暗号資産

bitFlyerがFTX Japanを買収した目的とは

2024/09/29Iolite 編集部
SHARE
  • sns-x-icon
  • sns-facebook-icon
  • sns-line-icon
bitFlyerがFTX Japanを買収した目的とは

FTX Japanは今後カストディ業務に専念

日本の暗号資産取引所大手であるbitFlyerが、経営破綻をしたFTXトレーディングの日本法人であるFTX Japanの買収を発表した。bitFlyerホールディングスは、FTX Japanの株式を100%取得しており、FTX Japanは以後、bitFlyerの完全子会社となる。

FTXは、2023年11月に、財務の健全性に疑問があるという報道が流れ、顧客がパニック、取り付け騒ぎにまで発展した。同社は沈静化を図るもわずか10日余りで資金繰りが破綻し、破産したという経緯がある。その負債総額は日本円で1兆4,000億円から、最大7兆円にも及ぶとみられており、その規模の大きさから、今後米国議会で暗号市産業界全体への規制をめぐる議論が加速するとみられている。

当然のことながら、FTX Japanも米国破産裁判所の訴訟対象となっているため、この完全子会社化の手続きには、米国破産裁判所による承認が必要となる。詳細は明かされていないものの、今回のbitFlyerの買収金額は、数十億円規模と報道されている。なぜ、このような危うい状態の企業をbitFlyerは買収したのだろうか。本件について、bitFlyer Holdings代表取締役CEOの加納裕三氏は公式Xで以下のように述べている。

「日本でも近い将来、機関投資家が暗号資産をポートフォリオに組み入れる時代がくると考えています。bitFlyerは創業から続く強固なセキュリティを強みにクリプトカストディ事業を新たなコア事業として展開する想定です。当社だからこそ提供できる新たなサービスにご期待ください」

ここでも話題の中心となるのは、機関投資家向けのカストディ業務であり、bitFlyerはその先行投資として数十億円を投じたということであろう。

暗号資産業界において、カストディ業務を行う業者のことをカストディアンと呼ぶ。このカストディアンが、今後暗号資産業界のあらたな集金装置となるであろうことは先にも説明した。そこで本稿では、なぜカストディアンに機関投資家はここまで資金を投入しているのかを解説しようと思う。

カストディアンの今後業界のトレンドに

特徴

●ユーザーのウォレットや秘密鍵を預かる

●暗号資産をの売買を代行する

●日本では金融庁監督下

日本のカストディアンはカストディアンの今後業界のトレンドに

カストディアンが行う業務のうち、主となるものは、ずばりユーザーの「秘密鍵」の保管と管理である。通常、私たちが暗号資産に触れる時は秘密鍵がふくまれるウォレットのデータは誰にもみせることはないし、誰かに預けるというようなこともしない。ブロックチェーンにおける秘密鍵が第三者に流出するということがどれほど重大な問題を引き起こすかを知っているからだ。

現実に、暗号資産の流出事件が起きた場合は、その多くが、ブロックチェーンの暗号が解読されたわけではなく、何らかの手段で秘密鍵が流出したことによって起こっている。

秘密鍵の存在は、暗号資産の安全性を担保する上で、文字通りカギとなるパーツなのだが、第三者から資金を預かって暗号資産の運用を行う機関投資家にとってみれば、秘密鍵を持っていることは資産の安全な運用における最大のリスクともなりえるのだ。だからこそ、機関投資家は、秘密鍵の保管・管理を専門家であるカストディアンに任せたいと考えている。

日本の改正資金決済法では、暗号資産そのものの売買や交換は行わずカストディ業務だけを行う企業も、金融庁の監督下で、各種義務をはたすことが課せられている。諸外国のカストディアンよりも厳しい基準で運用されており、機関投資家も安心して、秘密鍵を預けることができるとみられている。

日本では、暗号資産取引所が、そのままカストディ業務を行う場合が多い。この場合、暗号資産を取引所で購入し、そのままウォレットも預けることができるため、利便性が高い。しかし、万が一取引所が破綻した場合、FTXトレーディングの例のように資産を失う恐れもある。

bitFlyerがあえてFTX Japanを買収し、カストディ業務に専念させようとした狙いは、そこにあると考えられる。機関投資家が自身で秘密鍵やウォレットを管理する必要はなく、かといって暗号資産取引所によるカストディのような経営破綻時に資金をロストするリスクもない、「第三者機関によるカストディサービス」はこれから本邦における暗号資産カストディアンの形として定着していくと予想される。

まとめ

・FTX Japanは今後カストディ業務に専念する
・日本のカストディアンは金融庁監督下なので信用度が高い
・今後、日本の暗号資産業界でカストディ業務がトレンドとなる


用語集

bitFlyer: 株式会社bitFlyerが運営している、日本の暗号資産

取引所: 一般社団法人日本ブロックチェーン協会の主幹企業でもある

FTXトレーディング: 2022年11月11日暗号資産業界で最大規模の経営破綻を起こした取引所。杜撰な経営が明るみに出ておりこれから数多くの訴訟を抱えている

FTX Japan: 2017年9月に金融庁(関東財務局)より、暗号資産交換事業者として第一号登録を受けた取引所であるQuoineが前身。2022年にFTXトレーディングにより買収されて現在の社名となる。現在、FTXトレーディングの破綻を受け、顧客への資産返還業務を遂行中


関連記事

【NEWS】bitFlyerがFTX Japanを買収 カストディ及び暗号資産現物ETFの提供見据える

【NEWS】bitFlyer、ハッシュパレットが発行するエルフトークン(ELF)のIEOを実施へ

SHARE
  • sns-x-icon
  • sns-facebook-icon
  • sns-line-icon
Side Banner
MAGAZINE
Iolite(アイオライト)Vol.11

Iolite(アイオライト)Vol.11

2025年1月号2024年11月28日発売

Interview Iolite FACE vol.11 SHIFT AI・ 木内翔大、デジライズ・茶圓将裕 PHOTO & INTERVIEW 中村獅童 特集「Unlocking the Future AI時代の到来」「期待と懸念が交差し混沌極まる石破内閣 日本のWeb3.0は今後どうなるのか? 」「暗号資産取引に必要な 税金の知識を学ぶ!基礎知識や今からでも使えるテクニックを解説」 Interview :Bybit ベン・チョウ(Ben Zhou)、マネックスグループ株式会社 ゼロ室 室長/マネックスクリプトバンク 万代惇史・浅見浩志、カオーリア会計事務所代表 現役税理士・藤本剛平 連載 Tech and Future 佐々木俊尚…等

MAGAZINE

Iolite(アイオライト)Vol.11

2025年1月号2024年11月28日発売
Interview Iolite FACE vol.11 SHIFT AI・ 木内翔大、デジライズ・茶圓将裕 PHOTO & INTERVIEW 中村獅童 特集「Unlocking the Future AI時代の到来」「期待と懸念が交差し混沌極まる石破内閣 日本のWeb3.0は今後どうなるのか? 」「暗号資産取引に必要な 税金の知識を学ぶ!基礎知識や今からでも使えるテクニックを解説」 Interview :Bybit ベン・チョウ(Ben Zhou)、マネックスグループ株式会社 ゼロ室 室長/マネックスクリプトバンク 万代惇史・浅見浩志、カオーリア会計事務所代表 現役税理士・藤本剛平 連載 Tech and Future 佐々木俊尚…等