AIメタバース

テクノロジーで昇華する次世代型ソーシャルメディア

2024/09/29Iolite 編集部
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テクノロジーで昇華する次世代型ソーシャルメディア

ソーシャルメディアの進化とその背景

従来のソーシャルメディアは、主に広告収益に依存するビジネスモデルを採用した。このモデルでは、ユニークユーザー数という意味でのマスへの発信力、そして、ユーザーのデータが収集・解析され、精度の高いターゲティング広告の提供によって広告主にとっても魅力的なプラットフォームを提供することで収益をあげる。

一方で、個人情報の漏洩やプライバシー侵害の問題が頻発し、ユーザーの信頼が揺らぐ問題も生まれてきた。また、アルゴリズムによる情報のフィルタリングにより、情報の偏向やエコーチェンバー現象※1が生じることも指摘されている。こうした課題に対処するため、次世代テクノロジーを活用したソーシャルメディアの進化が期待されている。

次世代型ソーシャルメディアは、AI、ブロックチェーン、メタバースなどの先端技術を活用し、より分散化された透明性の高いプラットフォームを目指すだろう。これにより、ユーザーのプライバシーが保護され、公正な情報流通が促進されることへの期待が広がる。

次世代型ソーシャルメディアの重要性

単に技術的な進歩にとどまらないかもしれない。社会全体における情報のあり方、コミュニケーションの形態、経済活動の仕組みが根本的に変わる可能性すらあると考えられる。ここでは特に、情報の透明性と信頼性、プライバシーの保護、エコシステムの再構築という3つの側面からその重要性を考察しよう。

①.情報の透明性と信頼性 ブロックチェーン技術を活用したソーシャルメディアの提供が叶えば、情報の透明性と信頼性を高められる。ブロックチェーンは、取引履歴を改ざんできない形で記録する分散型台帳技術であり、これを情報の流通に応用することで、フェイクニュースや誤情報の拡散を抑制することが可能だ。また、情報の出所や真偽を容易に確認できるため、技術と構造によってユーザーは安心して情報を受け取ることができるようになる。

②.プライバシーの保護 従来のソーシャルメディアでは、ユーザーデータの収集と利用が問題視されてきたが、次世代型ソーシャルメディアでは、ユーザーが自身のデータをよりコントロールできるようになる可能性がある。たとえば、ブロックチェーン技術を用いることで、ユーザーデータを分散管理し、プライバシーを保護することが可能だ。これにより、ユーザーは自身の情報がどのように使われているかを把握し、必要に応じて提供の有無さえ選択可能となる。

③.エコシステムの再構築 次世代型ソーシャルメディアは、あたらしい経済モデルの創出にも寄与するだろう。従来の広告モデルから脱却し、トークンエコノミーを導入することで、ユーザーの活動や貢献に対して直接的な報酬を提供することが可能になってくる。これにより、ユーザーは自身のコンテンツやインタラクション※2に対して対価を得ることができ、より積極的にプラットフォームに参加する動機となり得る。

POINT 01

20代の2人に1人はブラウザ検索とSNS検索を併用

▶出典:博報堂生活総研 ヴァリューズ スマホログデータ

博報堂生活総研の調査によれば、20代の多くがブラウザ検索とSNSを並行して利用していることがわかった。特に20 〜24歳のユーザーにおいては、約50%以上がブラウザ検索と同時にX(旧Twitter)を利用、次点でInstagramを活用している。

国の経済を支える年齢層は、その国の労働力や消費力に依存するものの、通常は25歳から54歳の範囲が最も重要な年齢層とされている。現在、最も多くSNSを活用している世代が、今後の経済を支えるコアとなった場合に、SNSの重要度はさらにあがることは明らかだ。

POINT 02

SNSへの不安の多くは個人情報に関するもの。特にBLOG利用者の不安が高い!

