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日本で注力する〝四つ角〟アバランチが見据える今後の戦略に迫る ー Ava Labs Head of Japan 平田路依インタビュー

2024/09/29Iolite 編集部
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日本で注力する〝四つ角〟アバランチが見据える今後の戦略に迫る ー Ava Labs Head of Japan 平田路依インタビュー

成長著しいアバランチの日本での普及に向け見据える視点に迫る

What's Avalanche

米ブロックチェーン企業・Ava Labsが開発を手がける高速かつ低コストなトランザクションを可能とするレイヤー1ブロックチェーン。分散性にも優れており、世界的に著しい成長をみせている。現在、日本での展開にも力を入れており、大企業による採用事例なども増加している。

──ロイさんがWeb3.0領域に参入しようと思ったきっかけを教えてください。

平田ロイ(以下、ロイ):もともと僕はこの領域に入りたくて入ってきたわけではないんです。どちらかといえば、入らざるを得なくて入ったといった方がいいかもしれません。というのも、僕はもともとライフスタイルブランドやトラベルグッズに関するビジネスをやっていたのですが、新型コロナウイルスの影響を受けて状況が良くありませんでした。

そんな状況で、大学の親友から「ビットコインを買った方がいいんじゃないか」といわれたんです。ビットコインについては2017年頃からいろいろな話を聞いていましたが、個人的にはスキャムのように映っていました。しかし、大学の親友は「なぜフィアット(法定通貨)で給料を受けとろうとするんだ?」というわけです。

僕からしたら、新興途上国で通貨不安を抱えているのであればまだしも、先進国で暮らしていてビットコインを持つ理由の方が理解できませんでした。とはいえ、勉強もせずに批判をするのもおかしいと思い、ビットコインを買ったのが始まりです。

──勉強というのは具体的に何をしたのでしょうか?

ロイ:主にビットコインのホワイトペーパーを読み込みました。もともと英文やテクニカルな論文を読むことに抵抗がなかったというのもありますし、一種のブランディングに役立てたいという発想もありましたね。もしかしたら将来クリプト領域でビジネスをするかもしれないとも考え、当時流行っていたClubhouseで「ビットコイン論文を夜中に読む」という部屋を立ち上げました。

そこで驚いたのは、フォロワーもいない僕の立ち上げた部屋に夜中にも関わらず11名が集まったんです。次の日に同じ内容の配信を行った際には17名が集まりました。その時に「これはニーズがある」と感じ、Web3.0で何かをやろうと決心しました。

──ロイさんはAva LabsのHead of Japanとして活動されていますが、そもそもアバランチとはどこで出会ったのでしょうか?

ロイ:当時広くさまざまなブロックチェーンの勉強をしており、その過程でホワイトペーパーを読んだことがきっかけです。主要なブロックチェーンのホワイトペーパーは一通り読みましたが、そのなかでもアバランチは詳細までしっかりとビジョンが書かれていて、イノベーションについても考え込まれていました。

また、当時ClubhouseからTwitter(現X)に活動拠点を移した時に、たまたまアバランチに関して言及した投稿が伸びたんです。それは当時アバランチに関する情報発信をしている人がいなかったということもあるでしょう。そこからオプティマイズする形でアバランチに関する投稿が増えた結果、「アバランチのロイさん」という自分の顔が確立しました。それが現在の活動の原点ともいえます。

──そういった過去があり、Head of Japanとしてお声がかかったという形でしょうか?

