟なので、ある日突然規制され、保有不動産が売買できないといったことが起きる可能性もある。何より、現実の不動産をNFT化する手間やコストは誰が負担するのか、不動産所有者の多いシニア層がこういった仕組みをどれだけ理解できるのかといった懸念もある。
しかしながら、不動産業界はいまだアナログな世界で、近年はオンラインでの売買・仲介契約が可能になったものの、未だ紙ベースでの取引が根強く残っている。住居から遠方の土地を取引するには確認・移動は大変で、海外ならなおさらだ。
DXは業界全体の課題だが、詐欺やトラブルも目立つだけに、ブロックチェーン技術などを使った安全性の高い取引手段の確立は急務だ。
とりわけ国内においては、人口減少に伴い空き家を含めた土地活用の手段が叫ばれていて、流動性や安全性を担保するという側面からも、NFTの活用は効果的だ。今後の展開が期待されている。