▶出典:総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年)

個人情報に関する不安について、全体・SNSユーザー・ブログユーザー・Xユーザーの間での比較がされており、デジタル空間で感じる不安要素が取り上げられている。全体の80.2%が「自分の個人情報が漏れること」に不安を感じ、これはすべてのグループで最も高い不安項目となっていた。

デジタルプラットフォームにおける個人情報の管理やプライバシーの保護は、多くのユーザーにとって重要な関心事項である。これらの課題はSNSと次世代技術の融合によって拡大する面と解決されていく面の二極化することが予想されるため、プラットフォーム側の対策も引き続き重要な要素となるだろう。

次世代型ソーシャルメディアの展望

次世代型ソーシャルメディアは、これからのデジタル社会において重要な役割をはたす。AIによるコンテンツ生成やカスタマイズ、ブロックチェーンによるデータの透明性とセキュリティ、メタバース空間によるあたらしいコミュニケーションの形態など、これらの技術が融合することで、ユーザーにとってより安全で信頼性の高いプラットフォームが提供されそうだ。

本特集では、次世代型ソーシャルメディアの各側面について詳しく掘りさげ、具体的な事例や技術の詳細を紹介する。これにより、あたらしいテクノロジーの可能性に触れてもらおう。


用語集

エコーチェンバー現象:SNSなど、自分と似た価値観や考え方のユーザーが集まるコミュニティにおいては、自分の意見と似た意見ばかりが返ってくる現象のこと

インタラクション:ユーザーが操作を行った時にシステムや機器が応じて反応を返すこと。機能を通し、人と機器をつなぐという概念全般を指す。


AIによるソーシャルメディアの進化

AIの活用はプラットフォーマーからユーザーへ

AIの活用方法で明暗はわかれる

AIはソーシャルメディアにも活用されている。たとえばInstagramはAIを活用してユーザー体験をより良いものにし、スパムをフィルタリングして、ユーザーに沿った広告を提供することでサービスの向上を図ってきた。このように、これまではプラットフォーム側が主にAIを活用してきたが、現在は企業のSNS運用をAIが代わりに行う事例、AIを活用した事例が増えてきている。

多くの企業がAIを活用して、ソーシャルメディアを盛り上げる時代となりつつあるようだ。AIは機械学習で得た膨大なデータに基づき正確な予測を行うことができる。今や大規模言語モデル(LLM)をベースにした生成AIをあたり前のように活用する時代になり、あらゆることについて正確で適切な予測を行うことができるようになった。

AIを利用してターゲット選定の解像度をあげて、広告キャンペーンを実施したり、取りあげるべき最適なコンテンツをユーザーに提供できるようになったのだ。

しかし、AIに「◯◯に関する投稿を書いて」と指示を出し、AIが生成した文章をそのままソーシャルメディアに投稿するだけでは、便利な反面、企業の独自性もなく、平坦な投稿になりがちでインプレッションは伸び悩む。AIに投稿文を書かせる際には、具体的な情報や文脈を提供する必要がある。

たとえば、提供したいニュースや商品について、「この記事のなかでユーザーに最も印象的に残るフレーズや考え方を3つ抽出して、それをもとに文章を書いて」と具体的な指示を出せば、最適解に近いコンテンツをアウトプットしてくれるのでそのまま投稿に活用できる。このように、AIを使って記事や文章のなかから印象的で記憶に残りやすい表現、アイデアなどを抽出することを「サウンドバイト」と呼ぶ。

AIでデータ分析の解像度を高める

XやInstagramなどのソーシャルメディアに外部のツールを使って投稿データ(閲覧数、いいね数、コメント数)を分析し、そのデータをAI搭載のアプリケーションに解析させることもできる。また、AIを使って分析したデータをグラフやヒートマップの形で出力し視覚化も可能だ。