ロイ:Head of Japanになりたいという想いは特段ありませんでしたが、主要なプロジェクトで働きたいという願望は持っていました。そんななかで、2022年に日本でアバランチの非公式コミュニティを立ち上げてほしいという声がアバランチファンの方からあがったんです。

アバランチはたしかに良いプロジェクトだけど、日本での活動は少ない。僕としてもアバランチはWeb3.0のキーポジションの一角であるという認識があり、そこに関するプレゼンスが日本にないというのは国益につながらないと思いました。

また、活動をするからには目標を掲げなければならないと思い、いずれこの非公式コミュニティがAva Labsやエコシステム、また全世界に認知されることを目指そうと決めました。「あわよくば声がかかれば」なんて考えもありましたが、そんな時に思いの外早く声がかかったんです。

ちょうどその頃、Ava Labsではリージョナルチームを立ち上げるという話がありました。最初は韓国と日本を含むアジアで展開するとなり、そこでAva Labsの初期メンバーの方から「Head of Japanにチャレンジしてみないか」と声をかけてもらったんです。その方はかなりハードワーカーで、時には無茶振りなんかもありましたが、僕はこれをチャンスだと捉えました。

ここで期待に応えることが、実績を持たない人がやるべきポイントなんだと感じたんです。そこで認めてもらい、選考などを通じて結果的に今のポジションにいるという形です。

日本の規制やニーズに応えることができる点が大きな強み盤面を読み覚悟を持って着実にアバランチを普及させていく

──Head of Japanの役割と実際に活動してみて感じた難しさを教えてください。

ロイ:最初僕に与えられたミッションは「アバランチを日本で普及させろ」でした。戦略やチームビルディングなどもすべて任され活動しています。今特に日本市場で注力しているのは、“オセロの四つ角”を押さえることです。具体的には、「決済」「コンテンツ」「メーカー」「ポイントサービス」の4つです。

そもそも、僕は日々の決済がブロックチェーンに乗らないということが、アバランチとは関係なくWeb3.0領域における1番の問題点だと考えています。これからWeb3.0を広げるためには、決済という壁を乗り越えなければいけません。そうでなければ、Web3.0は一部の人だけが使う領域になってしまいます。

次にコンテンツは、日本の強みとしてもともとアニメやマンガなどがありますしブロックチェーンとの相性も良いため柱として掲げています。

3つ目のメーカーは、日本のモノづくりを踏まえたものです。見落としがちですが、たとえばポケモンカードなどの市場があったとして、そこでのトークナイゼーションは仲介業者が行なっています。そうではなくて、メーカー自身がトークナイゼーションを行わない限り信用は創造されません。

そうしないとメーカーの意向に反して市場が左右されるなど不確実性が高まります。なので、まずはメーカーがメーカー自身の作ったものをトークナイゼーションするということが1番のポイントです。これがしっかりと形作られることで、最終的にコンテンツの普及にもつながっていくと考えています。

最後にポイントですが、日本には3兆円ものポイント市場があります。これだけポイントに対応して市場が大きいのは世界を探しても日本くらいでしょう。ポイ活なんかも日本独自のものですし、大きな強みの1つです。ここまであげてきた“オセロの四つ角”を押さえることが現在の僕の最優先事項となります。

一方で、難しさとしてはこの四つ角が複雑に絡みあっていることがあげられます。たとえばポイントサービスもコンテンツがなければユーザーはポイントを出しにくいですよね。また、コンテンツ自体もメーカーの許諾が必要ですし、メーカーも特別ブロックチェーンを活用した決済を導入する理由がありません。このように1つ何かをやろうとすると糸が複雑に絡みあってしまうため、これをどのように解いていくかという順序立てが非常に難しいです。

──この四つ角をどこから取るかというタイミングも難しいところですね。

ロイ:今の日本がどのような状況にあるかという盤面をしっかりと読み解く必要があります。時にはその角を取ることが悪手になってしまうこともあります。特に決済を押さえにいくのが1番重いのですが、もしここが取れてしまえば、ほかはきれいに解けるかなと考えています。ですので、この四つ角のなかでは特に決済に重点を置いて現在活動しています。

──ロイさんからみたアバランチが持つ魅力や強みをお聞かせください。

ロイ:魅力としては、ここまであげてきた日本や世界のニーズに応えることができるだけの技術力がすでにある点です。僕はいってしまえばアバランチを普及させる営業マンなわけですが、営業マンの視点ですとそのプロダクトが強いとわかると売るのが非常に楽なわけです。アバランチはもともと「世界のすべてのアセットをデジタル化する」という目標を掲げて生まれたインフラです。

