What's CALIVERSE
ロッテグループの一員であるCALIVERSE社が構築している次世代メタバース。非常に精巧なハイパーリアルグラフィックと実写とのライブ融合技術やAI技術を備え、ショッピングやエンターテインメントなどの多くの領域でまったくあたらしい体験を提供する。パソコンのみならずVR、3DTV、モバイルを通じてもサービスを展開予定。
たしかな技術力に裏打ちされたCALIVERSEによって、「メタバース」という言葉の印象は大きく塗り替えられる。
──このインタビューの前に、CALIVERSE(カリバース)の実機(パソコン画面)で体験をさせてもらったのですが、何よりもそのグラフィックのクオリティに驚愕しました。「メタバース」という用語は今ではバズワードのようになっていて、その言葉から連想されるような期待感に及ばないプロダクトが多いと感じていたのですが、CALIVERSEはその先入観を打ち砕いてくれるものだと感じています。
キム・ドンギュ(以下、キム): ありがとうございます。メタバースというのはそもそもmeta(超越)とuniverse(世界)を組み合わせた造語です。なので、今まであったものではなく、それを超越した何かがないといけません。
これまで”メタバース”と呼ばれるサービスが数多くリリースされていますが、それらのなかで話題になったものの多くは、『マインクラフト』のようにブロックを組み合わせて作り上げる3D空間となっています。このようなアプローチはユーザーにとっては親しみやすいものであり、私もリスペクトしていますが、表現できる範囲には限界があります。
21世紀のコンテンツとしてはやはり物足りないですし、それをショッピングやエンターテインメントに活用するというのも難しいでしょう。CALIVERSEは、ハイクオリティなグラフィックを備え、しかもそこに実写をリアルタイムでレンダリング(仮想空間に映し出すこと)するというチャレンジをしています。
ーまさにリアルを超越しようというチャレンジですね。
キム: universe(世界)という言葉も重要です。今、世に出ている”メタバース”の多くは数十人ほどが参加するだけで処理や描画の問題が起きるため、サーバーをわけてしまっています。しかし、数十人しか参加できないものは”世界”とは呼べませんよね。一方、CALIVERSEは1つのサーバーに2,000人程が参加できるようになっています。
──では、実際にCALIVERSE内でユーザーが得られる体験についてもう少し詳しく教えてください。「ブランドショップなどがメタバース上に出店して、ユーザーがメタバース上でショッピングをする」といった話は、以前から「メタバースによって訪れる未来」の一例として紹介されてきましたし、そのような取り組みをしているメタバースもいくつか存在します。それらと比べて、CALIVERSEにはどのような違いがあるのでしょうか?
キム: ショッピングをする時に1番大切なことは、当たり前ですが、そのモノをしっかりとみることですよね。そのためには、リアルにみるのと同じレベルで、仮想空間内でも商品をみられる必要があります。
実機体験をしていただければわかる通り、CALIVERSEのグラフィックは非常にリアリティがあり、もちろん商品についても現実と変わらないモノを生成できます。CALIVERSEでは、KAIST(韓国科学技術院。韓国のMITと呼ばれる高等教育機関)と共同で、デジタルツイン作成ツールも開発しました。
デジタルツインとは、現実空間の物理的資産などのデータを収集して、仮想空間上で再現する技術です。このツールを使えば、スマートフォンで商品をスキャンするだけで、わずか3分ほどでそれをCALIVERSE上に再現できるんです。つまり、リアルと遜色ないグラフィックの仮想空間のなかで、リアルと遜色ないクオリティの商品を見てショッピングを楽しめるということです。
──実機で音楽ライブ体験もさせてもらいました。仮想空間内での音楽ライブも「メタバースによって訪れる未来」の1つとしてこれまで語られてきましたが、実際にメタバース内のライブに行ってみると「数十人が集まっているだけのミニステージしかない」といったケースも少なくありませんでした。しかし、CALIVERSEは、間違いなくリアルなライブ感を味わえるものになっていますね。
キム: 最近では音楽ライブの配信も増えていますが、それでもアーティストのファンはライブへと足を運びます。それは、アーティスト本人を目の前にして音楽を体験したいという思いや、同じアーティストを愛するファン同士の熱気と連帯感を味わいたいという思いがあるからです。CALIVERSEでは、そういうライブ体験を仮想空間でも実現したかったんです。
