従来のソーシャルメディアは、主に広告収益に依存するビジネスモデルを採用した。このモデルでは、ユニークユーザー数という意味でのマスへの発信力、そして、ユーザーのデータが収集・解析され、精度の高いターゲティング広告の提供によって広告主にとっても魅力的なプラットフォームを提供することで収益をあげる。
一方で、個人情報の漏洩やプライバシー侵害の問題が頻発し、ユーザーの信頼が揺らぐ問題も生まれてきた。また、アルゴリズムによる情報のフィルタリングにより、情報の偏向やエコーチェンバー現象※1が生じることも指摘されている。こうした課題に対処するため、次世代テクノロジーを活用したソーシャルメディアの進化が期待されている。
次世代型ソーシャルメディアは、AI、ブロックチェーン、メタバースなどの先端技術を活用し、より分散化された透明性の高いプラットフォームを目指すだろう。これにより、ユーザーのプライバシーが保護され、公正な情報流通が促進されることへの期待が広がる。
次世代型ソーシャルメディアの重要性
単に技術的な進歩にとどまらないかもしれない。社会全体における情報のあり方、コミュニケーションの形態、経済活動の仕組みが根本的に変わる可能性すらあると考えられる。ここでは特に、情報の透明性と信頼性、プライバシーの保護、エコシステムの再構築という3つの側面からその重要性を考察しよう。
①.情報の透明性と信頼性 ブロックチェーン技術を活用したソーシャルメディアの提供が叶えば、情報の透明性と信頼性を高められる。ブロックチェーンは、取引履歴を改ざんできない形で記録する分散型台帳技術であり、これを情報の流通に応用することで、フェイクニュースや誤情報の拡散を抑制することが可能だ。また、情報の出所や真偽を容易に確認できるため、技術と構造によってユーザーは安心して情報を受け取ることができるようになる。
②.プライバシーの保護 従来のソーシャルメディアでは、ユーザーデータの収集と利用が問題視されてきたが、次世代型ソーシャルメディアでは、ユーザーが自身のデータをよりコントロールできるようになる可能性がある。たとえば、ブロックチェーン技術を用いることで、ユーザーデータを分散管理し、プライバシーを保護することが可能だ。これにより、ユーザーは自身の情報がどのように使われているかを把握し、必要に応じて提供の有無さえ選択可能となる。
③.エコシステムの再構築 次世代型ソーシャルメディアは、あたらしい経済モデルの創出にも寄与するだろう。従来の広告モデルから脱却し、トークンエコノミーを導入することで、ユーザーの活動や貢献に対して直接的な報酬を提供することが可能になってくる。これにより、ユーザーは自身のコンテンツやインタラクション※2に対して対価を得ることができ、より積極的にプラットフォームに参加する動機となり得る。
POINT 01
20代の2人に1人はブラウザ検索とSNS検索を併用

▶出典:博報堂生活総研 ヴァリューズ スマホログデータ
博報堂生活総研の調査によれば、20代の多くがブラウザ検索とSNSを並行して利用していることがわかった。特に20 〜24歳のユーザーにおいては、約50%以上がブラウザ検索と同時にX(旧Twitter)を利用、次点でInstagramを活用している。
国の経済を支える年齢層は、その国の労働力や消費力に依存するものの、通常は25歳から54歳の範囲が最も重要な年齢層とされている。現在、最も多くSNSを活用している世代が、今後の経済を支えるコアとなった場合に、SNSの重要度はさらにあがることは明らかだ。
POINT 02
SNSへの不安の多くは個人情報に関するもの。特にBLOG利用者の不安が高い!

▶出典:総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年)
個人情報に関する不安について、全体・SNSユーザー・ブログユーザー・Xユーザーの間での比較がされており、デジタル空間で感じる不安要素が取り上げられている。全体の80.2%が「自分の個人情報が漏れること」に不安を感じ、これはすべてのグループで最も高い不安項目となっていた。
デジタルプラットフォームにおける個人情報の管理やプライバシーの保護は、多くのユーザーにとって重要な関心事項である。これらの課題はSNSと次世代技術の融合によって拡大する面と解決されていく面の二極化することが予想されるため、プラットフォーム側の対策も引き続き重要な要素となるだろう。
次世代型ソーシャルメディアの展望
次世代型ソーシャルメディアは、これからのデジタル社会において重要な役割をはたす。AIによるコンテンツ生成やカスタマイズ、ブロックチェーンによるデータの透明性とセキュリティ、メタバース空間によるあたらしいコミュニケーションの形態など、これらの技術が融合することで、ユーザーにとってより安全で信頼性の高いプラットフォームが提供されそうだ。
本特集では、次世代型ソーシャルメディアの各側面について詳しく掘りさげ、具体的な事例や技術の詳細を紹介する。これにより、あたらしいテクノロジーの可能性に触れてもらおう。
用語集
エコーチェンバー現象:SNSなど、自分と似た価値観や考え方のユーザーが集まるコミュニティにおいては、自分の意見と似た意見ばかりが返ってくる現象のこと
インタラクション:ユーザーが操作を行った時にシステムや機器が応じて反応を返すこと。機能を通し、人と機器をつなぐという概念全般を指す。