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ビットコイン投資戦略で見据えるあらたなビジネス ー サイモン・ゲロヴィッチ インタビュー

2024/09/29Iolite 編集部
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ビットコイン投資戦略で見据えるあらたなビジネス ー サイモン・ゲロヴィッチ インタビュー

ビットコインは長期的な成長可能性を持つ資産 5年後には1BTCあたり“100万ドル超え”を見込む

“日本版MicroStrategy”の誕生か——。

2024年4月、東京証券取引所スタンダード市場に上場するメタプラネットがビットコイン投資戦略を打ち出し大きな話題となった。

米国を拠点とするMicroStrategyといえば、ビジネスインテリジェンス(BI)における先駆者的存在として知られる。しかし、近年はビットコインを保有する代表的な企業として世間の認識も移り変わりつつあるだろう。現時点で保有するビットコインは226,500BTC(執筆時点)にのぼり、単一企業による保有量としては世界一となる。他社と比べてもその保有量は圧倒的であり、資産価値も2兆ドルに迫る。

そんなMicroStrategyと同様に、ビットコインの将来性を見据えた戦略に舵を切ったのがメタプラネットだ。直近でも資金調達を通じて、85億円相当のビットコインを購入する意向を示している。こうした姿勢から、メタプラネットに対して“日本版MicroStrategy”になりつつあるといった見方が徐々に広まりつつある。

上場企業としてビットコインの投資戦略に踏み切ったというのも日本において斬新に映っただろう。メタプラネットがビットコインへの投資戦略を発表した際の暗号資産市場における市況も考慮されてか、同社の株価も大幅に上昇。記事執筆時点での同社株価の年初来上昇率は500%を大きく超えている。まさにメタプラネットに対する期待、そしてビットコインに対する将来性が市場に好感視されている証左であるといえる。

今後のメタプラネットは、どのようにしてビットコインと歩んでいくのだろうか。編集部は今回、Web3.0業界の内外で注目を集めるメタプラネットを率いるサイモン・ゲロヴィッチ氏に話をうかがった。はたしてメタプラネットはどのような背景でビットコインに未来を託し、そして今後どのような戦略を進めていくのか迫る。

大きな方向転換は日本の経済環境に影響を受けたものビットコインへの投資という戦略的転換は先見性と拡張可能で革新的なアプローチを示す

ーメタプラネットは今年4月にビットコインの投資戦略について発表しましたが、どのような背景からこのような決定に至ったのでしょうか?

サイモン・ゲロヴィッチ(以下、サイモン):ビットコインスタンダード(ビットコイン標準)を採用する決定は、いくつかの要因がありましたが、主に日本の経済環境に影響を受けました。継続的な円の価値下落、日本の多額の政府債務、そして長期にわたる実質マイナス金利は、従来の資産を保持することに対して、持続不可能な金融環境を作り出していたためです。

その結果、当社、株式会社メタプラネットは、ビットコインを主権に依存しない有限資産として認識し、これらのマクロ経済的圧力に対するヘッジとして機能し得る長期的な成長可能性を持つ資産と判断しました。

私たちは、ビットコインを通貨の価値下落からバランスシートを保護する戦略的な準備資産と捉え、さらにそのグローバルなマネタイズと普及が進むことで、将来的に大きな利益をもたらす可能性があると見込んでいます。

ービットコインへの投資を発表して以降、株価も大幅に上昇したものと見受けられますが、構想段階で社内や株主からは反発などはあったのでしょうか?

サイモン:社内、また、株主からの反対はありませんでした。実際、今年6月に開催された臨時株主総会では、ビットコインに軸を移行させることに関して、株主から圧倒的な支持を得ました。

当社の取締役会は、以前のビジネスモデルの限界、特にホテル事業を拡大することの難しさを認識していました。ビットコインへの戦略的転換は、より先見性があり、拡張可能で革新的なアプローチを示しており、当社の長期的な目標に合致するものだったのです。マクロ経済リスクを十分に説明し、ビットコインの成長可能性を強調することで、この決定が株主価値を高め、企業を持続的な成長に向けた好位置に導くことを示すことができました。

ー価格だけをみればもっと早い段階で投資を行っていればより多くの利益を得ることができたともいえますが、ビットコインへの投資がこのタイミングになったのはなぜでしょうか?

サイモン:タイミングは常に重要な要素ですが、4月がメタプラネットにとってビットコインスタンダードを採用する適切な時期であると私たちは確信していました。私たちは、早急に投資を進めるのではなく、十分に準備された戦略的な転換を優先したのです。

ビットコインの長期的な価値提案は、短期的な価格変動に関わらず、依然として堅実です。私たちはビットコインを長期的な投資と捉えており、ある時点での価格がその長期的な可能性を損なうことはないと考えています。

ビットコインの保有量を継続的に増やしていく方針暗号資産市場や広範な資本市場の状況加味しつつ時間をかけて着実にビットコインを貯蓄していく

ー今後メタプラネットでは資金調達を行い、85億円相当のビットコインを購入するとのことですが、将来的にどれほどのビットコインを取得することを見込んでいるのでしょうか?

