2024年に入り、暗号資産市場では米国におけるビットコイン現物ETFの承認、またビットコイン(BTC)の半減期に伴い、相場は盛り上がりをみせた。加えて、米国ではイーサリアム(ETH)の現物ETFが正式に取引開始され、さらには暗号資産規制に関する議論も活発化している。こうした状況から、米国ではまさに今、暗号資産領域に過渡期が訪れているといえる。
そのような情勢下で、かねてより暗号資産市場において注目を集めているのが、11月に実施される米大統領選の行方だ。とりわけ、共和党候補のドナルド・トランプ元大統領の動向が2024年に入ってから暗号資産業界にポジティブな影響をもたらしている。
かつてトランプ氏はビットコインについて「詐欺のようなものだ」と一蹴し、“反暗号資産派”を代表する人物であった。しかし、そんな同氏は今、自らを“暗号資産大統領”と称するなど、暗号資産推進派へ華麗な転身をはたしている。なぜこの4年でこれほどまでにスタンスを転換させたのか。その背景には、SNSの存在が大きいとみられる。
トランプ氏は2021年1月に発生した議会襲撃を煽動したことなどを理由に、最大の発信の場であったTwitter(現X)のアカウントを凍結された。以降は自身が立ち上げたSNS「Truth Social」で発信することとなったがこれだけでは自身の支持者を囲い込むための効果しか得られず、Xのように幅広い層に言葉を届けることは難しい。
そこで、XなどのSNSと相性が良く、ミーム的な熱狂を兼ね備える暗号資産業領域に目を付けたのではないだろうか。自身を暗号資産推進派としてアピールすることで、いわゆる暗号資産票を固めるだけでなく、かつての発信の場であったXなどでの露出も増える。実際、過激な発言とパフォーマンスが代名詞であるトランプ氏の言動は、暗号資産業界に鮮烈な印象を与えた。
しかし、かつての面影もなく暗号資産推進派を名乗り、業界との親密さを連日アピールする姿は、あくまで過度なパフォーマンスに過ぎないとの見方もある。少なからず、市場規模が拡大し、資金が潤沢となりつつある暗号資産業界から選挙資金を調達するという戦略の一環である側面も忘れてはならない。こうした状況も鑑みると、トランプ氏がはたして本物の“暗号資産大統領”であるかはもう少し精査する必要があるだろう。