デジタル遺産とは、亡くなった人がオンライン上で残した情報や資産、サービス、アカウントなどのこと。たとえばスマホアプリの決済サービスにチャージしていたお金や暗号資産といった資産がこれにあたる。
さらに、直接的な金銭的価値を持っていないものでも、SNSのアカウントやメールアドレス、オンラインショップでの購入履歴、クラウドサービスに保存された画像や動画ファイルなどもデジタル遺産の一種と考えられる。
では、実際に発生する可能性があるデジタル遺産トラブルを紹介しよう。
たとえば亡くなった人がFXサービスを利用していた場合、もしかしたら資金がFX会社に預け入れられたままになってしまうかもしれない。
一方で、実は大損失を出していて借金が残っているかもしれない。故人が残した資金を引き出せないのは遺族としても困ってしまうが、借金が残っている場合、さらに問題は深刻化する。
FX企業は借金がいつまでも返済されなければ当然督促をしてくるし、時には訴訟を起こすこともあるからだ。何も知らない遺族のもとに、突如訴訟の知らせが来るという事態になる可能性もあるのだ。
通常、遺産はプラスもマイナスも一括して相続人に引き継がれる。
プラスの場合は引き継いだ遺産からマイナス分を補填すれば良いが、問題はマイナスの方が大きい場合。このようなケースでは相続放棄や、プラスの範囲内でマイナスの遺産も相続する「限定承認」といった手続きができるのだが、その期限は相続発生日から3ヵ月以内と決まっているからだ。
亡くなった家族の遺産をプラスであると算出して相続したら後から巨額の借金が発覚、というケースも現実的に起こり得るのである。
暗号資産やNFTについてはプラスの資産が引き出せない可能性が大いにある。これらをウォレットなどで故人が自ら管理していた場合、パスワードがわからなければ本人以外に誰もその資産を引き出せないからだ。
FXであれば運営企業と相談して対処してもらえる可能性があるが、暗号資産やNFTをウォレットで管理している場合は諦めるしかないのが現実である。
このようなデジタル遺産問題については現時点で明確な対処方法がなく、トラブルに見舞われた遺族が1つ1つ解決するしかない。自分が故人の立場になる可能性がある場合は、可能な限りデジタル資産の情報を書き出し、パスワードなどを家族が確認できるように準備しておく必要がある。
また、高齢の家族がいる場合も同じようにデジタル資産の情報を聞き出しておくべきだろう。
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