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たびたび話題にのぼる「AI社員」は人間にとって代わるのか?

2024/10/01Iolite 編集部
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たびたび話題にのぼる「AI社員」は人間にとって代わるのか?

AIがタスクをこなす“だけ”のフェーズはすでに終わった

2024年3月12日、米国のITベンチャー企業であるCognitionが自社で開発中のあたらしいAI“Devin”を、突如YouTubeに発表した。その動画の概要欄には以下のような文言が記されていた。

「世界初の完全自律型AIソフトウェアエンジニア、Devinを紹介します」動画に映っていたのは、人間から「こういうサイトを作ってほしい」というあいまいなオーダーを受けた後、自分でサイト構造を構築し実装のためのタスクを計画し、プログラミングを行い、エラーが生じたら修正を行い、最終的にオーダーに沿ったWebサイトを完成させていくAIの姿だった。

ChatGPTに代表される大規模言語モデル(以下、LLM)を使ったAIは、あくまで人間の作業を支援することを前提に構築されていた。それだけでも、人間の仕事の在り方を大きく変えるものとして世界中の人々を熱狂させたが、“Devin”はそのはるか先を行く技術だった。完全自律型ということは、AIだけでタスクを完遂することができるということであり、この技術の先にみえるのは、人間不在の職場ではなかろうか。

映画『ターミネーター2』で未来のAIは、人類に対して牙を向いていた。シンギュラリティによるAIの反乱なんて、一昔前のSFの話になってくるが、“Devin”のような完全自律型AIが登場してくるとなると、人間が仕事に介在する余地はどの程度まで残るのか不安になってくる。幸か不幸か“Devin”の一般公開はまだ行われていない。

公式サイトには、先行体験するためのウェイトリストが用意されているので、とりあえず登録だけして自分の順番が回ってくるまで待つ状態だ。だが、Cognition社は、Microsoftと提携を発表している。つまり、今後は世界中のプログラマーが使用しているMicrosoft Azureと“Devin”が統合される未来も計画されているということだ。AIと人間の職掌の切り分けは、どうなっていくのだろう。

職場へのAIが進出は、実はすでに始まっている。最近はチャットボットを採用しているHPも増えたが、あのなかには生成AIを使ったものも混ざっているし、その名もずばり「AI社員」というサービスを提供する企業は、私たちが想像しているより多い。試しにパソコンでAI社員と検索してみてほしい。驚くほどいろいろな分野で、AI社員が採用され、活躍していることがわかるはずだ。

▶ChatGPTの登場により、書店のPC誌コーナーには、大量の生成AI解説本が並ぶこととなった。今や生成AI本は、オフィスソフトの使い方の本と並ぶほどの市民権を得ている。

AI社員とはどのようなものなのだろう。実際に企業向けにAI社員の開発と提供を行っている株式会社FiveVaiに、AI社員の実情について話を聞いてみた。株式会社FiveVaiは、人材開発とDX支援を主軸として2015年に設立された企業だ。人材開発とDX支援を並行して行うことで、顧客の抱える課題へソリューションを提供しつつ、成長をサポートしてきた。

そんな同社がDX支援の一環として生成AIを用いた『AI社員』サービスを展開し始めたのは2023年からだ。「FiveVaiのAI社員は、企業内の業務をAIが支援する形で進化させる取り組みです。現在は、美容業界や金融業界などで導入が進んでおり、お客様からも満足とのお声をいただいています」と、同社のDX事業部に勤める町田一世氏は語る。

FiveVaiがAI社員サービスを手掛けるきっかけは、やはりChatGPT登場だったとのことだ。「ChatGPTなどの生成AIツールが登場し、専門知識がなくても簡単にAIを利用できる環境が整いました。生成AIの“民主化”です。これまで限られた企業にしか使用できなかったAIを、中小企業でも簡単に導入して、DXへ取り組んでいただけるようになったのですから。

これらを使えばホワイトカラーの業務は飛躍的に効率化できると可能性を感じ研究を進めました。生成AIを活用した業務改善が可能となれば、ビジネスにあたらしい風を吹き込めるはずです」

完全自律型AIの進化により1人ユニコーン企業の誕生の可能性も

FiveVaiも、こうした未来に備え、AI技術のさらなる進化と、それに伴う人材育成に注力しています」と語った。つまり、生成AIの進化は、人間の仕事を奪うのではなく、生成AIを管理する人間とAIで仕事をすみわける未来のきっかけになると考えているようだ。実際、現在の生成AIはLLMをベースとして開発されているため、「非言語的なコミュニケーション能力」を獲得するまでは至っていない。

それはたとえば、顧客の目線や仕草から本心を探ったり、人間独特の婉曲表現を聞き取ったりする技術などだ。町田氏によると、AIが顧客の表情や声のトーン、姿勢などを理解し、適切なフィードバックを提供することの重要性は技術者も認識しているというが、現状の生成AIではどうしてもアウトプットが標準化されてしまい、個別の対応や差別化は難しいという。

FiveVai社は、AI社員に定型業務処理を委任することで、人間は創造性や共感力を活かした、人間らしい仕事に集中できるようになる未来を思い描いているという。今後AI社員が進化し、より普及するとIT化によって増大し続けている現代人の仕事はむしろ軽減されるということか。「AIの進化が進むにつれて、人間ならではの付加価値の創出がますます重要になっていきます」と町田氏は締めた。

将来的には、斬新な発想と相手企業から共感力を得る能力さえあれば、人間はプレゼンテーションに集中し、実作業はAI社員にすべて任せることができるようになるかもしれない。となると、たった1人しか社員のいないユニコーン企業だって実現するだろう。AI社員によって、生産性やGDPという言葉の定義を見直すような日が、やがて訪れるかもしれない。

Column

▶業務効率化を実現するあらたなパートナー「AI社員」(株式会社FiveVai)

ChatGPTを中核とする大規模言語モデル(LLM)技術を活用し、業務の効率化を支援するべく開発されたシステム。メールやドキュメント、業務ログなどを分析し、日常的な業務の自動化を促進。企業のDXを支援する。定期的な報告書の作成や、一般的な問い合わせ対応などの業務はAIが自動で処理。社員はより創造的なタスクに集中できるようになるほか、分析により得たデータから社員のコミュニケーション改善の提案なども行ってくれる。カスタマイズ導入も可能だ。

▶自分で考え判断し成果物を完成させる「Devin」(Cognition Labs)

メンバー総勢10名しかいない米国のスタートアップ企業Cognitionが、突如発表した完全自律型の生成AI。同社はDevinを、「AIソフトウェア開発者」と、呼んでいる。その名の通り、人間の手を介在することなく独立して動作し、プログラムのエラーをみつけた後はリアルタイムで修正する機能を有している。現在、Microsoftのバックアップを受け急ピッチで開発が進んでいるが、一般公開はまだされていない。人間の仕事の在り方を変える発明として注目を集めている。


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