SBTやDIDは魅力的な領域
ユーザー目線に立ち参入障壁を取り除く
日本は官民一体となってWeb3.0を前に進められる環境が世界で唯一整っている。あたらしいビジネスモデルやユースケースの出現でWeb3.0先進国となる面白い市場。
ウォレットの普及は、すなわちWeb3.0の普及にも直結する。しかし、ウォレットの設定や資産の自己管理というのは、初心者を始め不慣れなユーザーにとって大きな障壁となっており、参入のハードルを高めているのが現状だ。
ウォレットの開発を行うUPBONDでは、ソーシャルログインやパスワードの簡略化を進め、個人ユーザーだけでなく、企業も利活用しやすい『UPBOND Wallet』の提供を行う。
代表の水岡駿氏がグローバルで培った経験をもとに指揮を執り、5年、10年といった未来を見据え事業を展開する。Web3.0の根幹にあるウォレットという重要なプロダクトを開発する水岡氏は、注目領域や普及に向けた課題についてどのように考えているのだろうか?
水岡:日本はFTXの破綻による影響がほとんどなかったということも含め、Web3.0に対して民間と国がしっかりと前に進むことができる環境が世界で唯一整っていると考えています。そのため、2023年はあたらしいビジネスモデルであったり、ユースケースを作ることができるかが焦点になります。日本が世界に対してWeb3.0先進国となる上で非常に面白い市場環境だといえるでしょう。
日本特有の資産を活かしたあたらしいユースケース、特にアニメ、ゲーム文化みたいなところはわかりやすく進められる領域だと思います。
SBT(SoulBound Token)や分散型IDであるDIDのようなものをしっかりと活用したビジネスモデルは魅力的です。
さまざまなコンシューマーとエンタープライズで作られた事業というところに対して、SBTやDIDを活用したあたらしいビジネスモデルが今年はたくさん出てくるかもしれませんね。
セキュリティの観点では、マルチパーティコンピューティング(MPC)やアカウントアブストラクション、コントラクトウォレットに着目しています。
私は個人が直接資産やデータを管理していくことがWeb3.0の本質的な概念だと思っています。ウォレットの秘密鍵と公開鍵のなかで秘密鍵をどう扱っていくかというところが、1つのテーマとなります。
現状、初心者のWeb3.0への参入障壁としてさまざまなものが考えられますが、弊社ではソーシャルログインと4桁のパスコードでアクセスできるウォレットを開発しています。こうしたプロダクトへの取り組みが参入障壁を下げる1つの答えにつながるのではないかと思います。
よく取り沙汰される暗号資産のハッキングに関していうと、暗号資産交換業を持ってエクスチェンジプラットフォームを提供されている企業さんに関しては秘密鍵管理の手法がかなり成熟してきていると認識しています。
金融庁のレギュレーションをしっかりと守り、技術的にも複数の秘密鍵で暗号資産を管理するマルチシグを導入するなど、そういったノウハウも蓄積されています。日本は過去の経験も踏まえ、しっかりとした実績を積んだ上で成長していると感じていますね。
去年、我々はユースケース作りという領域で、たくさんの試みができました。今年はいろいろな企業さんとタッグを組んで、ユースケースの部分を磨いて、世にインパクトのあるプロダクトを出していくところに焦点を置いて進んでいきます。
現状の日本のセキュリティ体制
さまざまなノウハウを活かし資産管理体制は成熟化してきている。
◉水岡 駿
Profile│2011年日本・中国にて起業。2017年カスタマイズ時計メーカー、UNDONE JAPANを共同創業。代表取締役社長に就任。2019年、エンターテイメント×ブロックチェーンを目指す株式会社COINBOOKに出資。執行役員CTOに就任。複数の会社の技術顧問も務める。2019年11月、既存事業を分社化し株式会社UPBONDを創業。代表取締役社長に就任。同社にてWeb3のWallet プロダクトを提供。生活者が簡単に利用できる圧倒的UI/UX を実現したWallet を展開し、IP 業界、建設業界、小売業界等の先進的な取り組みを行う大手企業とWeb3を本格的に活用した共創プロジェクトを推進中。