日本本土のほぼ中心に位置し、南西から北東に向かって細長い形をしている石川県。冬の古都金沢を中心として日本の原風景を感じることができ、日本海の荒波で削られた奇岩や断崖が点在する能登、1,300年の歴史ある温泉で有名な加賀、そして日本三名山の1つで山村文化を持つ白山はあまりにも有名だ。
石川県は、安土桃山時代に前田利家が治め「加賀藩」となった。江戸時代には120万石の大都市となり、江戸末期には人口が日本4位となるほど発展していた。加賀藩は初代の利家以来、歴代藩主が文化政策を推進してきた。そのため全国有数の文化都市となった。
国指定伝統的工芸品は、輪島塗、金沢箔を始め10品目以上にのぼる。また、「茶道、華道をたしなむ人の割合」において全国1位となるなど、茶の湯文化が栄えている。
そんな石川県では、Web3.0技術を活用した取り組みが盛んだ。加賀藩の名前が残る加賀市では、「e-加賀市民証NFT」が日本発のパブリックチェーン「Japan Open Chain」上で発行されている。
加賀市は2023年、「Web3.0は『消滅可能性都市』を救えるか」という議題のもと、新テクノロジーを活用した地方創生に関する大規模なWeb3.0カンファレンスを開催した。地方都市のWeb3.0の活用において最先端を突き進んでいる。人口減少、都市消滅の危機に直面している加賀市は、Web3.0などの先端技術で現状を打破していくべく取り組んでいるのだ。
e-加賀市民証NFT
その取り組みの一環として立ち上げられたのが「e-加賀市民制度」だ。地域と多様に関わる関係人口の創出に向け始まったこの取り組みを通じて、加賀市はe-加賀市民を100万人規模まで増やしていく目標を掲げている。
令和5年デジタル田園都市構想推進交付金「デジタル実装タイプ」のマイナンバーカード利用横展開事例創出型の採択事業として、加賀市がNFTを活用した「e-加賀市民証NFT」はマイナバーカードを用いた公的個人認証によるWeb3.0ウォレット管理機能が付帯されている。
加賀市 web3課
また、加賀市はデジタル技術を活用したスマートシティ構想を掲げ、2022年に国家戦略特区の認定を受けている。これを受け2024年5月に発表されたのが、「加賀市web3課」だ。メタバース内でリモート起業相談が可能なあたらしいデジタル支援サービスで、デジタル市民証NFTとの連携も行う。関係者インタビューにおいて加賀市web3課の今後の展望等について触れているため、ぜひそちらも参照いただきたい。
伝統祭「あばれ祭」応援企画 NFT販売プロジェクト
このほか、石川県ではさまざまなWeb3.0に関連する取り組みがみられている。たとえば、石川県能登市で350年以上続く、日本でも有数の伝統ある祭として知られる「あばれ祭」の支援プロジェクトとして、能登高校書道部が制作した書道作品がNFTとして販売されている。
「復興」「希望」「祈願」の文字がデザインされたこのNFTは、全日本空輸(ANA)が運営する「ANA GranWhale NFT MarketPlace」で販売され、購入者には限定デザインの北陸製菓の揚あられ「ビーバー」や、2025年までの「ヨバレ」への参加権利が特典として提供される。収益は祭の運営費用や復興支援にあてられるそうだ。
珠洲市デジタル地域通貨「珠洲トチツーカ」
このほか石川県珠洲市では、北國銀行、興能信用金庫、Digital Platformerと共同でブロックチェーンを活用したデジタル地域通貨サービス「トチツーカ」が展開されている。
2023年10月よりポイントサービス「トチポ」が開始され、2024年4月には日本初の預金型ステーブルコイン「トチカ」の提供が始まった。トチポとトチカは密接に連携し、自治体と事業者がそれぞれ求めるニーズに対応する。石川県内のキャッシュレス環境の整備を象徴する事例であるといえるだろう。
金沢大学「ファン通貨」を活用した被災地復興支援
さらに、2024年3月からはSBI、九州電力、筑邦銀行による合弁会社「まちのわ」が、被災地復興支援「Anshin Project(あんしんプロジェクト)」に取り組むことを発表。金沢大学と共に「ファン通貨」を活用した被災地復興支援を行っている。
SBI、九州電力、筑邦銀行の3社による合弁会社「まちのわ」社が「ファントークン」を活用した被災地復興支援「Anshin Project」の取り組みを開始。ファン通貨は九電が運営する「支払情報管理システム」の名称だ。本プロジェクトでは事業再開、復興を目指す事業者と支援する法人や団体のマッチングを実施している。
このように、地方創生をWeb3.0技術で実現しようとしている石川県。関係人口が増加すれば国内有数の事例となり、人口減少に苦しむ地方都市にも明るい未来がみえてくる。
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