地方のデジタル化は本当に可能なのだろうか。
岸田政権が掲げる「デジタル田園都市国家構想」は「あたらしい資本主義」経済政策の1つで、推進交付金など5.7兆円もの予算が投じられている。
デジタル技術の活用により、地域の個性を活かしながら、地方の社会課題の解決、魅力向上のブレイクスルーを実現し、地方活性化を加速することを目指すという。日本の課題である少子高齢化や、都会への一極集中による地方の空洞化という問題を、デジタル化によって解決しようという政策である。
デジタル田園都市国家構想で推進される事業としては、サテライトオフィスの整備があげられる。これはIT系などの職に就いている人が、地方都市に居住したまま仕事をできるようにすることを期待したもの。
ほかにも、ロボットやAIを活用したスマート農業、動画などを使って遠隔診療をするスマートヘルス事業なども推進されている。
実現すればいかにも「未来の働き方」といえるかもしれないが、それを実現するための技術力や人材を各自治体が確保できるのか、という問題がある。
「デジタル化で地域振興」といえば聞こえはいいが、「どの分野をデジタル化すれば地域振興につながるか」は定かではない。人的問題を解決できたとしても、予算の使い方をどうするか、という問題が残ることは間違いないだろう。
そこで登場するおそれがあるのが、地方自治体によるメタバースである。
ここ数年、地方自治体などが、VR空間に特定の地域を再現したメタバースを構築しようとする事例が増えている。メタバースと聞けばいかにも「デジタル化」っぽさがあるが、いったい何に利用されるのか、誰が訪れるのか、といった疑問は拭えない。
このままでは「デジタル田園都市国家構想」も、使い方がわからない巨額の交付金を配って、誰も使わないメタバースを構築するという結果になりそうだ。
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