暗号資産

日本国内で暗号資産現物ETF承認はあるのか

2024/09/29Iolite 編集部
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日本国内で暗号資産現物ETF承認はあるのか

現物ETF承認によって投資商品として認知

ETF(Exchange Traded Funds)とは、証券取引所に上場されている投資信託のことだ。日経平均株価など特定の指数に連動するインデックス型と、そのような指数を持たないアクティブ型にわかれている。

金融に興味がある人にはあたり前のことだが、簡単に説明をすると、証券取引所が扱っている株券などの証券を、少数ずつセットにしたパッケージ商品と理解するとわかりやすい。証券取引所が選び抜いた複数銘柄に、一括で投資できるためリスクヘッジが行いやすく、投資の初期費用も安く済む。さらにインデックス型ならば、一社に投資するよりもボラティリティが小さく、安定するので、投資初心者に人気の金融商品だ。

今年1月、ビットコインの現物ETFを承認したとSECが発表した。SECは、2021年にビットコインの先物ETFについては承認していたものの、過去10年近くビットコインの現物ETFについては承認していなかった。

SECはこの理由について「価格操作のリスクがあること」などをあげていたわけだが、2023年、ビットコインで運用する未上場投資信託のETF転換をSECが拒否していることはおかしいとされた訴訟で、SECは敗訴した。もはやSECは暗号資産現物ETFを拒否し続けることはできなくなったのである。この4ヵ月後、堰を切るようにイーサリアムの現物ETFも承認された。

SEC委員長のゲーリー・ゲンスラー氏は、暗号資産の取引についてはまだ懐疑的であることを明言し、暗号資産に価値が結び付けられた商品には投資家は注意をするべきと釘を刺している。とはいえ、SECの承認が得られたことで、「投機商品」としてみられてきた暗号資産が、「投資商品」としての第一歩を踏み出したのは間違いないだろう。

今年は米国大統領選挙も行われるため、結果によってはSEC委員長の交代もあり得る。場合によっては、積極的に暗号資産ETFの法整備が進んでいく可能性もあるだろう。ちなみに、暗号資産否定派であったトランプ氏も今回の大統領選では、融和的な姿勢をとっていることを付け加えておく。

暗号資産ETFの特徴

●複数の暗号資産で構成されているものもある

●取引のルールは、証券取引所と証券会社のルールに従う

●証券取引所に上場されていることにより、取引の透明性と流動性が確保されている

日本では販売なしも世界的には承認の流れ

一方、日本では2024年8月現在、証券取引所での暗号資産ETFの取り扱いは一切なく、各証券会社が暗号資産ETFの上場を目指している様子もない。というのも、日本の投資信託法では、暗号資産を「特定資産」にふくんでいないからである。投資信託会社が暗号資産ETFを取り扱うには、まず投資信託法の改正が必要となる。

唯一、明るいニュースをあげれば、7月16日に日本の金融持株会社であるSBIホールディングスが、米国の運用会社大手フランクリン・テンプルトンと新会社を設立すると発表したことである。この新会社は、暗号資産を運用対象としたETFやデジタル証券の提供を目指すと発表された。しかし、現状はそれ以上の情報はない。

とはいえ、アジアを見渡してみても、香港の取引所でビットコインとイーサリアムのETFの取引が開始されており、豪州の証券取引所も今年中にはビットコインの現物ETFを承認するという報道も出てきている。日本も、世界的な流れに追随していくのではないだろうか。

暗号資産はボラティリティが大きすぎるため、どうしても投資家目線でみると、手を出しにくいと思われてきた。だが、ETFにしてくれるならば、リスクを分散しながら投資をしていくことができる。そのためあたらしい投資先として、Web3.0領域の魅力的なベンチャー事業者に対し、機関投資家による大きな資金流入が増えるのではと期待されている。

ちなみに、次に暗号資産ETFが承認される銘柄はソラナ(SOL)になるというのが大方の予想だ。SOLは第3世代ブロックチェーンといわれ、これまでの暗号資産より取引の承認スピードが早く、イーサリアムよりガス代も安い。ブロックチェーン同士を連携できるインターオペラビリティ機能もデフォルトで搭載されている。

投資信託法を整理しないことには税率も定められないため、金融庁はまだ暗号資産ETF承認には消極的とみられている。しかし、近年の日本や世界の動きをみると、思ったより早く日本での暗号資産ETFを認可してほしいと期待されているのは間違いない。

まとめ

・米証券取引委員会(SEC)が、2024年1月10日にビットコイン現物ETFを承認

・日本では投資信託法上の「特定資産」に暗号資産はふくまれていないため、導入できない

・税制の問題もあり、金融庁はまだ法改正に消極的


用語集

ボラティリティ:資産価格の変動率を表す指標。この値が大きいとハイリスク・ハイリターンな商品とされる

現物ETF:金融商品の現物に投資するETF。投資対象の現物価格に連動する

先物ETF:金融商品の先物価格に連動するETF。先物取引に投資を行うETFも指す

ソラナ(SOL):2017年にAnatoly Yakovenkoが発表しGreg Fitzgeraldが実装した暗号資産。イーサリアムの約3,600倍ものデータ処理速度がある。

ガス代:ブロックチェーン上の取引や、スマートコントラクトと呼ばれるプログラムを実行する際に支払う手数料のこと


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