サイモン:私たちの目標は、企業財務戦略の一環として、ビットコインの保有量を継続的に増やしていくことです。現在、追加のビットコイン購入に向けた資金調達を行っておりますが、今後は市場の好条件に基づいてさらなる取得を見込んでいます。

将来的に取得するビットコインの正確な量は、ビットコイン市場及び広範な資本市場での機会次第です。私たちは、債務や株式による資金調達などの手段を活用し、この戦略を支えるために着実に時間をかけてビットコインを蓄積していく意向です。

ー現段階でメタプラネットはビットコインのみに投資を行っていますが、今後アルトコインに目を向ける可能性はあるのでしょうか?

サイモン:メタプラネットはビットコインオンリーの企業であり、それは今後も変わりません。私たちは、ビットコインこそがデジタル経済における最上の資産であり、ほかのデジタル資産にはない独自の特性と属性を備えていると信じています。

ビットコインの絶対的な希少性、分散型の性質、強力なセキュリティモデルは、ほかのデジタル資産とは根本的に異なり、ビットコインをこれまでに創造された最も信頼性の高い価値の保存手段、そして最も安全な通貨として位置付けています。ほかの資産には独自のユースケースがあるかもしれませんが、私たちはビットコインに強くコミットしており、アルトコインに分散投資する理由はないと考えています。

ーサイモンさんは将来的にビットコインがどれほどの価格をつけていると予想しますか?特に5年後、10年後の予測と、その根拠をお聞かせください。

サイモン:正確な数値を予測することは難しいですが、今後5年から10年でビットコインの価値が大幅に上昇すると強く信じています。5年後には、ビットコインが1BTCあたり100万ドルを超える可能性があると見込んでいます。

これは、いくつかの要因にもとづいています。ビットコインの供給量が固定されていること、機関投資家による採用の増加、価値の保存手段としての役割、そして法定通貨よりもハードアセットが好まれる広範なマクロ経済環境です。ビットコインが企業や政府にますます受け入れられていることも、この長期的な見通しを裏付けています。

ー先日にはSBI VCトレードとの提携も発表されましたが、今後もWeb3.0関連企業らと積極的に提携していくのでしょうか?提携を進めていくとしたらどのような分野の企業を見込んでいますか?

サイモン:私たちはビットコインのエコシステムに強く焦点をあてており、特に日本におけるビットコインの普及を促進するためのパートナーシップを積極的に模索していく計画です。そのため、私たちは「Bitcoin Magazine Japan」※の独占ライセンスを取得し、日本のビットコインコミュニティに向けた質の高いローカライズされたコンテンツを提供して関心をひきつけ、教育するためのプラットフォームを作ることを目指しています。

私たちは、ビットコインの普及を拡大するというビジョンを共有する企業との機会を常に積極的に模索しています。ビットコインエコシステム内のほかの企業や関係者の皆様に、革新を促進し、ビットコインをより広範な経済に統合するためのコラボレーションの機会について、私たちはぜひお声がけいただきたいと考えております。

※用語集Bitcoin Magazine Japan:Bitcoin Magazineは2012年に創刊したビットコインの専門メディア。Bitcoin Magazine Japanはその日本版になる予定。

ビットコインを最優先とする戦略を通じて株主価値を向上させることに焦点をあてるあらたなビジネス展開の基盤として活用し影響力拡大へ

ーメタプラネットとしての今後の展望や具体的な目標をお聞かせください。

サイモン:メタプラネットの未来は、ビットコインを最優先とする戦略を通じて株主価値を向上させることに焦点をあてています。私たちの目標は、メタプラネットを日本国内及び国際的における主要なビットコイン投資機関として確立し、ビットコインを金融準備資産としてだけでなく、あらたなビジネス展開の基盤として活用することです。

私たちは、ビットコインを中心とした多様なエコシステムを構築することを目指しており、メディア、コンサルティング、オプション戦略による収益創出などを含めた展開を計画しています。今後数年間で、私たちはビットコインの保有量を拡大し、あらたなパートナーシップを模索しながら、グローバルなビットコインコミュニティ内での影響力を拡大することに注力していきます。

▶メタプラネットのビットコイン戦略主な動き

メタプラネットの今後

  1. 市場の状況を踏まえビットコインの購入を継続的に行っていく予定
  2. ビットコインを最優先とする戦略で株主価値を向上させていく
  3. ビットコインの普及を見据えさまざまな企業と提携していく方針

メタプラネットホームページ

https://metaplanet.jp/a/

メタプラネット公式X

https://x.com/Metaplanet_JP


Profile

◉サイモン・ゲロヴィッチ(Simon Gerovich)

株式会社メタプラネットの代表取締役社長であり、同社の革新的なビットコイン投資戦略を主導している。2014年からデジタル資産エコシステムへの投資家として活動しており、伝統的な金融と最先端のイノベーションを結びつけるキャリアを築いてきた。

東京のゴールドマン・サックスで株式デリバティブトレーダーとしてスタートし、その後、アジアのバリューホテルセクターに特化した主要なホテルグループ、レッドプラネットホテルズを共同設立し、会長を務めた。ハーバード大学で応用数学の学位を取得しており、最高経営責任者のための世界的なリーダーシップ組織であるYPOの積極的なメンバーでもある。


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