しかもCALIVERSEは、アーティストの実写映像をメタバース空間でリアルタイムに映し出す独自の技術も持っています。たとえばアーティストが自宅でライブをして、それをCALIVERSE内の巨大コンサート会場にリアルタイムで映し出すというようなこともできます。
──今までのメタバース内の音楽ライブでは、アーティストの姿がデフォルメされたアバターになっているというケースが多くて、それはそれで楽しいものですが、やはり実写をみたいという方が多いと思いますし、それこそがメタバースで実現してほしい体験だと思います!音楽ライブといえば、CALIVERSEは世界的なEDMイベントである「Tomorrowland」と独占契約を結んでいますね。
キム: Tomorrowlandは毎年約40万人が集まる世界最大のEDMイベントで、このコラボレーションによって、次世代の「メタバースフェスティバル」を実現する予定です。メタバース内での音楽ライブは、これまでにはないあらたな体験をユーザーに届けられるはずです。
たとえばTomorrowlandには毎回十数個のステージがあり、毎時間あらたなアーティストが登場してパフォーマンスをします。なので、チケットを購入して参加したとしても全部はみられないのです。また、そもそもチケットが人気すぎて購入できないという方や、開催地に行けないという方もいます。しかしメタバースのなかであれば、それらの問題が解決できるでしょう。
──家にいながら、イベント会場を自由に移動してライブを楽しむという体験ができるわけですね。ショッピングや音楽ライブ以外にはどのようなコンテンツ・体験があるのでしょうか?
キム :CALIVERSE独自の仕組みとして、User Generated Ques(t UGQ)というものを用意しています。これは、ユーザーがCALIVERSEのなかで自由にストーリーを作り、キャラクターを配置し、キャラクターごとのセリフを設定するなどして、クエストを作れるという仕組みです。
──面白そうですね!ロマンスやサスペンス、あるいは何かを推理するようなクエストなど、ユーザーの発想次第でいろいろなコンテンツが生まれそうです。
キム: 3Dコンテンツを作るのは難しいのですが、CALIVERSEでは誰でも簡単にウェブサイトでそれらを生成できる仕組みを用意しています。物語を作るのが得意なユーザーはゲームのクエストのようなストーリーを作り、デザインが得意なユーザーは物語を演じるキャラクターを作れます。さらにAIをキャラクターに入れ込んで、そのキャラクターならではのセリフをいわせる、といったことも可能です。
ほかにも空間内にものを自由に配置できるホームエディット機能を使って、魅力的な空間を作り上げるという楽しみ方もあります。しかも、これらによってクエストを生成したユーザーには、その対価として報酬が与えられる「Creative to Earn」も用意しています。
──ブロックチェーンゲーム業界でよく使われる「Play to Earn(ゲームをプレイして暗号資産を稼ぐこと)」を転用した仕組みですね。
キム: ほかにも、CALIVERSEの強みとしては、ロッテグループの強力な後押しを受けている点や、現実の企業とも数多く提携している点があげられます。
メタバース内にロッテハイマート(韓国最大の家電量販チェーン)やセブンイレブン(※韓国ではロッテグループ傘下のコリアセブンがセブンイレブンを運営している)などの店舗が実際に出店されていますし、ほかにもMCMやLVMHグループのジバンシイビューティー、MAKE UP FOREVER、ロクシタンなどのブランドもあります。
さらに、ブロックチェーンビジネスを成功させるためにArbitrum(イーサリアムのL2※ソリューション)や楽天ウォレットといったWeb3.0プロジェクトとのパートナーシップも締結しています。
──では最後に、今後の意気込みを教えて下さい。
キム: この数年間、私は多くのWeb3.0関連のイベントに参加していますが、どうしてもそういうイベントでは「チェーンの処理が早いです、セキュリティがこんなに強固です、拡張性があります」といった話が多くなります。
もちろんそれらも重要なことですが、一般的なユーザーが驚くような、そして感動するようなユースケースを提示することができていないとも感じてきました。だからこそ、CALIVERSEがそれを提示するんだという心意気で取り組んでいますし、実際に体験することで多くの方に魅力を感じていただけると思います。
※L2:レイヤー2。基礎的なネットワーク(L1)上に構築された別のネットワーク。L1の処理速度に負荷をかけずにトランザ36│Iolite Vol.10│2024.11 クション(データのやりとり)を処理できる。
Caliverse Play Report 2024 August.28 POINT 1.
