STEPNにも投資する国内発ファンド
最も大きな市場は「Web3×ゲーム」だ
エンタメ業界はNFTの存在をもはや無視できない。日本由来のWeb3ファンドは、世界と戦い高みを目指す。
Web3領域への注目度は日に日に高まっており、機関投資家の参入事例も増加の一途をたどっている。日本由来のWeb3特化型ファンドも出現するなか、昨年には株式会社アカツキから『Emoote(エムート)』が誕生した。
Emooteを率いるのは連続起業家として実績のある熊谷祐二氏。エンタメ領域に精通する熊谷氏はすでにSTEPNやYGG Japanにも投資を行っており、次なる投資先にも注目が集まる。
エンタメ領域への次の投資
可能性の塊であるゲーム産業に注視し日本の価値観を活かした衝撃を与えるプロジェクトを作っていく。
熊谷:2023年のWeb3領域全体のスタートとしてはどうしても重たい空気が漂うのではないかと考えています。暗号資産取引所FTXの破綻を代表としたさまざまな事件等による影響で、トークン価格やコミュニティ全体の熱量が落ち着いてしまっており、この状況は短期では解決しません。あとはマクロ経済による影響も受けますので、2023年全体として飛躍的な市況の回復というのは考えにくいとみています。とはいえ、着実にあたらしいインフラ強化やアプリケーションの仕込み等は進んでいくと思いますので、早ければ2023年末、2024年初め頃から市況にも影響を与えるものが出てくるのではないかとの見立てはあります。今年はそのための地盤固めが行われる1年でしょう。最も成長する市場としてはGameFiがあげられます。
Web3が関係なくてもゲームというのはエンタメ領域において最も大きい産業の1つです。ですので、Web3とゲームが融合した市場が最も大きな規模になる可能性があるのは間違いないでしょう。仮に市況が悪かったとしても、面白いゲームが出てくれば状況は変わります。
Web3領域のなかでも、特にエンタメだけに限れば、今年は事業者がよりNFTの存在を無視できなくなる1年になると思います。
NFTはあたらしいエンタメ体験を届けるための良いツールになると考えています。ゲーム内のアセット、メンバーシップやライブチケット等は、長期的にみればNFTの方がユーザーメリットが大きい。あらゆるサービスやデジタルコンテンツのNFT化が当たり前に考えられるような年になるかもしれません。
必ずしもNFTと現実世界の融合が肝になるというわけではないですが、不動産や目にみえる価値に紐づいたNFTはマスアダプションしていくために重要になるでしょう。
走るという行動習慣を価値化し、NFTと紐付けたSTEPNは良い例ですね。人間の本能や行動経済学のようなものを加味し、リアルな経済活動と紐づける点は市場拡大に大きな効果をもたらしました。
我々はシンガポールに拠点を置き、日本の価値観を持ちながら、アジアを中心としたあらたなプロジェクトの支援を引き続き行なっていきます。すでに前述したSTEPNにも投資を行っていますが、こうした世界にインパクトを与えるプロジェクトを一緒に作っていきたいです。
日本だと世界を相手に戦っているプレイヤーはなかなかいないので、これを日本の価値観を持ちながらやっていき、より高みを目指していきます。
Profile
◉熊谷 祐二
シンガポールを拠点に、エンターテイメント、メディア分野を中心にWeb3投資を行う。主要投資先は、STEPN、BreederDAO、EthSign、YGG Japanなど。2014年、iemo株式会社共同代表取締役COO就任、同社を株式会社ディー・エヌ・エーへ売却。2015年、スポーツテック事業を手掛けるSkyBall株式会社を創業し、2018年に同社を株式会社アカツキへ売却。
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