What's AI
AIとは、人工知能(Artificial Intelligence)の略称。コンピュータに人間の知的能力を模倣させることで、推論や判断、学習などを行わせる技術である。
まるで人間と対話をしているかのように、質問に対して回答をしてくれるOpenAI社のAIサービス「ChatGPT」が公開されてから、そろそろ2年が経過しようとしている。
ITエンジニアではない一般人でも簡単に使用でき、人間では決して追いつくことのできない検索速度で、我々が使うような言語を用いて回答してくれるAIの登場により、私たちの社会は大きく動揺した。
ChatGPTの根幹を支えているのは、生成AI(Generative AI)と呼ばれるAI技術だった。従来のAIは、コンピュータの性能の限界があったため、特定の行為の自動化に特化して研究されてきた。しかしマシンパワーの進化により、より大規模なデータの収集と処理が可能となった現代において、AIは従来以上の学習が可能となった。
生成と翻訳されるGenerativeという単語には、生命を生み出すという意味もある。生成AIは無作為に収集したデータから、独自に傾向を分析し、まったくあたらしい結論を文字通り生成することができるのである。
具体例をあげてみよう。これまでのAIは、猫という生物を学ぶために、猫にまつわる画像や文献を何万種類も学習して、猫という概念を分類・整理して理解することができた。しかし生成AIはまったく異なるアプローチを行う。
あらゆるデータを読み取り、データの関係性やパターンを学習することによって、目が2つあり、四つ足で歩き、耳が顔の上部で尖っている愛玩動物が、「猫」と呼称されているようだという、自分なりの結論を創造するのである。読み取る情報が増えれば増えるほど情報の理解度は高まっていく。
最初は犬と猫の区別がつかなかったとしても、学習が進めば進むほど勝手に犬と猫の違いを理解していくのである。そのため、生成AIはデータ分類における独自の理論を構築し、人間が思いもよらない結論を生み出す可能性がある。
そして、その結論は人間が何年かけてもたどりつけなかった、環境問題やエネルギー問題、人権問題などの解決の糸口へとつながる可能性があるのだ。私たちが、事務活動の時短などで盛り上がっている一方で、大企業や国家が生成AIの研究者に多額の資金を投資している裏には、このような背景もある。
もっとも、生成AIが独自に学習を進めていく性質を持つ以上、我々のコントロールを離れて勝手に進化していく危険性がある。Microsoft社のクラウドサービス「AWS」などのメガクラウドでは、企業が生成AIを使用する際に、機密情報を生成AIが学習しないように情報提供を遮断するサービスを提供している。
これは、メガクラウドベンダーでは今や当たり前となっている。AIが人間のコントロールを離れていくということに関する恐怖心は、特に欧米圏に強い。
この背景には、旧約聖書の創成記に記された神の言葉「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ」に従い、社会規範が作られてきた文化的背景が大きい。日本ではあまり報道されないが、生成AIの開発をやめろというデモは、年齢層を問わずあちこちで起きている。