UE5を採用した圧倒的なグラフィック
最新のゲームエンジンであるUnreal Engine 5を利用して描かれるグラフィックは、実写と見まごうかのレベル。ただ町を歩いているだけで発見にあふれている。写真を取り込むだけで3Dモデル化が簡単に行える技術も搭載されるとのことだ。
POINT 2.
Creative to Earnで世界を拡張する
CALIVERSEでは、運営だけでなく、ユーザーもイベントや空間を、企画し作っていける設計となっている。ユーザ同士で協力し、世界を拡張していく楽しみを味わえる上、世界の拡張に貢献した人には報酬も用意されている。
POINT 3.
すでに世界的な企業が参入を発表
すでに世界的な企業が参入を発表ロッテグループの支援もあり、CALIVERSEではすでに、誰もが知っている有名店や有名ブランドの出店が続々決まっている。あなたがCALIVERSE内で作ったデザインが、有名ブランドと肩を並べて販売されるなんて未来も来るかもしれない。
インタビューの前にCALIVERSEを実機(パソコン画面)で体験したが、「間違いなくこれまで体験したことがないもの」であり、「私たちがメタバースという言葉に期待した何かを実現してくれるかもしれない」というのが、率直な感想である。
実機体験では、CALIVERSEの音楽ライブをみたのだが、裸眼でも3Dの圧倒的な臨場感を味わえるものとなっていた(3Dレンズをかけてみるような映像を裸眼でみられるのだが、数千円程度の特殊なシートをディスプレイに貼るだけで、それを実現しているらしい)。
正直なところ、自分の好きなアーティストのライブがCALIVERSEで実施されることがあれば、現地に行くよりもCALIVERSEで体験することを選んでしまうかもしれない、と感じるほどの驚異的な体験となった。
また、CALIVERSE社がロッテグループの強力な支援を受けているという点も見逃せない。このような壮大で前代未聞のチャレンジが本当に実現するのか、ということを考えた時に、リアルな世界的企業がバックグラウンドに存在することは、信頼性という面でも経済的な面でも、また協業態勢を構築したい企業たちとの関係を築くという面でも、大きなメリットであると考えられるからだ。
残念なことにWeb3.0業界には、誇大広告とも呼ぶべき過剰なプロモーションを行い、トークン発行による資金調達に成功することだけが目的になっているようなプロジェクトも散見する。「メタバース」という単語は単なるマーケティング用語として使われ、最新のゲームなどと比べてはるかに劣っているグラフィックの3D空間をメタバースと称するケースも多い。ユーザーの期待したようなプロダクトはなかなか生まれず、「メタバース」という言葉への期待感は失われつつあるのが現実である。
しかし、CALIVERSEの体験はその失望感を十分に打ち消してくれた。インタビュー終了後、キム氏から「文字でたくさん説明するよりも、映像をみてもらい、実際に体験していただければ絶対に魅力が伝わる」といわれたが、まさにその通りだろう。言葉を尽くさなくても、実際に体験してみればCALIVERSEが「これまでとは違う」ことがきっと伝わるはずだ。
CALIVERSEのホームページからクライアントをダウンロードすれば、(ゲーミングPCレベルのスペックは必要になるものの)自宅でもこの”超越した世界”は体験可能だ。興味を持った読者の方には、ぜひこのあたらしい体験の喜びを、自身でも味わっていただきたい。
https://caliverse.io/en
Profile ◉キム・ドンギュ(Kim Dong-Kyu)
CALIVERSE Inc CEO
韓国のゲーム会社NCSOFTでの勤務後、日本のゲーム会社SEGAの韓国取締役までを10年以上務め、その後現CALIVERSE社を設立し、2021年にロッテイノベートとM&A。同社ではKT、LGU+、SONY PlayStationなどの主要プラットフォームでのバーチャルコンサートやインタラクティブドラマなど、多くの没入型VR体験を生み出した。
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