これにより、数字の羅列ではわかりにくかった傾向や特徴の視認性があがり、より解像度の高い分析や、会議や企業に対するプレゼンテーションにも活用できるデータにまで昇華できる。ほかにも、投稿の文字数、絵文字の数、話題の関連性などの要素が、どのように投稿の効果に影響しているかをAIに分析させることができるようになる。その分析結果を軸に、より効果的な投稿をすることも可能だ。

さらにAIに現在の投稿内容を分析させ、まだ取りあげていないが潜在的に効果がありそうな、投稿を作成するアイデアを得て、新規フォロワーを獲得することが可能かもしれない。AIを単に「投稿を自動生成するツール」として使うだけでなく、データ分析やあたらしいアイデアの発見のために活用することで、ソーシャルメディアでの発信をより効果的に行うことができる。

そして、企業のソーシャルメディアにおけるAIの活用では、たとえばユーザーの商品に対する疑問に答えたり、ユーザーの投稿分析から自社商品のあたらしい使い方をも発見できるようになる。食品のアレンジレシピなどがイメージしやすいところだろう。ひいては、AIは商品開発にまで活用することができるという事になる。

▶引用:IDC 日本におけるAI支出の現状

アジア太平洋地域8カ国を対象に行われた調査では、AIへの支出に関して2027年には900億ドルを超すと予想される。調査対象外となった米州及びEMEAと比べると劣るが、そうしたなかでも、日本はAI市場の規模もIT市場の規模も対象8カ国のなかで最大。

「日本におけるAI支出は、2022年から2028年のCAGR(年平均成長率)で30%、2028年には2兆5,000億円を超える規模にまで成長する」との見方がある。2028年までのCAGR30%という伸びが予測されるのは、AIに関するエコシステムの拡大に加え、日本政府のAI活用を後押しする政策などが背景にあると考えられている。

AIの悪用とどう向き合うか

ソーシャルメディアとAIは非常に良い関係であるといえるが、一方で悪用される事によるさまざまな課題も存在する。たとえば選挙などでは対立候補のデマを、AIを使った投稿で自動的に流したり、詐欺行為にも利用されることがある。

「米証券取引委員会(SEC)のゲイリー・ゲンスラー委員長がビットコインを取り締まり始める」のようなデマ投稿を、ボットを使って無作為に投稿し広めた場合、デマとわかるまでにすでに暗号資産市場が反応する可能性さえある。ドナルド・トランプ前大統領をテーラー・スウィフト氏が支持しているかのようにみせるAI生成画像をソーシャルメディアにボットが投稿し、問題となったのは記憶にあたらしいところだ。

実業家イーロン・マスク氏は、AIが人類を滅亡させると、ことあるごとに主張しているが、事実AIが勝手に投稿を始めれば人類を間違った方向に導いたり、戦争をも引き起こす懸念まである。そのようなAIの悪用を阻止するため、マスク氏はAIの規制法案を作るべくロビー活動を活発化しており、XではAI投稿をパトロールするAIを作成中である。AIの悪用を阻止するための分析AIを開発しているのだ。

懸念すべきなのは、そのようなAIは企業のAIを活用した健全な広告宣伝活動にも影響を与える可能性があること。パトロールAIがこれは悪用していると判断すれば企業の広告宣伝活動は阻止され、アカウントは凍結されてしまうからだ。そのようなあらたな課題と規制のバランスを上手く取るためにも、AIの規制法案を作ることは急務といえる。

法案を作り出すことはコストがかかることなので当面は、ソーシャルメディアにおいてAIの活用は良いものと悪いもので混雑することが続くことが予想されるが、今後のイノベーションを阻害しない健全な規制には期待したい。


用語集:

サウンドバイト:「サウンドバイト」(soundbite)はもともと、メディアやニュースの文脈で使われる短い引用や発言のことを指す。AI領域では、AI技術を活用して生成された短い音声クリップや、要点を簡潔にまとめたフレーズのことを指すことがあり、これらは通常、音声認識、音声合成、自然言語処理(NLP)などの技術を組み合わせて作られる。


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