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bitbankの株式上場準備 取引所が上場を目指す意図とは

2024/09/29Iolite 編集部
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bitbankの株式上場準備 取引所が上場を目指す意図とは

なぜ取引所は上場を目指すのか

あらたな資金流入を見越し動き始めた暗号資産業界

bitbankは、2014年からサービスがスタートした暗号資産取引所だ。運営はビットバンク株式会社。日本初のビットコインATMを設置したり、クレジットカードから暗号資産を購入できるウォレット「bitcheck wallet」のサービスを開始したりと、10年近く国内Web3.0業界をリードし続けてきた。

同社は、2021年9月に、国内でSNSの普及の嚆矢となった「mixi」の運営や、ゲームアプリ「モンスターストライク」の開発で知られる株式会社ミクシィと、複数のWebメディアの運営を行っている株式会社セレスから、合計75億円の資金を調達すると発表。さらに、ミクシィと資本業務提携を結び、現在同社の持分法適用関連会社となっている。

2024年7月31日に突如発表されたビットバンク株式会社の株式上場準備は、ミクシィのIR情報にて発表された。現在、ビットバンク株式会社の持ち株比率は、株式会社ミクシィが26.99%、株式会社セレスが23.05%。ビットバンク株式会社の代表取締役CEOの廣末紀之氏が30.69%となっている。

思い返せば、5年前に同じく暗号資産取引所のbitFlyer上場の噂がまことしやかに囁かれた時も、同じように業界は揺れ動いた。だが、この噂はいまだ実現に至っておらず、代替手段として、現在マネックスグループ傘下の取引所であるCoincheckが「SPAC上場(詳細はP20へ)」という手段で、米国での上場を目指している。

そのようななかで、ミクシィのような超大手企業が暗号資産取引所の株式上場、しかも東京証券取引所への上場を目指すというニュースは、日本国内の暗号資産取引所に対する評価が、次なるフェーズへ移行したからとみてよいだろう。

この動きのきっかけの1つとなったのは、やはり前ページで紹介した、米国でのビットコイン現物ETFの上場だ。これまで市場を支えてきた暗号資産愛好家以外の投資家から大きな資金が暗号資産市場に流入する可能性がみえたことで、各社が次の時代のリーディングカンパニーを目指して活発に動き始めている。

日本の機関投資家の特徴

●全体の54%が暗号資産に投資する意向あり

●暗号資産にネガティブな機関投資家は25%

●銘柄はビットコインとイーサリアムが人気

必要なのは機関投資家から信用を得ること

ではなぜ、暗号資産取引所は上場を目指しているのだろうか。そこには、機関投資家の存在により、これまでとは異なるマネタイズ手法が求められていることが関連している。実は2021年に米国NASDAQで史上初の上場をはたした暗号資産取引所のCoinbaseは、収益の約50%を暗号資産取引以外からあげている。特に伸びているのがカストディ手数料である。

カストディとは、投資家の代理人として、有価証券の保管・管理等を行う業務を総称する金融用語である。現物が存在しない暗号資産業界においては、投資家のために、新規ウォレットの発行代行や秘密鍵の保管までも行っている。ウォレットの秘密鍵を他人に預けるなど、個人で暗号資産を運用している人間には想像できないことだが、上場し多様な機関投資家が市場に参入したからこその現象とみられる。各機関投資家は、リスクヘッジとしてCoinbaseにカストディを依頼しているようだ。

日本では2020年5月に施行された改正資金決済法によって、暗号資産取引事業者が、暗号資産カストディ業務を行えるようになっている。運用資金量が大きく、顧客に対する責任も重い機関投資家にとって、海のものとも山のものともまだわからない(と考えられている)暗号資産を扱うのは、きわめてリスクが大きい。

だからこそ、暗号資産取引所がカストディ業務まで引き受けてくれるということはリスクヘッジにつながるのだ。これから資金を預けようという企業に東証上場というブランドがあれば、ますます魅力的にみえることだろう。暗号資産取引所としての上場は、機関投資家への大きなアピールとなり事業拡大につながるのだ。

株式上場に関しては、当然のことながら関係当局の承認を前提とする。そのためミクシィは、「上場の予定時期、市場等については未定かつ株式上場の準備過程における検討の結果次第では、同社の株式上場は中止するという結論に至る可能性もある」としている。

まとめ

・暗号資産ETFの登場により、機関投資家の資金流入が見込めるようになった

・国内で暗号資産ETFは未承認だが事業の発展のため資金が必要

・上場で経営の透明性を示し市場からの信頼を獲得したい


用語集

暗号資産取引所……オンライン上で暗号資産の売買や交換を行うプラットフォームのこと。日本では運営に金融庁に登録義務がある

NASDAQ:全米証券業協会が主催する世界初の電子株式取引所。ハイテク企業やIT関連企業の割合が高くWeb3.0関連事業者も多い

ウォレット:暗号資産を保管している場所のこと。暗号資産取引においては何らかのウォレットを開設しておく必要がある

ファンダメンタルズ:国家や企業の経済状況を示すために作る指標のこと。個々の経済状況によって分析手法は異なる

カウンターパーティーリスク:取引相手の信用リスクが低く、契約不履行による損失を被る可能性のこと


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