世界のさまざまなインフラに対応できるのはほかにはない強みですよね。また、あらゆるレギュレーションに対応できるのも大きなポイントです。世界中のさまざまなアセットがオンチェーンに乗る際、それぞれの国によってレギュレーションが異なる点は当然気にすべきポイントです。

このように、性能の良さや日本のレギュレーションにも対応ができ、柔軟にニーズに応えていくことができるというのは、僕からみたアバランチの魅力であり強みです。

──アバランチを日本で普及させる上で障壁を感じる部分を教えてください。

ロイ:カルチャーの部分で強く感じます。というのも、日本の市場はファーストペンギンを嫌ったりリスクをとらない傾向にあります。もちろんリスクをとる方もいますが、この「リスクをとる方」とどうつながるかが、プロジェクトを動かす人間としては1番難しいポイントです。

僕たちもちゃんとアバランチを実装まで運んで挑戦してくれる人と組んでいきたいという思いがありますし、そういう人じゃないと物事が進みません。たとえば大企業も体質としてはリスクをとりたがらないです。しかし、なかにはリスクをとろうとするスーパーマンもいるんです。逆にいえば、そういった方とつながると、ブロックチェーンという目にみえないイノベーションをしっかり理解しようとしてくれて、社内リソースを割いてくれたりします。

また、アバランチ自体がまだどうしても日本のレギュレーションや環境に100%対応できているわけではないので、そこは課題として考えています。ここが問題だったので、すでに去年の10月から日本語のテックサポートも拡充し、日本のエンジニアを確保しています。

──過去のお話からロイさんは新規層へのアバランチの普及も重要視しつつ、「今使ってくれる人を大事にしたい」といった想いが強い印象を受けます。その理由をお聞かせください。

ロイ:まず、現在のWeb3.0領域は黎明期ということもあり、参入している方々はアーリーアダプターなわけです。つまり、リスクをとっているわけですね。特に日本でリスクをとることがいかに重いことなのかということを忘れてはいけませんし、その重さを受け止めるだけの覚悟を示す必要があると考えています。

僕のビジネスに対する哲学ともいえますが、リスクをとった方に対するリスペクトはしっかりと示すべきです。特にこの黎明期で、当たり前にユーザーが付くなんてことはありません。それだけリスクをとっている事業者、ユーザーがいるからこそ支えられて今があるということを忘れず発信し続けていくことが重要だと考えています。

──アバランチの今後の展望やロイさん自身の目標についてお聞かせください。

ロイ:とにかく多くの方々にアバランチを広めていくことが目標です。できることを着実に進めていき、さまざまなことを実現していきます。この実現という言葉も決して軽い言葉ではなく、どんなに泥くさくてもエコシステム一丸となって取り組んでいく覚悟です。日本においてはまず国益につながる部分を洗い出して、ブロックチェーンを使う意味を示していきたいと思います。

これはアバランチに限らずですが、今ある問題点をきれいに解決するソリューションとして、ブロックチェーンを提示することができるプロジェクトは支えていくべきだと考えています。そうすることで一般の人にもわかるコンテンツが生まれ、Web3.0、ブロックチェーンの普及につながります。

僕自身はWeb3.0のマスアダプションを急ぐつもりはなくて、その前にまずは多くの人の意識に変革が訪れる必要があると考えています。機が熟したタイミングで、1番需要のあるプロダクトを投じていくことが大事ですし、それを1番早くアバランチが出していければいいなと思います。


Profile

◉ 平田路依(Hirata Roi)

Ava Labs Head of Japan

メルボルン大学物理学科卒業。元プロゲーマー。eスポーツとライフスタイルの交差点でブランドを立ち上げ、クラウドファンディングを成功させる。2020年に暗号資産業界に参入。2022年までブロックチェーンOracle Chainlinkのアジア/日本地域公式アドボケイトを務める。2023年1月よりAvalancheの開発会社Ava Labsの日本代表に就任。


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